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阿部政雄2003**** 自衛隊派遣で日本は奈落へ
阿部政雄20030716 書翰1
阿部政雄20030717 書翰2 戦争の正当性について
阿部政雄2003**** 書簡3 「戦争ごっこ」はもう沢山
阿部政雄2003**** 書簡4 イラクは日本にどんな罪を犯したの?
阿部政雄2003**** 書簡5 貴方こそ憲法の抵抗勢力
阿部政雄2003**** 書簡6 「無駄な抵抗を止めて」イラク派兵法廃案を
阿部政雄2003**** 書簡7 だんだん派兵は難しくなりそう 日本の破滅を救うのはイラクの抵抗運動かも
阿部政雄2003**** 書簡8 戦争で逝つた人のために”鎮魂”の儀式を
阿部政雄2003**** 書簡9 イラクやアラブの文明の高さに理解を 劣化ウラン弾は野蛮の象徴
阿部政雄20030823 書簡10 イラクへの自衛隊派遣は日本の自滅です
阿部政雄20031009 書簡11 大義なき戦争へ自衛隊を派遣する危険について
阿部政雄20031014 書簡12 イラク派兵問題こそ,総選挙の一大争点に
阿部政雄20031018 書簡13 自衛隊のみなさん、「森の石松」のだまし討ちにあわないように
阿部政雄20031020 書簡14 「売り国と兵士差し出す三代目」では困ります
阿部政雄20031027 書簡15 自衛隊の派遣は、イラクへの主権移譲に役立つか
阿部政雄20031106 書簡16 「いち抜けた!」 終戦直前、帝国陸軍の崩壊する姿を目撃
阿部政雄20031109 書簡17 「真実こそ最後の勝利者」ーー戦中派の信念
阿部政雄20031109 書簡18 今どき 与話情浮名横櫛 源氏店
阿部政雄20031201 書簡19 テロ超大国に屈しないで欲しい
阿部政雄20031210 書簡20 62年目の日本の参戦
阿部政雄20031220 書簡21 愚や愚や汝を如何せん
阿部政雄20031223 書簡22 昔、インドの苦しみを知る(白蓮)
阿部政雄20031227 書簡23 日本殺すにゃミサイルいらぬ ポチの頭をなぜりゃいい
阿部政雄20040106 書簡24 テレビドラマ『竜馬がゆく』と「船中八策」
阿部政雄20040110 書簡25 自衛隊員への「未必の殺人罪」で裁かれるのは、小泉さん?
阿部政雄20040113 書簡26 国際社会における名誉ある地位について
阿部政雄20040121 書簡27 派兵の危険 三題話:開国派とは、目黒のさんま、ベニスの商人
阿部政雄20040124 書簡28 アメリカのワナにはまらないために 戦前、戦中の一層の勉強を
阿部政雄20040202 書簡29 日本人の価値に目覚めよ [親日の地]を反日に変えるな
阿部政雄20040205 書簡30 教育の基本に返りましょうよ 女子高生の手紙の件について思う

自衛隊派遣で日本は奈落へ

       自衛隊派遣で日本は奈落へ
         日本の命運の関わるこの問題に議論を       

 大平の眠りを覚ます蒸気船(蒸喜撰)
   たった四杯で夜も眠らず

 幕末にこんな狂歌が詠まれたが、小泉首相が自己の政権保全のため、ブッシュ大統
領に与えた約束のために、日本人の命も、中東での、いや世界の信頼を失い、日本経
済の破滅をもたらすような、自衛隊の派兵と言う暴挙を実行しようとしている今,

 大平の眠りをゆるがす小泉丸
  一人の野望で日本奈落へ

 小泉氏(とそれに追随する時代錯誤の政治家)は、この9月23日始まった国連総
会で、 ブッシュの「一国主義=ユニラテラリズム」が猛攻撃され、孤立した.正に
「四面楚歌の声」に囲まれている状況を直視すべきだ.

 取り分け、アナン国連事務総長からはアメリカの先制攻撃理論は「(国連創設以来)
過去58年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則に対する根本的な挑戦」と批判
され、アナン氏ばかりではなく、ブッシュの後に演説したシラク仏大統領は、先制攻
撃という考え方を強く非難し、各国指導者もあいついで、アメリカの得手勝手の戦争
を「力が正義」とする独善的政策を非難し、アメリカは今孤立化しし始めている.

 米ニューヨーク・タイムス紙も、世界の米国に対する見方がこの2年間に、米中枢
同時テロ被害への同情から、一方的な武力行使に訴える帝国主義的大国への失望や敵
意へと、大きく転換したと報じている。

 こんな中で、「ブッシュ、命」とばかりに、沈み行くブッシュ政権とともに、イラ
クの占領継続に日本の自衛隊まで派兵するなど、とても正気の沙汰とは思えない。
「国難来る」とは正にこのことで、その国難をもたらすものが日本の首相であるなど、
正に白昼夢の思いである。日本への失望、軽蔑、敵意は、これから暴風雨のように、
日本をおそってくるであろう.

 そもそも、「大義なき戦争」と言われたイラク戦争のために、小泉政権はイージス
艦の派遣から、国会でのイラク特措法の通過のための国会騒動など、日本の国政に大
きな損失を与えた。この上、沈みかけたブッシュ政権の泥舟に乗っかって日本もぶく
ぶく沈んで行けば、大きな犠牲を払わされるのは、国民だけである。

 小泉首相、どうか、自衛隊派兵など言う危険な政策は今日即刻中止して欲しい。ア
メリカのテコ入れで作られたイラク統治評議会のチャラビ議長さえ、「外国軍はこれ
以上いらない」、「ただちにイラク人に主権の移譲を」と言っているではないか。

 小泉氏個人がブッシュとともに、心中沙汰をしようが、それはご勝手であるが、日
本の命運、国民の苦しみを考えれば、むしろ、勇気を出して、アメリカに「大義なき
イラクの戦争とその後の占領を中止」を求め、「イラクの真の復興のため、国連を主
体に国際的協力の下にイラク復興に力を尽くして欲しい」と勧告すべきであろう.こ
のことは、すでにアメリカの世論になってきている.

 アメリカでは、ブッシュ大統領の支持率も50%とダウンし、今選挙をすれば、民
主党の2人の候補にそれぞれ下回る票しか集められなってきており、来年の選挙は敗
北濃厚となっている.

 さて、こんな中で、ブッシュ政権を「親方日の丸」式に当て込んで、全面協力を誓っ
た小泉首相は、そのツケを多額の援助金と自衛隊の派遣出払ってもらおうと、集金と
督促のためにブッシュ大統領が日本にやってくる。

 総選挙の始まる時期でもあり、この自衛隊派兵がいかに日本の安全と平和、日本の
経済にとって危険であること、そしてこの理不尽な派兵そのものが、イラクに対する
凶暴なテロであり、日本国憲法に対する破壊的なミサイル攻撃であることをっていて
きに議論して欲しい.与党がテロ対策特措法を審議するのなら、冒頭でこの日本の国
際的信頼を侮蔑に転換する、「愚策の中の最大の愚策というべき」自衛隊派兵問題を
待つ優先的に審議してもらいたいものである.

 平和憲法からすれば、この憲法に対する最大のテロリストは.小泉氏率いる小泉政
権ではないか.これにたいする特別措置法こそ先議すべきだと思っている.

 警告したいのは、自衛隊の派兵は、湾岸戦争以来のアメリカのネオコンの見果てぬ
夢であり、アメリカのある高官が言っていたが「兎に角自衛隊の軍靴を一歩でもイラ
クの地を踏ませたい」(どこの新聞だったか)と言うのが書いてあった.これこそ彼
等の謀略である.国会議員諸公は、どうか真剣に考えてほしい。

 各党も、そのマニフェストでこの問題を重点的に扱って頂きたい。

 総選挙の中でも、この問題が大きなウエイトになるべきであろう.戦時中の荒涼た
る社会の空気を知っているだけに、戦争こそ最大の破壊者であることを訴えたい.

 (転載歓迎いたします)
阿部拝

書翰1(7月16日)

拝啓 小泉首相殿

公私多忙を極める首相にあえて進言いたします。

今貴方様は、77%の国民が反対しているにも関わらず、遮二無二イラクへ日本の自
衛隊を送ろうと懸命になっていらっしゃいます。

しかし、自衛隊のイラク派遣は、日本のためにも貴方のためにも悲惨な結果しか生ま
ないと言うことを御忠告申し上げます。

端的に言って、貴方が自衛隊を正当な理由もなくイラクに送ることは、これから、際
限もなく日本と日本人にとって量り知れない苦悩、損失をもたらして行くことでしょ
う。

その理由は多々ありますが、とても短い時間で説明できることではないので、これか
ら、今国会終了の日まで、毎日少しづる手紙を差し上げることにいたします。

今日は、自衛隊員のイラク派遣の是非についてです。

● まず、自衛隊をイラクに送る正当性は何もないことです。

* 国連はイラクへの派兵に賛意を示したわけでなく、インドも大義なき派兵を切っ
ぱりと拒否しました。ドイツは反対、フランスも派兵しないと言っています。ポーラ
ンドとか、韓国など”傭兵”としての代償を求める国の中で、国民の税金まで使って
重火器を持ってイラクに派兵する大国は日本だけです。この派遣の正当性について、
改めて国民に分かりやすく説明して下さい。

 (この際、言っておきますが、日本の政治の主人公は国民であることをもっと自覚
して 下さい。憲法にはっきり書いてありますよ。万一、貴方が外国の元首に忠誠を
誓うこと を日本の首相として第一義的に考えているいるとすれば、それは”変人”
ではなく、” 奇人”であり、歯に衣を着せず言えば、昔よく使われた”売国奴”が
する行為に似てい ます。)

* ”招かざる客”自衛隊はイラクでは歓迎されないでしょう。まして、イラク人は
世界の中でもとりわけ日本を尊敬し、日本人を世界の中で一番愛しているといいほど
親日的な人々なのです。その恋人が銃口を突き付けてイラクに軍靴(ブーツ)で乗り
込んでくる。そしてイラク人をも殺傷しかねない占領軍の”雇われ兵”として現れた
ら、「百年の恋も一気に醒める」と言った生易しいものでなく、まして自衛隊がイラ
ク人を一人でも殺せば、日本人はイラク、アラブの敵と変身してしまうでしょう。自
衛隊員の誇りも考えて下さい。


*そうなれば、自衛隊が行くところはみな戦場になってしまいます。何時襲撃されて
もおかしくないでしょう。万一、いや発生する可能性の方が高いのですが、自衛官が
一人、または複数殺害されることになったら、日本は報復攻撃に出ますか。これは正
に侵略戦争です。過去の日中戦争、太平洋戦争の誤りを日本は反省したばかりでない
ですか。

*最近、イラクから帰って来たカメラマンの話をメール上で讀みました。米兵は、絶
えず緊張しているようです。また、チグリス川から米兵が吊り上げられたという噂も
聞き、米兵の死亡者の数は報道されている数以上だと思ったそうです。
一般の日本人への好意はまだ残っているとのことですが、貴方の指示で、銃を持って
現地入りした自衛隊はそうした日本にとって貴重な財産である親日感情を情け容赦な
く掃討していくことでしょう。

*思い出すのは、1983年に、ベイルート駐在中のアメリカ軍海兵隊兵舎とフラン
ス軍司令部に、ヒズボラ兵士のトラック爆弾で297人もの犠牲者を出した結果、ア
メリカの海兵隊はベイルートから撤退したことです。また1993年、ソマリアで1
8名の米兵の遺体が路上で引き回される殺害されたため、米軍は総引き上げをけって
した事件もありました。

小泉首相。万一こうした事態がイラクで起ったら、自衛隊への報復戦争としてイラク
と戦争しますか。待って下さいよ。要請されたのでもないのに、イラクに押し掛けた
のは、自衛隊の方ですよ。貴方は間違いもなく、戦犯として国際法廷で裁かれるでしょ
うね。
その覚悟はお有りですか。

*貴方は、このイラク派兵はブッシュ大統領に約束したことだから破られないとおっ
しゃるかも知れません。しかし、こんな戦後日本が辿って来た平和国家としての国是
を、貴方とブッシュ大統領との中がいかに”特殊な関係”であれ受け入れがたい話で
す。最高裁が憲法を守らせる立場にあるはずですが、とにかく日本の憲法に照らして、
貴方は憲法違反の重大事を国会にも諮らず約束してくるなんて、常軌を逸しています。
国民も77%&イラク派兵に反対していることも忘れないで下さい。

「過ちを改めるに憚ることなかれ」です。ブッシュ大統領に「あれは私の早とちりで
した。国民の意見をよく聞いたら、派兵は過ちでした。貴方にも間違った情報を提供
して申し訳ありませんでした」と素直に詫びればいいのです。

貴方にとっての主人公は何と言っても日本国民ですから、ブッシュさんも文句の言い
様はないでしょう。そのブッシュさん自身だって人気にかげりが出始めているのでか
ら、いい潮時ではないですか。

小泉さん自身の人気も下降ぎみなので、この際、路線を変更の方がもう一度、小泉ブー
ムが出現しないとも限りません。少なくても、悲嘆にくれる、死亡した自衛隊員の家
族にお詫びに訪れたり、戦費調達のために悪税を儲けて憎まリたり、徴兵制まで導入
することで若者に嫌われるより、ここらで人間の赤い血をながす”戦争ごっこ”から
足を抜いた方ガ身のためだと思うのです。しかし、小泉さんがその軍国路線こそ、俺
の宿願だった言う返事が返ってくるかもしれません。ないおか言わんやです。その時
は貴方は”今東条”として歴史蜷をとどめるでしょう。東条首相は”日本のための戦
犯”であったが、貴方はの場合は”ブッシュ大統領のための戦犯”という違いはあり
ますが。

 もう今日の時間が残りすくなになりました。

最後に、明治39年に日本でも人気のあった添田唖蝉坊の作詞による

ラッパ節を紹介します。


名誉名誉とおだてあげ
大切な倅(せがれ)をむざむざと
砲の餌食にだれがした
もとの倅にして返せ トコトットット

大臣大将の胸先に
ピカピカ光るは何ですえ
金鶏勲章かちがいます
可愛い兵士のしゃれこうべ トコトットット


 当時大流行したと言われるこの唄は軽快なリズムの歌いやすいものですが、こうし
た内容の濃い唄こそ朗々としていて、オペラ向きです。是非小泉首相の御努力で「しゃ
れこうべ」と言って歌劇でもつくり全国に広めれば、小泉人気も一段と上がるものと
思います。

付記: 小生は戦前派にのしんがりに属する75才です。少し辛らつな言葉を吐きま
したが、御容赦下さい。これもいづれ早晩小泉首相を襲うに違いない苦境からを貴方
を救いたい老婆心(老爺心?)の現れとお察し下さい。

では、また明日。

書翰 2  戦争の正当性について 7-17

拝啓 小泉首相殿

今日は、あの戦争の正当性について意見を述べさせて頂き、首相からも回答をお持ち
しています。

昨日の新聞は、小泉首相はオーストラリア首相に例の「サダム・フセインが見つから
ないから、大量破壊兵器兵器がなかったと言えない」という恥ずかしい屁理屈を披露
したそうですね。豪首相が悩むのは、それだけの理由があってのことで、政治家とし
ての良心があるためで、あのイラク戦争が正当であったかどうかを真剣に問い直す大
きな機会だったのに、貴方はそれをはぐらかしてしまった。罪つくりな方ですね。

事実、米英の両政府は、あの戦争が正当な根拠のないまま開始されたことにより、議
会は民間からの批判を浴び、揺らいでいます。イラク攻撃の根拠にしていた大量破壊
兵器兵器が見つからねば、米英は不当な正義にもとづかぬ戦争を仕掛けた訳ですから、
当然のことながら、いづれ国際戦争犯罪法廷で裁かれる日がくてもおかしくないでしょ
う。

疑いだけで他国に兵をすすめることを国連憲章も、日本憲法も、国際法も認めていま
せん。観劇で忙しい時間を少し割いて、こうして基本的な国際的原則を学んで下さい。

それに、イラクに戦争を仕掛けるのは、民族自決権の侵害です。あの悲惨な二度にわ
たる世界大戦の惨禍の中から結成された国連の憲章の大きな柱となっているのは、民
族自決権でした。日本から高碕逹之助国務相が参加した1955年のバンドン会議で
も、主権尊重、民族自決権、平和共存はもっとも強調された原則です。

他国の政府が気にくわないと言って、その国を攻撃することが許されるでしょうか。
小泉首相が靖国神社に参拝するのは、けしからんといってアジアの近隣諸国が日本を
攻めてくる権利を持つのでしょうか。

イラクの前政権が独裁的であったからと言って外国が武力を行使することが許される
のであれば、それは国際社会が”弱肉強食の密林”と化すことです。新しい時代錯誤
の帝国主義時代の再来なのです。

とにかく、ブッシュ大統領の人気は9・11事件以前に戻り、ますます下降ぎみです。
それでもこの「張り子の虎」の正体が日々暴露されてき始めているアメリカ大統領と
あくまで心中しようと言うのでしょうか。

それに、正当性のない、無法な戦争であることは、アメリカが劣化ウラン弾、クラス
ター爆弾、バンカース爆弾だの大量殺戮兵器を使い、ジェノサイドにも近い形でイラ
クの尊い市民の命を奪い、国土を荒廃せしめ、そのくせ石油利権だけはごっそりと着
服しようとしているのです。

『鬼平犯科帳』出活躍する 「火付け盗賊改め方長官」長谷川平蔵(実在の人物)が
今生きていたら、アメリカのイラクの侵略を火付け盗賊と断罪して取り調べるでしょ
う。日本はその大盗賊の子分としてイラク占領の手助けに奔走するなんて、全く御先
祖様にすまない光景です。

小泉首相、このような不法なアメリカの対イラク戦争に、日本政府は参加する必要が
あるのですか。去年だったか貴方が訪米する前に、アメリカ大統領にその政策に疑問
点があった場合は”友情ある説得”をすべきだと元総理たちの長老たちにアドバイス
されましたね。また河野洋平元総裁から、「日本はもっと外交努力」と注文つけられ
たのを覚えています。

小泉首相は、こうした努力を果たしてどれだけされたか、是非聞きかせ願いたいもの
です。

最後に、アメリカがイラクに加えた残虐行為について、貴方はどれだけ、認識してい
ますか。湾岸戦争の時にイラクに800トンも落とされた凶悪兵器の劣化ウランによっ
て、南部バスらの母親たちは、赤ちゃんが生まれた時に、昔のように「男の子、女の
子?」と聞くのではなく、「正常な子、奇形児?」と聞くと言われています。今回は
あの歴史的な大都会、バグダードのまっただ中にアメリカは劣化ウランを大量に降り
注ぎました。正に鬼の仕業です。これから、バクダードを滞在する米軍兵士も自衛隊
も放射能に曝されるのですよ。アメリカでも6万人7万人の退役軍人が劣化ウランの
後遺症に今でも苦しんでいます。

これが正義の戦争ですか。小泉首相から言いにくいでしょうが、ブッシュにこうした
残虐な兵器は破棄したらどうかと言って下さい。また/あの市民を広範囲に無差別殺
戮をするクラスター爆弾を自衛隊が装備しようとか讀みましたが、これも「改革の王
者」小泉さんは恥ずかしいと思いませんか。

こうしたことがだんだんと明らかになって来ているのに、日本は何が悲しくて、膨大
な国家予算を使ってまで、生身の自衛隊を、何の憎しみをないイラクの人々に対する
占領政策の”傭兵”(しかもこちらの予算で)として送らねばならないのですか。

前にも書いたと思いますが、イラク国民の民族的抵抗は、その真の独立達成まで、1
0年も、20年もまかり間違えば、パレスチナのように50年から100年の戦争に
なるかも知れません。

今、何が何でも自衛隊を送ると言うのは無責任の骨頂です。それは「匹夫の勇」に過
ぎません。

小泉首相は2年も立てば引き上げることもできるなど悠長な考えを持っているかも知
れませんが、それは絵に書いた持ちでしょう。悪く考えれば、アメリカの罠にはまっ
て、日本は永久にイラク、中東に自衛隊(実質的な他衛隊)ずっと駐屯させねばなら
なくなるようプランを考えているのではないかと思われてなりません。まして、人の
いいこと(?)では、国際級の小泉首相のことだから、成りゆき負け、ケセラセラと
承諾してしまうのではないかと気がかりです。

そんなことになれば、日本は世界の笑われ者になること必定です。

賢明なる小泉首相、どうか、悔いを潜在に残さない外交政策を展開して行って下さい。
自衛隊の他衛隊にするなんて考えないで下さい。後生ですから。、世界の人々から、
嘲笑を侮蔑を受けること必定ですし、日本の名誉のためにも、そして貴方の名誉のた
めにも。

ではまた明日。

阿部拝

第三書簡 「戦争ごっこ」はもう沢山

拝啓 小泉首相殿

今日は3回目の手紙を差し上げます。お寝覚めは如何ですか。

 今回は、イラク復興への真の貢献とは何かについての意見を述べさせて頂きたいと
思っていました。しかし、今朝の朝日を開いてみたら、貴方は、「自衛隊の派遣の時
期にはこだわらない」と記者団に語り、政府は11月以降に先送りする方向で検討に
入ったと言う。

 小生は、自衛隊を未だに戦場になっているイラクに送ることは、屠殺場のまっただ
中に送るようなもので、こんな非人道的なことを小泉さんがよくもやるなあと暗たん
たる思いがしていました。 悪いことは言いません。この際こんな出来もしない、大
義もない派兵はいっそ廃案にしたらどうでしょうか。そしてイラク復興特別措置法と
言う名前通りの、一切軍事にかかわりのない援助に切り替えることをお薦めします。

 その方が、膨大な国費と尊い人命を失わずにすみ、これからますます厳しくなるイ
ラクの情勢の対応に貴方は、針の山に上るような苦しみ、ジレンマをなめ続けていく
のではないかと御同情申し上げるのです。そして、国会議員の諸先生の金科玉条であ
る憲法には「国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来
し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と
うたわれています。このイラク特措法は、「選良」であるべき先生方が多くの時間を
費やして、国費を浪費して、論議すべき内容であるととても思えません。

 いわば、こうしたアラブ中東の事情のイロハも勉強せず、国民全体に不安と怒りを
巻き起こしている「イラク派兵ドタバタ劇」は一日も早く幕を引いて下さい。 こん
な法案は貴方のためにも、そして何よりも日本国民のため、いやイラク国民、アメリ
カ国民のためにならないのです、冷静に横から観察する限り、貴方はにやにやしなが
ら、他国民を大量に殺して金を儲けるといったネオコンほど冷酷非情でもなさそうだ、
とても『失楽園』のサタンや『ファウスト』にでてくるメフェストテレスのような悪
魔ではないと思います。ただ「国政はわたしのためにあるよ」と好き勝手な解釈をし
て、得意のパーフォーマンスと気の利いた言い逃れのキャッチフレーズをひねり出す
才能でこれまで首相の座を辛うじて守って来れたのです。しかし、現実はそんな甘い
者ではない。一国の総理たるものがどんなに重要な責務を負っているか真剣に考えて
下さい。

 先日メールへの投稿で、「桐一葉、落ちて天下の秋を知る」ということは言葉を引
用しましたが、激変するイラク情勢に対応できなくなった、日本政府はこれから増幅
する無数の難問題ーー日本とアメリカの摩擦、全国的な国民の反対運動、日本経済の
悪化などの対応にますます窮していき、桐一葉どころでなく、葉っぱはすべて風に飛
び、こうした外国にこびへつらうための醜悪な日本の政治の実体が国民の前に赤裸裸
らにさらけだされて行くでしょう。小泉さん、 今が潮時です。イラク法案など、中
学生だっておかしいと思う悪法はきっぱり廃案にして下さい。

 さて本題に戻って、この数日の政府の答弁、対応を見たり、聞いたりしていると、
貴方ばかりか、貴方の側近と称せられる人々の答弁がいはゆる「朝令暮改」になって
きているこことが、よく分かります。     例えば、 福田官房長官は昨日17日午前
の記者会見で、イラク各地で相次いでいる米軍への襲撃について、「局地的に行われ
ている 散発的なもの」と述べたと思ったら、午後の参院外交防衛委員会で、「もっ
と早急に治安が回復されると期待していたが、状況は変わっていない」と述べ、治安
情勢に懸念を表明しました。イラクに派兵しているのが川口外相は40カ国といって
いたのが、4カ国ほどだとかいいうじゃないですか。その数字だって怪しいものです。
もともとウソで固めた口実で開始されたいイラク戦争なので、いかに300代言とは
いえ、破局的速度で、言い繕いにも行き詰まっていくでしょう。
 
 川口順子外相はまた昨日「戦闘が基本的に終了しているという判断は変えていない」
と強調しましたが、それでいいのですね。ところが、米国防総省での記者会見で、ア
ビザイド米中東軍司令官は16日、米軍を旧フセイン政権の残存勢力などが攻撃し続
けている状況は、現在「ゲリラ戦」が展開されているという認識を示したそうじゃな
いですか。

 その肝心の米軍はどうかというと、「イラク前線の米兵士たちは、長引く駐留の中
で危険のまっただ中にあり、暑さと不安に苦しんでいる。彼らの士気は「どん底」と
言ってもよいほどに落ち込んでいる。ある隊の将校は、兵士たちの精神状態をこう述
べている。「聞いてくれる人なら誰にでも不満をぶちまけている。手紙を書き、泣い
て、叫んでいる。兵士たちの多くはそこら辺を歩きまわり、見るからに疲れていて意
気消沈している。まるで自分たちの意志がまったく反映されない戦闘シミュレーショ
ンゲームの歩兵になったような感じだ」という記事もあります。

 イラク駐留中の不満を抱える兵士の中には自分の部隊を米本国に戻して欲しいとの
手
紙を議会に送る者もいて、「帰還できるなら預金をぜんぶおろしてもいいとみんな
思っている」と訴えている。(TUP-Bulletin)

 きのうはまた、連日の米英軍襲撃など治安状態が悪化、駐留の長期化が確実視され
る中で、イラク「最前線」の米兵から16日、「国防長官に辞任を要求する」との極
めて異例な公然批判が噴出したともいわれています。

 とにかく、ことここまで、来た以上、血なまぐさい「戦争ごっこ」の法律は全部廃
案にした方が、国民のためにも、貴方自身のため、貴方を支えている与党3党と民主
党の中にいる軍事オタクの「戦争を知らない」「恐るべき子供たち」(アンファン・
テリブル)のためになるのです。子供というのも失礼で、かなりの年齢に達した方々
です。

 国民の立場からすれば、こうした悪法を通す国会議員はすべて、国の最高法規であ
る日本国憲法を壊そうとする「反乱軍」なのです。その家族もわれわれ国民も泣いて
いるのです。今からでも遅くないのです。是非政治の本流に返って頂きたい。さもな
いと「外遊内歓」をモットーとする貴方も呑気に好きなオペラ鑑賞や外国の名所見学
(余り在任中にすることでないとは思いますが)もできなくなります。

 この際、以前から考えていたことを申します。小生は、ピラミッドの前で、ラクダ
に乗り、御満悦な小泉さんの写真を見て、貴方も人類文明発生の地、イラク訪問をし
て頂きたかったと思っていました。何しろ6000年の歴史を誇る国だけあって、壮
大な古代の歴史的遺跡や、中世の世界で黄金のアラブ文明の中心地であったバグダー
ドを見ないことには、その世界の観光旅行も「画竜点晴を欠く」ということになると
存じます。テキサス荒野にあるブッシュ大統領の別荘もそれなりの趣きがあると思い
ますが、アメリカを知るとともに、イラクを知ることも大事だと思います。次の旅行
はイラクへとお薦めしたのですが、自衛隊を送ってしまったら「おしまいよ」という
ところです。自衛隊を送れば、石でも投げられる覚悟でいって下さい。派遣中止した
ら、ニコニコ顔で迎えてくれる可能性は残っているでしょう。インシャーラー。

 バグダードのことを書いた影響でしょうか、急に女流講談師の始祖ともいうべき
「アラビアンナイト」で名高いシェへラザードを思い出しました。

 これから、彼女の語り口をまねてみます。

幸多かれと願うライオンハート首相様、

 今宵、いろいろ夜伽をして参りましたのも、みな貴方様の前途に待ち受けている苦
難を取り除き、また敬愛する日本の方々が、また戦争の加害者になって頂くのを思い
とどまって頂きたいという私の真心から出たものです。伝え聞けばライオンハート首
相にも多くのファンがいらっしゃるとのこと、そうした人々に幻滅を与えないために、
イラクのような戦場に銃砲を持った軍隊をお送り下さらないで下さいませ。まして、
アメリカ軍の占領を助けるために日本の軍隊が軍靴を踏みならして入ってくるなど、
悪い夢を見るような思いがいたします。「百年の恋も一夜にして醒めてしまう」悲し
みで一杯でございます。

 いえいえ、これは貴方さまにイヤミをいうためにお話しているのではないのですよ。
いわば、「愛の鞭」とおとり遊ばしますように。

 それでは、東の空もあれあのように白々と明けそめて参りました。

では明日また。

阿部拝


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(これは、イラク特措法案の廃案を全参議院議員に訴えたものです)
 参議院議員の先生に  

   イラク特措法案は是非廃案に 少なくても半年ほど国民的討議を

 イラク特措法案は、参院外交防衛委員会で実質審議入りの後、内閣委員会との連合
審査会などを行い、猛スピードで審議促進を図られています。与党は18日の成立を
目指すそうですね、しかし、多くの日本国民同様に、一人の日本国民としての小生の
率直な疑問は、これだけ何をそんなに急ぐのか全く理解出来ません。国会議員、まし
て「良識の府」と呼ばれた参議院でもこんな杜撰な討議で、戦後日本が辿って来た平
和主義が軍事優先の「いつか来た道」に逆戻りするなんて、全く悪夢を見ているよう
な思いです。

 本会議では自民党の舛添要一議員が、派遣する自衛隊員の重武装化や武器使用基準
の緩和を求めるそうですね。いよいよ日本の参戦が現実化し、イラクや周辺諸国でも
日本の軍靴のザクザクと言う音が聞こえて来そうです。  
 
 衆議院で特措法案が通過した時、小泉首相や、石破防衛庁長官、川口外相がニコニ
コ顔で深々と頭を下げてお礼をしている姿をみていると、第2次大戦を経験した「戦
中派のしんがり」の小生(75才)にとって、あの悲惨な戦争から何を学んだろうか
と悲しくなり、とても正気の沙汰と思えません。

こんなことをいう小生の方が変人で、あの法案が通ったことを喜ぶ方が真っ当な日本
人であり、健全な国会議員だとおっしゃるかも知れません。しかし、どうもそれは、
永田町界隈だけで通用する話ではないかと危惧します。むしろ小泉首相の提唱する日
米同盟の強化を金科玉条とする、外国大統領拝跪主義のビールスに多くの先生が感染
している結果のように思われます。そんなことを言う君は、激変する時局を認識する
力さえ持ち合わせていないとおっしゃるなら、どうぞ、この問題をわれわれ国民に納
得するまで、半年ぐらいかけて全国的規模で討議して、みんなが納得した上で、決め
たら如何でしょうか。

 ところで、アラブ、とくにイラクに長く携わって来た者として、素朴な疑問を幾つ
かを提示したいと思います。(すでにそんなこと君が言わなくてとっくに承知してい
るとおっしゃる議員の方々も多いと思います。小生はむしろそれを望みます。)

 順序不動ですが、箇条書きで列記させて頂きます。

? 日本の世論は自衛隊派遣、反対が77%、賛成23%

7月4日のTBSニュース23でも、視聴者に対する世論調査を行っていました。
質問は2つ。
(1)あなたは自衛隊のイラク派遣に賛成ですか、反対ですか。
  回答は、 賛成23%   反対77%  
(2)あなたは米英が示したイラク攻撃の理由を信じますか、信じませんか。
  回答は、 信じる15% 信じない85% でした。こうし他大多数の国民の意
志を無視して、政府は自衛隊派遣を既成事実のように押し進めようとしているのはな
ぜでしょう。

 昔見たアメリカのエリア・カザン監督の『群集中の一つの顔』の中で、超人気の新
進歌手がスタジオで聴衆を小馬鹿にした言葉を吐いたのが全国放送されたため、その
人気が急降下、彼が高層ビルのエレベーターから一回まで急落すると言う象徴的シー
ンがありました。
小泉首相にも御忠告申し上げておきます。

? 自衛隊員によるイラク人を射殺、イラク人の反撃で自衛隊員に死傷者が出ること
を憂  慮

 御承知のように、米軍の死傷者が増え続ける一方です。住宅街でも市場でも「非戦
闘地域」ではありません。米軍は、今ベトナム戦争のようイラクの泥沼、いや砂漠の
アリ地獄の中に陥ろうとしています。米軍と行動をともにする自衛隊が行くところが
新しく戦闘地帯になるのです。

 表記のような悲劇が発生した場合、その責任は誰が取るのですか。小泉首相だけで
すみますか、この法案に賛成した全議員が責任をとってもいいとおっしゃるのでしょ
うか。

 このイラク特措法で現地に送られる自衛隊の安否が本当にきがかりです。小泉首相
が心配ないとおっしゃるなら、一度御子息の孝太郎氏を筆頭に閣僚全部の御子息を現
地に視察に派遣されたら如何がでしょうか。気安くこんなことをブッシュ大統領とや
くするなど、小泉氏も相当な神経の持ち主だと呆れているのが率直の感想です。

 もう一つ、政府は自衛隊による浄・給水や人員、物資の空輸などの業務を力説、1
0月の現地派遣に向けての基本計画づくり専念すると聞きました。人のいい小生は、
これは、イラク人への水の補給かと人のいい小生は最初思ったのですが、米軍の占領、
軍事活動のための水の補給と言うことなのですね。正に米軍の付属部隊です。米軍は
戦闘したら、それに参加することになる恐れは十二分にあります。これこそブッシュ
大統領が要請した中味なのではないですか。

 これではイラク国民ばかりか、アラブや、イスラム諸国、いや世界全体から、日本
はアメリカの費用を自己負担した傭兵となってしまった、第2次大戦後、平和憲法に
よって海外に一兵たり送らなかった日本がついに、ブッシュ・小泉合意によって、国
連も認知もないままに、歴史的方向転化したと評価されるでしょう。 これは間違っ
ているでしょうか。

? 今回の自衛隊のイラク派兵は、まさに日本をアラブの敵国にしまう

 すでに多くの識者から指摘されている通りです。こうした日本の自衛隊(小生は自
衛隊でなく”他衛隊”になってしまったと思っていますが)イラクの国土を軍靴でザ
クザクのし歩けば、自衛隊が限り無く危険地帯を拡大して行くようなものです。こう
した暴挙によって、これまでイラクやアラブの大地に染み込んでいた親日感情は砂漠
の蜃気楼のように干上がってしまい、アラブ中東の人々の日本人を見る目は、これま
での親しみから、憎しみに激変するでしょう。すでにサウジアラビアなどでは、「日
本は米英につぐ第3の敵国」と非難され始めていると言います。これでは、戦後、日
本の官民を上げて築いて来た「友好・協力」の数知れない橋梁は、今回の自衛隊派遣
によって橋桁もろとも、爆破されてしまうことになります。日本自身でこうした親善
関係を叩き潰すことは、日本の歴史上特筆対処されるべき汚辱だと思います。先生は
いかにお思いですか。

 こうした日本の国益が被るであろう損害や弊害を数えたら、切りがありません。
1)「アラブ人の血で手を汚した日本」はアラブの歴史に長く記録されるでしょう。
その度合いによっては日本人が報復攻撃の対象にさえなりかねません。
2)政治、経済等あらゆる分野で、日本はこれまでのように、高い優先度で付き合っ
てもらえないでしょう。石油の供給でもまず外の国にまわされ、余ったら日本にとい
うことなるでしょう。
3)いや、米英日の市民はどこに行っても、冷ややかな視線、場合によって石さえぶ
つけられるようになるでしょう。文化、教育、芸術の交流でもこれまでよりずっと困
難になるでしょう。

? 日本に自衛隊を派遣させるのは、湾岸政争以来のアメリカの宿望

 アメリカは、あの「正当性のない」戦争を戦後の青写真もないまま開始し、今その
ツケを払わされています。もっとも、石油省大事に石油資源を手中におさめることだ
けはちゃっかり手を打っていますが。
 湾岸戦争の海部内閣の時は、金だけ出すことで「ショウ・ザ・フラッグ」は辛うじ
て食い止めることが出来ました。今度はアメリカは、なんとしてでも「ブーツ・オン・
ザ・グラウンド」まで踏み込ませようとアメリカは躍起です。
 今、アメリカ国内では、当のブッシュ大統領自身が「大量破壊兵器兵器」が未発見
のこと、捏造の情報操作が暴露されたこなどにより、「イラク戦争は戦うに値しない」
と疑問を示す米国民の増加により、その支持率も 急速に低下し始めています。それ
だけに、「汚い戦争」に日本を引きづれ込み、早く日本にバトンタッチさせようとし
ているのです。

5)異民族の支配にたいするイラク人の民族抵抗は必ず激化
 
 イラクには、1920年の反英大反乱以来異民族の支配に対して宗派、政党を越え
たイラクの民族主義の伝統があります。ここ1ヶ月のアメリカ兵の襲撃などは序の口
で、こうしたイラク人の民族抵抗は、アメリカが占領軍が退去するまで続けられるで
しょう。かって点と線しか支配できなかった日本軍が結局中国大陸に敗退せざるをえ
なくなったのと同じ構図です。このことはアメリカの大量兵器査察官だったリッター
スコット氏も言っています。とても2年や4年で終わるものでなく、イラクのベトナ
ム化、パレスチナ化さえ想定されます。こんなアメリカの侵略戦争に日本が踏み込め
ば、日本は急速に弱体化、衰弱化して行くことでしょう。それがまたアメリカのねら
いでもあるのです。その責任はこの法案を通した議員の先生方にとって頂けるのでしょ
うか。

 アメリカ軍へのイラク国民の民族的反抗はこれからが本番となり始めています。こ
れに驚愕したブッシュ政権は、なりふり構わず、大慌てに「日本の手をアラブの赤い
血で汚す」ことに血眼になっているのです。

 今、アメリカは月39億ドル(約4600億円)の15万人近い米軍の駐留費用を
国際
化して、支援諸国からの派兵規模を拡大したい訴えています。そんな中で「飛んで火
にいる夏の虫」の自衛隊派遣を自ら積極的に実行してくれるなど、広い世界には殊勝
な国もあればあるものだとほくそ笑んでいることは確実です。万一、アメリカが抜け
たら、まさか、日本だけでもイラクの治安は武力で実現してみせると小泉首相は考え
ている訳ではないでしょう。

 すでに、政府は自衛隊派遣への了解をイラク国民から得るために、アラビア語の宣
伝に取りかかっていると報じられています。実はこのアラビア語を有効に活用すべき
という呼びかけもアラブ通というアブ・ババ(国籍?)というペンネームのジャーナ
リストが6月22日にインターネットで呼び掛けていたことを取り上げたようです。
アラビア語で自衛隊派遣の是非をアラビア語で行うこと事態が日本に恥辱を自ら曝す
ようなものに外ならないのに、それを外国人のメールで奨められて実行するなど全く
自主性のないなことを外務省は自らお披露目しているに過ぎません。「自主性皆無省)
とはよくもなずけたものです。

 イラクへの派兵するかどうか、アメリカに約束する前に討議してもしかるべきでし
た。
 インドも最終的に派兵は拒否し、ドイツはもちろん、世界の中で、まともな国は派
兵しないでしょう。90カ国の要請を受けた国の中で派兵するのは、傭兵としての手
当てがほしい財政的に貧しい国が10数カ国になるだけでしょう。フランスなどがか
りに派兵したにしても、それはアメリカの理不尽は覇権へのチェックの意味合いがあ
るでしょう。

 イラクではイラク人による暫定政府が13日に発足するといわれています。鳴り物
入りのアメリカの前宣伝はこれまで上手くいかなったことばかりです。少なくともそ
れがうまく行くかどうか、その結果は2、3日待てば分かります。

6) 日本がイラクの復興に非軍事的部分での援助に限れば日本の一人勝ち

 もし、日本が医療、食糧とか、インフラの修復、教育、失業救済などでアメリカと
競争したら、圧倒的に日本の独り勝ちになるのでしょう。その理由は、イラク人がい
の一番で復興で来てほしい国は、非軍事の日本であり、日本人なのです。そしてでき
ることなら、1日も早く引き上げてほしいと願っているのはアメリカの軍隊であり、
その息のかかった人々だからです。前にも述べたように、アメリカは自衛隊の派遣を
せっついているのもこのためです。
 この日本の持つ潜在能力については、これからイラクを訪れる国会議員団がしっか
り見極めて来てほしいものです。このことこそ、21世紀に日本を「世界に役立つ国」
として
再発見する大きなきっかけとなるのではないかと思っています。

 (この問題については、かって2年イラクに技術専門学校関連の小さな会社の所長
として滞在したの小生はかなりの腹案ヲ持っていますが、いづれまとめたいと思って
います)

? 日本は戦犯として裁かれる恐れがある。

 第2次大戦後、日本も国際法廷で裁かれ、東条首相ほか戦前の指導者、また下士官
にいたるまで戦犯として裁かれました。

 今回のアメリカのイラク攻撃は全く国際法も国際世論も無視した「ならず者国家」
の戦争です。 アメリカは罪ないイラク国民を劣化ウラン、クラスター爆弾、バンカ
スター爆弾など凶悪な大量破壊兵器兵器を惜し気もなく降り注ぎ、多くのイラク人を
殺傷し、生活の基盤を破壊しました。これは正に戦争犯罪でなくて何でしょうか。湾
岸戦争の後、ジョンソン大統領時代に司法長官だったラムゼー・クラーク氏を中心に
ニューヨークで国際戦争犯罪法廷が開かれ、ブッシュ(父)大統領始めアメリカの主
要リーダーは有罪の判決を受けました。

 今、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷が日本を始め、世界各国で取り組まれ始めて
いますし、米英日を国際戦争犯罪法廷で裁こうと言う動きすらあるとも聞きます。小
泉首相はこれはすでにブッシュ大統領に約束したことだから変更できないと言うこと
かも知れませんが、率直に言ってこんな大事な問題をいかに首相とはいえ国民にはか
らず約束するなど、憲法違反も甚だしいと思いますが、間違っているでしょうか。こ
れこそ国の最高法規の憲法を蹂躙した犯罪行為に外なりません。

 アメリカは、その軍需産業、石油資本のお家の事情かも知れませんが、気安くイラ
クを破壊、住民を大量殺戮しているのですから、国際戦犯法廷で裁かれ、その賠償を
迫られても自業自得です。まして、壊しておいて、また復旧で一儲けなど、まともな
堅気の企業がやるような仕事ではないのです。イラクの復興は何と言ってもアメリカ
が金を使って復旧すべきです。何が悲しくて日本まで、アメリカの先棒を担いで、戦
犯人にさせられては困ると小泉首相は拒否すべきでした。壊したアメリカが、元通り
の原型に戻すのが、当然です。

 日本に万一賠償の判決が来たら、日本はそれに応じますか。多くの市民はアフガニ
スタンに対するアメリカの空爆以来、アメリカのために使われて来たわれわれの血税
ですら返却してほしいと思っています。ましてや親日的だったイラクを破壊し、イラ
ク人を殺すことに手助けをするばかりか、自ら出かけて行って占領行政に加担するな
ど全く、持っての外です。与党内部には、「殿、御乱心を」と諌める議員はいなので
しょうか。

 衆議院でのイラク特措法の評決の際には、自民党の有力議員4人が造反しました。
たった4人という声もありますが、この4人の造反は、憲法にもとづくもので、正に
「造反有利」であり、憲法違反の法律を通そうとする議員よりもっとその重みは違い
ますj。

 「ブッシュを取るか、日本国憲法をとるか」の重大な評決に際しては、躊躇するこ
となく、憲法に基ずく票決をされることを切に願って止みません。「天知る、地知る、
我知る」というじゃありませんか。

 とにかくイラク特措法などという法律はもっと時間をかけて討議して下さるようお
願いいたします。

                        阿部政雄
                        アラブ問題専門家
                      日本ペンクラブ国際委員
                      「日本アラブ通信」編集長

(以前発表したものを新しく加筆いたしました。また、前の訴えでは、記名投票を是
非とうことも盛り込んで頂きましたが。のですが、参議院では押しボタン式投票で、
自動的に記名投票となることを知らなかったための早とちりでした。その部分は削除
させて頂きました。新しい訴えを送付するのが遅れた原因のは、先生方全員にお送り
する方法などでもたついていたためです。)

以上は全参議院議員に送りました。

阿部拝

第4書簡 イラクは日本にどんな罪を犯したの?

幸多かれと願うライオンハート小泉首相様、

 シェへラザードでございます。今宵また参上いたしました。

 昨晩は、阿部さんの依頼で、途中から、ライオンハート首相様に夜伽をさせて頂き
ました。私の話、お気に召したでしょうか。

 今朝、阿部さんからまたまた連絡が入り、目下イラクのことに深い関心をよせる首
相に私めシェザードから直接イラク人の日本に対する思い、そして現状を是非はなし
てほしい、イラクのことを熟知している才色兼備の貴女から語ってもらえば、きっと
耳を傾けてもらえるだろう。それに、気の弱い自分と違って思うことを立て板に水の
ように語る貴女の方がずっと適任だなどとおだてて。ホホホ。

 「まして、自衛隊派遣の対象になっているのは、貴女の国イラクのことではないか、
貴女以外に、日本の首相にイラクの真実をつたえる最適な語り部はいない。後はよし
なに」など言って、そのままテレパシイを切ってしまいました。

 今イラクでは、日本の自衛隊が重装備でやってくると言う噂でもっぱらでございま
す。口さがない、バクダードの雀たちは、私たちたちにとって、「まだ見ぬフィアン
セ」のように憧れていた日本人が、あろうことかアメリカ軍の占領を援けるためにやっ
てくるという仰天すべきニュースを聞いて、胸もふさぐ思いをいたしております。

 まるで白昼夢を見ている思いで、矢も盾もたまらず、バグダードより馳せ参じてま
いりました。まさか、敬愛する日本の方々が、再び戦争の加害者になってしまうなん
て、きっとお釈迦様でも御想像なさらないと存じます。

 いろいろライオンハート様にお聞きしたいことが一杯で、心せく思いでございます
が、深呼吸をひとつして、今もっとも重要と思われることからお聞きいたします。

 そもそも一体全体。私たちイラク人が日本に対してどんな悪いことをいたしました
の?

 1970年代後半には、イラクの主要な建設現場では、日本の企業群があふれ、家
族を含め4500人もイラクに滞在し、肥料工場、電気通信施設、病院、官庁ビル、
住宅建設、橋梁、ハイウエイなど、バグダードを中心に全イラクで、多くのインフレ
を作って下さいました。それに、日本の企業の方々は、誠心誠意イラクの人材養成、
国作りに貢献して頂きました。そうそう、阿部さんも東海大学の講師を一時休講にし
て、1982年と3年、イラクの技術専門学校建設関連の小さな日本企業の雇われバ
クダ-ド支社長として来て頂きましたわ。
 
 私たちは、日本がバクダードを美しい大都会にし、イラクの工業化、近代化の立て
役者だと感謝をしておりました。日本の首相の銅像の一つや二つ、バクダードの中心
部に立ってもおかしくないと思ったことさえありました。

 それが、なななななんと、機関銃をもった軍隊を派遣して、場合によってはイラク
人を射殺するんですって。「ぎょぎょ1! こんなことってあるの。まるで千一夜物
語に出てくる悪魔そっくり」とみんな思っています。

 今、イラクには、別名、びんぼうかずらともいう「薮枯ーやぶがらし」と言う悪魔
がとりつていますが、日本にもこの「薮(ブッシュ)枯」という悪魔が、小泉首相に
とりついていると私は見ております。貴方さまがブッシュ(薮)にまたがっているの
か、ブッシュが貴方さまの背中にしがみついているのか、今日の日本の不幸はここか
ら来ているとさえ思っております。ごめん遊ばせ。ついつい、言いにくいことを申し
仕上げまして。

 どうか、イラクが日本にどんなひどいことをしたかを私たちイラク人に納得のでき
るように御説明下さいませ。納得の行く説明がないままに、自衛隊の銃弾で死んだイ
ラク人は、それこそ貴方さまの国の「四谷怪談」のお岩様のように、「うらめしやー」
と貴方さまに化けてでくるのではないかとはらはらしています。貴方さまがオペラを
楽しんでいる時にそんなお化けが「オペラの怪人」のように出て来たら、とてもオペ
ラの鑑賞どころでなくなるのではと心配しております。

 是非とも、自衛隊を送る前に、日本はおろか、全世界に向けて、イラクの日本に対
する罪状を公開して頂きとうございます。

 思えば、中世のアラブでは、日本は「ワークワークの国」として何かまだ見ぬ珍し
い国として知られていました。恐らくこの言葉は倭国と言う言葉が訛って伝えられた
のでしょう。私どもは日本と聞けば、ワクワクする思いを抱いたももでございます。
とりわけ、小泉首相は改革の王者というふれこみで登場したので、わたしどもの期待
は大きかったのですが、それが機関銃を持った軍隊をイラクに派遣するなんて、「そ
りゃ、あんまりな胴欲な」と胸も張り裂ける思いでございます。

 私どもイラク人にもメソポタミア文明以来長い歴史に育まれた民族的な誇りがござ
います。理不尽な異国の軍靴でザクザクザクと祖国の土地を踏み荒らせば、当然国を
専守防衛するために、一戦交えねばなりません。国際法上、それは正当な権利なので
す。

 モロッコの学者エルマンジェラ教授は、その著『第一次文明戦争』(お茶の水書房)
の中で、イラクに対するアメリカの攻撃は「文明と野蛮の戦い」と申されました。
私どもは、イラクと同様、源氏物語の紫式部と言った偉大な女流作家を持つ日本は文
明の側に立つと信じておりました。日本はあの第2次大戦後、平和国家、文化国家と
しての道を歩んでこられたと思っていました。それが言いたくはないのですが、ライ
オンハート宰相が日本の指導者として台頭してから、日本が急ピッチに時代錯誤の戦
前の軍国主義に逆戻りして来たような気がします。

 そう言えば、日本のことをアラビア語では、「ヤバーン」と言いますが、わたした
ちは日本が「ヤバン(野蛮)」などとこれっぽちも思ったことはございません。それ
は単にアラビア語でPの発音がないので、Japanがyabanとなったに過ぎな
いと思っています。アラブ中東地域で一度も「手を血で汚さなかった国」の日本が本
当に野蛮になるなど目がくらくら舞う思いでございます。

 ライオンハート宰相様、これは何かの間違いですね。どうぞ、真相を私に打ち明け
て下さいませ。その返事を頂かないことには、遠い海の彼方から来た私はイラクに帰
れないのです。
 
 正直言って、日本があの1991年の湾岸戦争で135億ドルもの巨額を醵金され
たのを大変悲しい思いで見つめていました。それは日本の貢献金がミサイルに化け、
劣化ウラン弾の投下につかわれ、イラクの国土は破壊され、多くの尊い人命が失われ
たからです。そして今なお劣化ウランの後遺症に多くの子供たちが苦しんでいます。

 それでも、イラクは日本の軍隊がイラクにこなかったことでほっとしていました。
アメリカは今南部にある未探査の多くの油田、鉱区をフランス、ロシア、中国などか
ら武力で取り上げようとしていますね。阿部さんばかりか、多くの日本の関係者が聞
いていらっしゃるそうですが、実はイラク政府はこれらの鉱区の一番いい場所は日本
に提供したかったのです。それが日本の政府が、アメリカがイラクを大空襲する度に、
世界に先駆けて「空爆大賛成!」と誇らかに宣言されるので、与えたくても、与えら
れい環境を日本自身が作ってしまわれたのです。

 賢明な改革の騎士、ライオンハート宰相、こんなことは日本の国益に反するとお思
いになりませんか。貴方さまは、間違っている政治をびしびしと正し、勇猛果敢に改
革される類いまれな政治家だと聞き及んでおります。どうか、このシェヘラザードの
真心をお汲みとり下さいますようお願いもうし上げます。

 今宵、宰相に申し上げたかったことは、ただ一点、イラクは日本の軍隊を派遣され
なければならないような罪をおかしたかどうかと言う疑問でございます。是非、お聞
かせ下さいますよう、私も、その真意をイラク国民に納得の行くよう伝えるつもりで
す。イラク側にとって悪いところがあれば、反省し、直していこうと思っています。

 公私御多忙を極める小泉首相にすぐ出して頂くことはむりだとも存じますが、翻っ
て考えてみますれば、あれだけの重装備の自衛隊を送る以上十分理由を持っていらっ
しゃるに違いないと言う思いもします。

 もう一度申し上げますが、是非、日本が自衛隊を送り、イラク国民と交戦をも辞さ
ないというほど、平和国家の日本をイラクが怒らせてしまったと言う罪状をお示し下
さいますように。これは宿題ですよ。これがはっきりするまで、イラク国民は日本の
自衛隊派遣はお断り申し上げます。

 宰相様と御昵懇になってから、私の夜伽も一段と熱を帯びて参りました。しかし、
いまはもう東の空が白々と明け染めて参りました。これにておいとま申し上げます。

明日を御期待下さいませ。

シェへラザード


________________
シェへラザードに「拝啓、小泉首相殿」の訴えを譲ってから、内容が豊かになって来
たように思います。イラクへの派兵が断念されるまで続けたいと存じますので、隅
(すみ)からすみまでずずずずずいっと御願い奉ります。転送大歓迎です。ただ今後
のために御一報下されば感謝申し上げます。シェへラザード姫も喜んでくれると思い
ます。

阿部拝

書簡5 貴方こそ憲法の抵抗勢力

拝啓 小泉首相殿   

御機嫌いかがですか。と聞くのもしらじらしく響くのではないかと危惧します。どう
もこの頃の新聞でイラク派兵に反対の意見が多くなっているから、苛ついていらっしゃ
るようにお見受けします。

 一昨日の毎日新聞は、首相は、記者団から「イラクへの自衛隊派遣に過半数が反対
との報道がある」と問われたのに対し、「朝日新聞でしょ。朝日新聞面白いんだよ」
とはぐらかし「支持率が下がると1面で、上がると(記事が)小さくなる」との理屈
で「抵抗勢力」発言に及んだと報じていました。

 しかし、残念ながら、自衛隊派遣に反対する国民の比率は時が経つにつれて、もっ
ともっと高まることは必定です。

 何故なら、イラクでの反占領政策はますます激化していくことは確実ですし、そも
そもイラク戦争そのものが大義なき火付け強盗そのものといってもいい侵略戦争であ
ることは確実だからです。真実こそ、一度国民に知れれば、それは国民の意識を変え、
一つの力になり、それはやがて燎原の火のように広がって行くでしょう。

 回りくどいことはこれまでにして、ずばりいえば、小泉さん、貴方こそが国の最高
峰着、憲法にたてつく最大の抵抗勢力の首領(ドン)だと言うことを忘れないで下さ
い。

 「なにーい、俺が抵抗勢力だと!!」と貴方は目を向くかも知れませんが、どう考
えたって、貴方や貴方の周辺にいる一握りのネオ超国家主義者、戦争玩具オタク、オ
ウムのように貴方の方針をだ徒”御意””尭い”というだけの繰り返す操り人形たち
は、みんな、平和を願う庶民の心に弓を引く、戦後築いて来た平和国家、文化国家の
土台である平和憲法すら蹂躙しても構わないという、”時代錯誤の抵抗勢力”なので
す。

 まだ、それでも、20%、30%の派兵反対派がいるのは、主として今のマスコミ
がだんだん真実を伝えなくなっているからです。しかし、国民もあなたほど愚鈍(失
礼!)でない。戦時中の新聞のように、瑣末主義(トリバリズム?)、つまり国の命
運、国民の生活に直に影響する大問題よりも、タマちゃんとか、白装束(ろくに讀ま
ないから覚えていない)の記事をでかでか取り上げて紙面を被ういまのマスコミの今
の風潮の中で「ペン偽らず」と真実を貫こうと懸命のど力をしている報道人の記事は
多くの人の胸をうつのです。

 とにかく小泉さんは”変人”だといわれながら、総理大臣という位人臣を極めた時、
真の政治家とは何をなすべきか、真剣に考えるべきでした。何も政治家だから「修身
斎家治国平天下」など難しいことはいいません。立派な人格の養成と天下の趨勢を把
握に心がけて下さい。

 ソ連崩壊後、世界が平和の方向に進んでいました。その流れは今でもイラク戦争反
対の国際的な反戦の高まりの中に脈々と流れています。

 これに危機感を深めたアメリカの軍需産業は「平和は悪魔の選択」とばかり、アメ
リカのグローバリゼーションに抵抗する国々を「悪の枢軸」だの「ならず者国家」と
レッテルを張り、アフガニスタン、イラクと戦争を仕掛けて来たのです。

 小泉首相は、21世紀をこうした平和を指向する世界の諸国民の願いをみつめよう
ともせず、金さえ儲かれば劣化ウランも、クラスター爆弾もドンドン落とせというお
ぞましいネオコン一家の代貸し、ブッシュ親分に山荘に招かれて、「俺も世界一の超
大国野大統領にさしで盃を頂いた」など有り難がっていたのかも知れないけれど、胸
に手をあって考えてほしいのは、貴方のいの一番の務めは、日本人の平和と幸福の実
現なのであった、外国の厳守の御機嫌を結ぶなど、みっともない真似は日本の名誉の
ためにも止めてほしい。

 まして、貴方が「ブッシュ 命」などと有り難がっているブッシュ大統領自身が、
情報操作によって大義なきイラク戦争を始めた罪を問われ、その支持率も急降下して
いるというではありませんか。イギリスのブレア首相自身そのポストはぐらぐらし
揺らぎはじめています。

 悪いことはいいません。ここいらで、一日、いや一週間、できれば一ヶ月位、国会
議員全体で政治の基礎にかえって、憲法の学習会を開いた方が、日本の将来のために
なると思うのですが、いかがです。恐らく、貴方は、俺は忙しいんだ。ブッシュ大統
領との約束(福田官房長官に言わせると”国際公約”)を守らねばならない!。いい
から黙ってついてこい!」とおっしゃるでしょうが、一体ブッシュ・小泉会談で結ば
れた密約って何ですか。

 一国民として、イラク派兵法を審議する前にこの国際的密約の中味を吟味すること
の方がもっと大事だと思っています。小泉さんがブッシュに取り入りたいためという
心情も分からぬではないのですが、ブッシュは、小泉さんの単純なのにつけいて、イ
ラク占領のあかつきは石油利権を少しまわしてやろう、だから自衛隊を送れとでも誘っ
たのではないかと勘ぐりたくなります。いやそんなことは金輪際ないと言うのなら、
正々堂々と国会なり、ライオンハートのホームページで発表して下さい。

 しかし、他国の石油を武力で分捕ろうなど、これは強盗のやる国際法上許されない
ことですよ。それに、こんな不法な帝国主義的侵略にイラク国民がおいそれと受け入
れるでしょうか。何回も申し上げていますように、イラク国民は自国の歴史に誇りと
する民族で、1920年頃からイラクの石油を支配しようとやって来たイギリスの植
民地勢力にたいして民族的大反乱を繰り返して来た伝統を持っているのです。

 サダム・フセイン一家がどうのこうのという矮小された問題ではないのです。これ
から、イラクにおける自国の主権を取り戻そうという民族的抵抗運動は急速に高まっ
ていくでしょう。貴方はそれはフセインの残党のせいだとおっしゃるかも知れないけ
れません。しかし、アメリカが非人道的大量破壊兵器を情け容赦なくイラク国民(ま
たイスラエルがパレスチナか国民)をジェノサイド同様殺戮する時には、この人間は
フセイン派、この人間は親米的反体制派などいちいち調べた上で爆弾を落としている
のではないのです。

 いま、イラクで頻発している米兵の狙撃は、理不尽なアメリカの暴虐な行為への抵
抗運動などです。アメリカのイラク占領が続けば続くほどこの運動は激化して行くこ
とでしょう。それと同時に、小生は、戦中派の生き残りとして、イラクの戦場にかり
出されているアメリカの若い兵士たちに心から同情します。彼ら一人一人は、恐らく
将来、音楽家になりたい、科学者になりたい、弁護士になりたいという夢を持ってい
たはずです。それが、サウナ風呂の中には入っているような焦熱地獄の夏のイラクに
駐留している兵士たちの姿には今の高校生ぐらいだった小生には彼らの苦しみ、無念
さがよく分かります。

  小泉純一郎首相どの、貴方は22日、イラクでの米兵の死者数が1991年の湾
岸戦争での犠牲者数を超えたことについて「こういう厳しい状況にもかかわらず、イ
ラクの復興のために努力している方々に敬意を表したい」と述べ、治安情勢が悪化す
るイラクへの自衛隊派遣については「よく状況を見極めて判断したい」と首相官邸で
記者団の質問に答えた」(時事通信)ことを知りました。

 貴方が、こうした厳しい状況を認識し始め内心動揺し始めているなら、この際勇気
をだして、アメリカ占領軍に帰国してもらうようブッシュ大統領に進言したらどうで
すか。イラク人はまさか、アメリカまで追っ掛けいって復讐しようなど思はないでしょ
う。
 
 そして自衛隊派遣については「よく状況を見極めて判断したい」といったという。
ブラボー! そんなら一思いに、この派兵法案はいっそ廃案にしたらどうですか。百
歩譲って次の国会でゆっくり審議するとともに、国民ともっとゆっくり話し合ってか
ら決めたって罰があたらないと思うのです。

 御存じのイラクの中世のアッバス王朝の第五代カリフ(教主)ハールーン・アル・
ラシード王は、日本の『水戸黄門漫遊記』さながらに、幼な友達でワジール(宰相)
のジャファルと、警視総監である首切り役のマスルールを連れて、庶民のような出で
立ちで夜のバグダードの町を歩き、人々の生活を視察し、善政を施したといわれてい
ます。
(ここまで書いて来て正直くたぶれてしまったので、詳しくは3月22日に出した阿
部政雄著『イラクとともに30年-誇り高き文明の国ー』 (出版新社
 TEL03-3439-0705)是非一度讀んで下さい。貴方の煙草銭にもならない1300円
です。井上ひさし日本ペンクラブ会長は”真の心眼を開かせた名著”と誉めて下さい
ました。)

 悪いことはいいません。自衛隊をアメリカの占領を助ける他衛隊にしないで下さい。
きっぱり諦めて下さい。その方が、結局イラクのため、日本のため、アメリカのため、
ひいては貴方が、国際戦争犯罪法廷に出廷するという悲劇から身を守るためです。貴
方がA級戦犯なら、この派兵の実現に賛成した国会議員は、B級戦犯になるか、C級
戦犯になるか国際法学者に聞いてみます。貴方の方でも調べておいて下さい。

 どうもいい憎いことを書くやつだとお思いでしょうか、いいにくいことを書くのも
貴方のためです。「憎い憎い◯◯の反対」というじゃありませんか。

 言いたいことの100分の一も言ってないような思いがしますが、今日はこれ以上
書く時間的余裕がありません。生活もありますから。

ではまた明日。

阿部政雄拝

書簡6 「無駄な抵抗を止めて」イラク派兵法廃案を

拝啓 小泉首相殿

 昨日、「貴方こそ憲法の抵抗勢力」と書きました。

 世界の大勢に逆らったって、いづれは、イラクへの自衛隊派遣など破綻することは
目に見えています。 歴史の流れに逆らうのは、ここら当たりで幕を下ろしてくれま
せんか。

 口を酸っぱくして行っているように貴方はだんだん苦しくなり始めています。因果
応報は世の習いといいますよ。余り国費の無駄使いは止めて下さい。貴方とブッシュ
氏との私的約束など、日本で実現しようなんて了見を抱かないで下さい。それに戦中
派としてどう考えて貴方のやっていることは戦争犯罪人になりかけている。いやもう
なっていると言えないこともない。

  時事通信によれば、「政府は24日、イラク復興支援特別措置法案に基づくイラ
クへの陸上自衛隊派遣について、今秋に想定される衆院解散・総選挙後に先送りする
方針を固めた。イラクの治安が悪化する中、隊員に犠牲者が出れば政府の責任が追及
されかねないとの懸念からだ。現地情勢の推移などによっては派遣が年明けにずれ込
む可能性もある」そうですね。 

 ここ姑く前には、10月派兵と声高に叫び、それが11月に延び、今度は年内見送
りですか。国会は、”兵隊ごっこ”をやっている場ではないですよ。「良識の府」と
して国民のために国政を預かって国民から選ばれた国会議員が貴重な時間を書けて真
剣に討議する場所でしょ。

 「そう猫の目のように7転8転するなら、いっそ廃案にしろ」と怒鳴り付けたい心
境です。

 貴方は「ケ、セラセラ、なるようになれ、後のことは分からない♪」なんてまさか
思っていないでしょうが、こんな青写真も何もない法案を出すこと事態不見識きわま
りない話です。貴方がブッシュに似ようが似まいがそれは貴方の御自由だが、日本の
政治にブッシュのデタラメ政治だけは持ち込まないで頂きたい。

  こんな結果になったのもそもそも、イラクの情勢、中東の歴史について、きちん
とした外交方針を外務省が首相にて提出してい負かった罪は大きいと思う。 川口外
相は野党提出の外相問責決議案の否決後「自分のやっている外交が正しいと。(問責
は)別にそれだけのことだと思っている」と述べ、法案の成立に向け「全力を尽くし
たい」と強調したという。アメリカに追随し、国際社会から侮蔑の目で見られ始めて
いることなど全然自覚がない。野党が「日本外交は地に」と外相問責決議案を提出し
たのも、当然過ぎる話だ。

 これを見ていると、外務省は前田中真紀子外相からバトンタッチされて外務省改革
をするはずだったのが、今や海千山千のアメリカべったりの外務官僚が復活し、一層
悪くなっていると聞く。小生は外務省をもう50年近くウオッチングして来たので、
(年がばれてしまう)よく分かるが、外務省では中東始め発展途上国の実情を真剣に
研究するような外交官は、上層部から、疎んじられるような雰囲気がある。アメリカ
に胡麻をする追従組だけが出世する仕組みは変わっていないし、前より悪くなってい
る。

 しかし、外務省にも誠実な立派な外交官がいることは確かだ。一人だけあげれば古
き良き時代の話だが、1950年代の後半の土田豊駐エジプト大使など、いま思い出
しても胸の熱くなるような立派で高潔な大使であった。当時、ハスーナ・アラブ連盟
事務総長の訪日をめぐって、辞表を懐にして外務省と渡り合ったエピソードをこれも
外務省きってのアラブ通の小高正直書記官(後のシリア大使など歴任)が書いている。

 しかし、今の外務省では、そんな硬骨の意見など邪魔にされ、向米一辺倒の外交政
策がわが世の春とまかり通ってい」る。川口外相は環境庁長官だった当時は、それな
りの成果を上げたと聞いている。しかし、「自分のやっている外交が正しいと思って
いる」と平然言っているようでは外交のことが分かっていない証拠だ。自衛隊の隊員
のことを考えたら、もっと真剣にイラクのことを調査し、国会に提出すべきだ。職務
怠慢の極みだ。

23日の党首討論で、小泉氏はイラク復興支援特措法案に基づく自衛隊の派遣先で、
首相が「どこが非戦闘地域か分からない」と発言したことについては、 野中氏は、
「命懸けで出ていく自衛隊を思うと、一国の首相としては不見識な発言だ」と非難し
た。 全くその通りと思う。川口外相の答えはどうだろうか。

 はっきりいって、法案が数の力でゴリ押しに通したところで、それは永田町での数
の力で辛うじて通しただけの話だ。イラクの情勢の緊迫化は変わりはしない、ますま
す泥沼化の中に沈んで行くだろう。目を白黒させるのは、この法案を通した手合いで
あろう。

 そして、結局イラク国民の抵抗の前に、政府はその派遣を一月から春にのばし、ま
た夏が来て、秋風が吹き始めても決まらないだろう。そのなことは分かっている。も
し派遣したら、日中戦争の二の舞いに、シベリア出兵、ノモハン事件、大平洋諸島に
おける日本軍の玉砕k、ビルマやフリッピン戦線などの悲劇の再現にならないと誰が
断言できるだろうか。

 野中元幹事長の言葉のように、小泉さんは「議院内閣制や議会制民主主義を疎んじ
ている」ではないだろうか。

 また時間がなくなり始めているので、最後にショッキングな(しかし、冷静に考え
れば当然であるが)、かって大量破壊兵器査察官だったスコット・リッター氏が3月
25日放送のアイルランドのラジオインタビューといったように、結局「米英軍は負
けるだろう」
と述べている。  

その一端を紹介しよう。

___

 どれだけ多くのイラク人を殺戮しようが、アメリカは負けるだろうと私は予想して
います。そして最終的には、米軍はしっぽを巻いてイラクから逃げ去るでしょう。

 不幸なことに、米軍はイラクの人々に、想像を絶する数の死傷者と損害を負わせる
でしょう。アメリカの兵士と海兵隊もまた、大きな代償を払うことになります。

 イラク国外の安全な場所に居座って、アメリカ兵にイラク人を殺しまくれと奨励し
ている人たちは、恥を知るべきでしょう。

 でも、今のアメリカ軍はこの戦争に勝てるだけの十分な戦闘能力を持ち合わせてい
ません。ですから、かなり大量な部隊の補給が必要です。 

 これは、「悪い戦争」です。なぜなら、アメリカの自国防衛とは何の関係もない戦
いだからです。イラクは大量破壊兵器を持ってはいません。ブッシュ政権は、世界中
に対して、また自国民に対して、膨大な量のウソをつきまくりました。

(翻訳:パンタ笛吹/TUP)

 いま、アメリカが日本に自衛隊の派兵を焦っているのは、イラク駐在のアメリカ兵
を引き上げ、日本にその尻拭いをさせようとワナをかけようとしているのです。

小泉内閣総理大臣殿、

 日本の国益を守り、イラクの真の自立、復興のためにも、アメリカにイラク撤退を
すすめるとともに、日本の自衛隊を派兵するなんて、ネオコン以外誰も頼んでいない
時代錯誤の考えから脱却して下さい。国民のためにも、貴方自身の名誉のためにも。
 
  無駄な抵抗や止め、本来の職務に復帰するように!

 選挙も近いことですし。

ではまた明日。

阿部拝

書簡7 だんだん派兵は難しくなりそう 日本の破滅を救うのはイラクの抵抗運動かも

拝啓 小泉首相殿

 イラク特措法の国会通過で自衛隊派遣が決まりましたが、その実現は、推測通り、
だんだん難しくなって来ましたね。

 7月23日の国会最後の党首討論で、小泉さんは菅民主党代表の「イラクに非戦闘
地域があるのか、非戦闘地域がなければ、イラクへの自衛隊派遣は憲法に反する。非
戦闘地域はたとえばどこなのか、一カ所でも言ってみて下さい」と追及したのに対
し、貴方は「どこが(派遣可能な)非戦闘地域で、どこが戦闘地域なのか、いま私に
聞かれたって分かるわけがない」と答えました。

 また、貴方は、24日夜の参院外交防衛委員会でも、イラクの治安悪化を受けて
「状況を見て(自衛隊を)派遣しない場合もあるし、派遣する場合もある」と答弁
し、現在のような危険が続く限りは、派遣を見送る可能性もあることを明らかにしま
した。

 こうした貴方の回答には、正直言って口あんぐり、心底腹が立ちました。これまで
の国会の内外でのイラク派兵反対の激しい国民運動や討議を貴方は一体、何だととお
思いですか。

 だから、こうした日本の戦後の平和主義を根底から覆すような重大な法案はじっく
り検討すべきだったのです。無責任を絵にすれば、それは貴方の姿だ。

  貴方ばかりではない。 石破防衛庁長官も、27日、NHKの番組でイラク復興
支援特別措置法に基づく自衛隊派遣の時期について「国民に理解し、支持していただ
かないと国家の活動としては良くない。拙速であってはならない。きちんと基本計画
を作り、国民が『よし行ってくれ』という気持ちができる時期に派遣する」と述べ、
反対論に傾いている国民世論の動向を見極めながら慎重に判断する考えを表明してい
ます。

 そんな事始めから分かっていた。そんなに急ぐ必要のない法案を何故あたふたと碌
な審議もせずに短期間で国会で通し、自衛隊の派遣を急いだのか、専守防衛が任務で
ある自衛隊の感情をもてあそんだ責任は重大ではないか。担当の長官として、軽卒も
甚だしい。

 一方、今なお、猪突猛進型の山崎幹事長は、「人類社会で生存していくためには国
際協調が必要だ。カネだけでは済まされない。だから人的国際貢献をしよう。それが
イラク復興支援法だ。危険を冒しながらやろうという国民精神がない限りわが国は発
展しない」と強調して「 自衛隊は必ず派遣する」と断言している。

 国連の支持もなし、オーストラリアほか数国が参加するに過ぎないアメリカ軍の占
領補強の派兵が一体国際協調と呼べるだろうか。大義なき戦争に参加して自衛隊員に
無駄死させても面子をたもとうとする人物が幹事長とは、自民党も随分落ちぶれてし
まったものだ。

 こうした迷走を続ける小泉、山崎のKYコンビを見ていて思い出すのは、戦時中、夕
刻に毎日放送されていた徳川無声の名調子による『宮本武蔵』(吉川英治作)の朗読
です。中でも「巌流島の決闘」は圧巻でした。

 「(佐々木)純一郎、敗れたり!」
 「な、なにっ」
 「今回のイラク派兵は、すでに勝負あった。汝の負けと見えたり」
 「だまれ、なにをもって」
 「送れる身であれば、法案通過の今、何で派兵中止を口にする。・・・・その二枚
舌、汝の天命を投げ捨てた。惜しや、純一郎、散るか、散るをいそぐかっ」
 「こ、こいっ」
 「・・・・おおっ」

 正直言って、小泉さん、馬鹿にならない国費と、国会議員の貴重な時間を使い、国
民や自衛隊員にこれだけの心配を掛け、国民に身銭を払ってデモまでさせた償いはど
うしてくれるです。余り国民を馬鹿にしないで頂きたい。


       イラクの抵抗が日本を救う

 小生の考えでは、今の段階で、米兵へのますます襲撃が激しくなっているイラクの
現状を見れば、11月だの1月だの言っている与党3党が万一、自衛隊を送ることに
なったとしても、過酷な”夏将軍”を経過したイラク全土の戦闘状態はもっと抜き差
しならない段階になっており、下手をすると国中争乱の巷になりってくるかも知れな
い。 アメリカ本土でも 余りの米兵の犠牲の増大のため、アメリカ国内世論が沸騰
し、米兵の駐屯自体が危機的状態にならないと誰が保証できるだろうか。

 つまり、よく考えれば、イラク国民の米軍への抵抗運動が日本の自衛隊派遣を食い
止めてくれていると言えると思う。それに第一、米兵の襲撃が旧フセイン政権の残党
だけの仕業といのは、アメリカのプロパガンダの色彩濃厚である。なぜなら、アメリ
カがイラク戦争で恐怖の劣化ウラン、クラスター爆弾などの大量破壊兵器兵器で虐殺
しているのは、なにもサダム・フセインやバアス党員を狙って落としているのではな
い。アメリカは自己の犯罪がもっと明らかになるのを防ぐため、悪いのは、一切旧フ
セイン政権の罪のせいにしたいのである。(といって、小生がフセイン政権に過ちが
なかったと言っているのではないから誤解しないで頂きたい。)

 アメリカはアメリカのグローバリゼーションにとって障害となるのはイラク国民そ
のものだとアメリカは断定し、ジェノサイドしようとしているからである。  今回も
湾岸戦争を上回る劣化ウランを投下し、しかもバクダードの中心部にまで落としたこ
とはこのことを雄弁に物語っている。

 最終的には、アメリカはベトナム以上の敗北をなめることになって行くに違いない
でしょう。何故日本がアメリカとこんな不名誉な戦争の相棒として、心中する必要が
あるのでしょう。

 筆者が言いたいのは、モロッコのエルマンジェラ教授がいったようにアメリカのイ
ラク攻撃は文明にたいする野蛮の戦いであり、人類の未来が託された戦いなのです。
日本の首相として、この際、イラクやアラブの現代史を真剣に学ぶとともに、もっと
日本の歴
史を学び、憲法を体得し、国連の重要性、人間の尊厳など荷開眼してほしいものです。

 悪いことは言いません。前非を悔いてイラク特措法を廃棄して下さい。「過ちて改
めざる、これを過ちと言う。過ちて則ち改むるに憚ること勿れ」と孔子もおっしゃた
じゃないですか。改めることをモットーとする改革の王者小泉さんなら、朝飯前だと
信じています。

 結局、アメリカの軍事占領にたいするイラク国民の勇敢な戦いが、日本の自衛隊の
尊い命を救うことになるのだと確信しています。(このことはまた、改めて説明申し
あげます)

 今からでも遅くありません。チェッコなどの外遊をキャンセルしてでも、ブッシュ
大統領にアメリカに大義なき戦争をおわらせるためイラクの占領を中止し、国連を中
心として国際社会にイラクの再興を任せてはどうかと”友情ある説得”に赴いて下さ
い。

阿部拝

書簡8 戦争で逝つた人のために”鎮魂”の儀式を

拝啓 小泉首相殿

 「袖すリ合わすも他生の縁」と言います。貴方は首相。小生は一庶民。しかし同じ
日本に住む以上、そしてともに国を愛する愛国者として提携していける部分もあるの
ではと期待しています。ただし、小生が日本を愛するのは、平和憲法や教育基本法を
持っている日本ゆえの愛国者です。

 ところで、「小泉さんは日本の愛国者ですか?」と聞こうと思ったのですが、止め
ときます。ブッシュの顔が急に浮かんできたので、貴方にはイヤミに聞こえるかも知
れないと思ったからです。

 イラク特措法をとうとう通してしまいましたね。貴方はニコニコ顔でした。イラク
戦争は、ウソとインチキを練り合わせた理屈で開始されました。何で、日本がアメリ
カの犯した罪の尻拭いのために専守防衛のための大事な自衛隊員を戦闘状態にあるイ
ラクに派遣することがそんなに喜ばしいのでしょう。「ブッシュのためなら、エンヤー
コーラ」なんでしょうけれど、今後の御苦労を考えると、御愁傷様なことだとおもっ
ています。ただその付けは国民にしわ寄せしないで下さい。

 ロイター電によれば、そんなことどこ吹く風と(あるいは内心これは大変と思って
いるか知れないけれど)福田官房長官は与党の一部からの突き上げと称して、海外の
紛争地域などに自衛隊派遣するための恒久的な法律の制定のため、その大綱を取りま
とめの準備室を8月1日、内閣官房に設置することを決めたそうですね。外務省、防
衛庁などの職員10人程度で構成。昨年末に提出された福田康夫官房長官の私的懇談
会「国際平和協力懇談会」(明石康座長)の報告書をたたき台に、年内にも大綱を策
定する方針と伝えられています。

 しかし、小泉首相、貴方は自分の息子を派遣するのではないでしょう。夫々の生活、
将来設計、家族を持つ、自衛隊員を送るんですよ。万一のことがあったら貴方は責任
がとれますか。一人当り、一億円を用意するからなど言われていますが、家族の大黒
柱を一億円で送りだすとは、それにこのお金にしてもわれわれの税金にほかならない。
生身の人間から赤い血を流させる”戦争ごっこ”はもう沢山。まるで、人間の感情を
喪失した宇宙人の集団のようです。

 今、小泉さんは立派なもっとマニフェストを準備中とか。どうかわれわれ国民の胸
にストーンと落ちるように、「なぜ平和憲法を反古にして、日本がもう一度加害者に
ならなければならない必要があるか」を分りやすく説明して下さい。こうした国の命
運を左右するような重要問題は、国民との十分な対話を重ねてから国会で審議すべき
です。

  思えば、戦時中、旧制中学、「名古屋中学校」の高学年で学徒動員されていた小生
は、「兵隊に志願せよ」「戦場に行け」「桜の花のように潔く散れ」など校長や、教
頭に何回も何回も促されていました。そして級友の中には少年航空隊に志願して2度
と帰ってこなかった者もいます。
 戦争直後、大橋校長は、われわれ中学生全員を集め「本当は、自分は君たちを戦場
になんか送りたくなかった。キリスト教系のわが校は、よその中学校と比べ、兵役志
願者が少ないので、当局の督促も厳しかった。今、戦地で死んで行った学生たちのこ
とを思うと胸が張り裂けるようだ。本当に申し訳ない。心からお詫びしたい。許して
くれ」と涙声では謝罪されたことがあった。

 この機会にもう一つお話したいことがある。
      
 兄弟のように中のよかった級友の奥村君のことだ。3年生の頃は、二人で、いろい
ろ将来の夢など話したものだった。「名中」からの下校の途中、名古屋駅に近い米野
にあった彼の家によく寄った。造り酒屋だった彼の家を訪れる度に、優しい彼のお母
さんが「阿部さん、よくきてくれたわね。ゆっくり話していきなさいよ」とお茶を出
して下さった。

 勤労動員になった時、級友たちは名古屋市内の5つほどの工場にちりじりに配属さ
れた。奥村君は名古屋港に近い、三菱重工業の飛行機工場で働いていた。名古屋は航
空産業の中心だっただけにアメリカの空襲も激しく、敗戦の年の晩春だったか、彼の
工場が爆撃された時、彼は爆死してしまった。われわれは、奥村君は真面目だから、
空襲のときも工場内に引きこもって退避しなかってではないかと囁きあったものであ
る。

 終戦後、米野の大通りを歩いていたら、向こうから、寂し気にとぼとぼ歩いてくる
小柄の老婆がいた。近付いた時、思わずハッとのけぞってしまった。奥村君のお母さ
んだった。半年前まで、あんなに元気で優しかったおばさんの髪の毛は真っ白になり、
身体もひとまわり縮んでしまったように思えた。

 独りきりの跡取り息子をを失ってしまったお母さんは、元気一杯の小生の姿を見て、
か細い声で「あっ、阿部さんなのね。お元気で」といった。小生は「おばさん、奥村
君があんなことになってしまって残念です」といった意味のことを口にしたように記
憶している。慰める言葉も出てこなくて、しどろもどろだったようだ。力なくとぼと
ぼ歩いて行くおばさんの後ろ姿を見て、戦争の非情さに突きのめされた思いであった。

 正直いって、奥村君のお母さんの変わりようは、謡曲『隅田川』の中で、わが子を
探して、とぼとぼ歩く老婆とか、安寿と厨子王から切り離されて東北の片隅でひっそ
り生きていた盲目の老婆のやつれ方もかくやと思われるほど憔悴しきった姿だった。

 愛知県豊田市の郊外に疎開していた戦闘機の発動機の部品をつくる三菱の鋳物工場
で働いていた小生が、終戦も近い、ある週末に名古屋の家に帰っていた時、B29に
よる大空襲に見舞われた。アメリカの大型爆撃機29が名古屋を夜襲したのであった。
総数150機に上る巨大な飛行機が、30機、40機と編隊を組み、真っ暗な夜空を
無気味な轟音を轟かせ、サーチライトに照らされて金色に輝く姿は、それは正に、ア
ラビアンナイトに出てくる怪鳥ロックそのものだった。その怪鳥は、(木造建築の日
本の家屋を焼くために発明されたという)焼夷弾を文字どおり、驟雨のように降り注
いだ。

 その焼夷弾が落ちた所はたちまち赤い炎がめらめらと立ち上がり、夜空を赤く染め
ていく。その火炎の下では、必死になってわが子を救おうとしたり、倒れた家屋の下
敷きになった妻を夫を、わが子を救おうと必死になっている人々の姿があった。

 翌朝、伯父さんの家を見舞いに行くため自転車を走らせると、道路のわきに、焼き
芋みたいに黒焦げになっている人の姿を幾つも見た。

 余談だが、なぜ焼き芋を連想したかと言うと中学3年の時に、敵の空襲に備え、人
家の類焼を防ぐため、沢山の家々を「ヨイトマケの唄」を歌いながら、麦わら帽子を
冠り、腰手拭いをしたおばさんたちに混じって、これらの家屋を壊したことに関係が
あるのです。その作業の後に出る木っ端で焼き芋を焼いて食べるのが愉しみだったの
でした。黒焦げの焼死人の姿から、直ぐ焼き芋を連想したのもそのせいでした。丸山
明広の「ヨイトマケの唄」を聞くと、麦わら帽子のおばさんたち、焼き芋、そして空
襲による焼死者が次々と走馬灯のように浮かんでくる。

 実際、終戦後も、2、3年の間、寝つこうとすると、夜空を飛ぶ怪鳥ロックの姿が
まぶたに浮かび中々眠れなかったことがあった。

 考えてみれば、アメリカ軍は沖縄でも火炎砲などを使い住民の呵責ない掃討作戦を
おこなったではないか、広島、長崎への原爆投下も投下した。今、劣化ウラン弾をイ
ラクに降りそそぐアメリカの原点ではないか。その底に人種主義が横たわっている。

 つまり、アジアとか中東とかいった有色人種の虐殺を平然と行うのは、第2次戦争
中から連綿と続いているのであり、現在のパレスチナ人、アフガニスタン人、イラク
人への太量殺戮作戦も、利潤のためなならは、他民族をジェノサイドしても構わない
というアメリカの野蛮性が終始一貫しているのである。

 小泉首相とか、石破長官の発言を聞いていると、そうした歴史的事実などまるで何
も認識していないかのように思えてならない。

 日本人は、世界でも有数の健忘症であったとしても、小生には、小泉さんや福田官
房長官やその他のお歴々のように「ブッシュのためならエンヤコーラ」と綱を引く気
に到底なれない。

   少し、話は硬くなって恐縮ですが、最後に、「鎮魂」という言葉の真の意義を小
泉首相に捧げたい。私の心の奥に深く沁みとおるようなその意義を教えてくださった
のは、折口信夫博士です。

   「鎮魂とは、亡き人の魂を鎮めると同時に逝つた人の生前の才能や勇気を残され
た者がわが身に招来せしめる儀式である」

 小生が小泉首相に言いづらいことをづけづけ言うのも、「鎮魂」の儀式をしている
のだと解釈下さい。

書簡9 イラクやアラブの文明の高さに理解を 劣化ウラン弾は野蛮の象徴

書簡 9  イラクやアラブの文明の高さに理解を 劣化ウラン弾は野蛮の象徴

拝啓 小泉首相殿

 いよいよ政府は、イラク特措法の国会通過により、自衛隊のイラク派遣に踏み切ろ
うと準備を始めましたね。進軍ラッパの音色が響いてくるような感じです。

 しかし小生は、この自衛隊派遣がアラブ中東諸国の日本への評価が激的に悪化しな
いかと憂慮しています。どうか、現地の事情、アラブの歴史、国民性を充分理解して
頂くこと切望します。

 小泉首相は、今、今月18日からのドイツ、ポーランド、イタリアへの訪問の準備
に取りかかっていらっしゃることでしょう。

 オペラ好きの小泉さんのことだから、今度新たに付け加えられたイタリアを含めて、
この3国では、夏休みをかねて、ドイツ南部で行われるバイロイト音楽祭をはじめ、
ポーランド、イタリアでのオペラ鑑賞のできることを大きな愉しみにされているとか。

 夏休みと言うことでもあり、小泉さんの心ははや、ヨーロッパの空に”風の中の羽
根”のように舞い上がっておられることと思います。しかし、イラクの空では、劣化
ウランの粉塵が空に舞い、その粉塵を吸った人は、被爆して癌になり、白血病に苦し
んでいます。

 現在、日本各地で劣化ウランの人体への影響について講演しているアメリカの科学
者(元ローレンスリバモア核兵器研究所研究員)ローレン・モレさんは、「自衛隊を
イラクへ送ることは、自衛隊員に死刑宣告するようなものだ。彼らは劣化ウランの影
響から免れることはなく、彼らだけでなく、妻や子どもたちにもその影響は及ぶだろ
う」と話しているそうです。

 彼女の通訳をしているきくちゆみさんは、国会議員全員と小泉首相、日本の政治指
導者たち、イラクへ派遣される自衛隊員の方々とご家族に聞いてほしいと、訴えてい
ます。

 今回、この手紙で小生がいいたいのは、イラクやアラブ諸国の文明も、これら3国
に比べ、決してひけをとるものでない、いや人類を明るい明日を示唆する素晴らしい
内容を持っていることに気付いて頂きたいのです。

 それは、決して、米英や日本が援助して高める必要があると言う低い文明ではあり
ません。

 今日はそのことを2、3お話して、イラクの真の復興に寄与するとは、どんな意味
を持っているかと言うことを考えて頂きたく材料を提供いたします。

   数年前ですが、東京芸大でプッチーニ-の『蝶々夫人』を従来の異国情緒に富ん
だ東洋蔑視調から「貧しい小国でも高貴な精神をもつ日本への憧れ」「精神が貧しい
経済大国アメリカ」への批判 へと大幅に変えられたと聞いたことがありました。蝶々
さんが自害をしたのも、 「武士の娘の名誉が挫かれた」という魂からだったんでしょ
う。
  
 さて小生がアラブ人の心の高潔さを示す例として紹介したいのは、中世アラブ騎士
道の華とうたわれたサラハ・エルディン・アイユ-ブ(通称、サラデイン)のヒュー
マニズムです。

   キリスト教ばかりでなく、イスラム教も平等に扱ったドイツの作家、レッシング
(1729~1781)の「賢者ナ-タン」の中にで、サラデインを稀代の名君とし
て紹介しています。 

 とりわけ、かって1187年に、十字軍に占領されていたエルサレムを陥落させた
サラデインは、キリスト教徒がエルサレムを占領したときアラブ人を皆殺しにしたに
もかかわず、ヨ-ロッパのキリスト教徒を殺すようなことをせず、名目的な賠償金を
受けとった釈放したといわれています。

 また、小生にはにわかに信じられない話ですが、医学の心得もあったサラデインは、
僧侶の姿に扮装し、十字軍のリチャード獅子王の病気を治すために敵の城の中に入り
治療にあたったと言われています。1950年代の末にカイロで封切られたエジプト
の名監督ユーセフ・シャヒ-ンの『サラデインの勝利』にもこの感動的なシーンは登
場しました。命の危険まで省みず敵の大将の病気の治療に赴くなどあまりに感動的で
どう表現していいのか戸惑うほどです。

 セイフ・ワディ・ロマ-ヒ博士(一九七〇年代、駐日アラブ首長国連邦公使、上智
大学の国際法教授)は、その小冊子の中で「日本を知る上で注目すべき事象の一つに
『武士道』(侍精神)がある。偶然にもこれはアラブのForossyah (騎士道)と共通
するところが多々ある。」と言及していました。このアラブの騎士道こそ武士道の共
通するものです。新渡戸稲造博士の『武士道』は1938年にベイルートでフランス
語訳からの重訳、湾岸危機の始まる数カ月前の1990年春には、バクダードで原文
の英文からのアラビア語訳が出版され、讀んだ人々に感銘を与えています。

 かって労働大臣だった坂本三十次代議士、閣議にこの『武士道』を持ち出し、日本
人必読の書として勧めたと言う記事を朝日新聞で讀んだことがあります。あの頃はこ
うした硬骨な政治家がいたのだと懐かしく思い出されます。
 
 このアラブの騎士道と「無益な殺生をせぬ」「血を流さずに勝つをもって最上の勝
とす」る武士道の精神は、尊い人命が大量破壊兵器兵器でいとも簡単に奪われてしま
う惨劇を目撃する今日、われわれが取戻すべき大切な徳目ではないでしょうか。

 余りマスコミは書きませんが、ラムゼー・クラーク(元米国司法長官)の名著『湾
岸戦争』には「21名の米国人捕虜1991年3月3~9日に無事帰国している。彼
らが迅速な応急手当てや適切な医薬の使用など全般な医療看護を受けたたことは、米
国自身も認めている。米国人捕虜に与えられた食糧、飲料水、防空壕は、殆どのイラ
クの兵士や民間人が入手できるものよりも良いものだった。」と書かれています。

 湾岸戦争の際、アメリカはイラクが化学兵器を持ってクウェイトに進撃したのでは
ないかと、血眼になってクウェイト中を探したそうですが、何も見つからなかったそ
うですね。あの時国内の3分の1まで攻めてこられたイラクは一度も科学、生物兵器
を使いませんでした。イラクが自国のクルド人をか化学兵器で殺したという話も世界
中に流布され定説になっていますが、あの話も証拠は上がってないのです。西欧のマ
スメディアの意図的な誤報が定着してしまっている一例に過ぎません。

 どうも、イラクの話になると阿部氏の話は肩を持ち過ぎだとおっしゃる方が多いと
思いますし、言っている小生もうっとうしいことおびただしいので、イラクの話はこ
こまでにして、アラブの元首が如何に国民一人ひとりのことを真剣に考えいるかの実
例を御紹介します。

 それはエジプトの故ナセル大統領の言葉です。以下の言葉を知ったのは、1960
年の初頭、もう40年ほど前の話ですが、当時余りに感動したので、英語から翻訳し
ておいたものがコンピューターに写してありました。

  国の原動力としての国民一人一人が尊いのだとうナセルの思想は次の言葉に込め
られています。

   『私は一つの人類社会としての社会のために、また祖国全体のために、強健なも
の、病弱なもののためにもひとしく力を尽したい。とくに私は病弱な人びとにたいし
て、これまでしてこれた以上に力になりたい。というのは、空腹の人間は威厳をもち
えず、病めるものには力がなく、失業者には安らぎはなく、明日を信じられない人び
と、自分たちを守ってくれる社会に生きいると信じられない人びと、しっかりした大
地に立つ力を持ってない人びとともこれらのもの欠いてるからである。
   革命は無能力者という意義を認めない、この言葉はわれわれの辞書から抹殺して
しまった。各人はそのためにこそ生れたという本分を遂行する能力をもっているので
ある。各人 は、それぞれ祖国への義務を果し、その建設へ貢献する力を持っている
のである。』

 どうぞ、小泉首相も、劣化ウランの危険に曝される自衛隊やその家族へも。ナセル
大統領に劣らない思いやりを発揮して頂くことを祈念して今回の手紙を終わります。

 この手紙、いつも国会議員の全ての先生にお送りしているので、「外遊内歓」にお
忙しい首相にもお読み頂くようお勧め下さいますよう、よろしくお願いいたします。

では、また。

阿部拝
(転載歓迎)

書簡10 イラクへの自衛隊派遣は日本の自滅です(8月23日)

前略 小泉首相殿、

 イラクの治安情勢は日に日に悪化しており、19日バグダッドの国連駐イラク事
務所で爆弾テロが発生し、国連イラク支援派遣団のデメロ事務総長特別代表を含む1
6人が死亡するという大惨事となった。ブッシュ米政権は、国連施設を狙った今回の
テロを事実上、米国を標的にしたと受け止め、大きな衝撃を受けているといわれてい
ます。

 これまで、赤十字国際委員会職員が襲われたり、ヨルダン大使館など襲撃、さらに、
デンマーク兵の死亡など、攻撃の対象が米軍以外に拡大し、 日本人や日本の関連施
設への攻撃の可能性も排除できないと懸念も急激に高まっています。

 そうした中、13日の毎日新聞によると、在バグダッド日本大使館の再三の要請に
もかかわらず、イラクの米英占領軍当局(CPA)は人手不足を理由に日本大使館の
警備を断っている。こんなところへ、自衛隊のを派遣し、自衛隊にもイラク人にも死
傷者が出た
ら、日本とイラク、いやアラブ諸国全体との関係は破滅することでしょう。

 小泉純一郎首相も17日、ドイツに向かう機内で記者団に「イラクへの人道復興支
援に
ついては「十分に事前調査が必要だ」自衛隊の派遣については「どのような地域で、
どのような支援ができるのか。十分現地の実情を把握した上で、何ができるかを日本
として主体的に考えていきたい」とおっしゃいました。だんだん、及び腰になってい
ることがよくわります。

 しかし、派遣時期に関しては具体的な言及はできないという、まるで他人事のよう
な
発言などやめて、十分審議もせずに国会で強行採決したイラク特措法は白紙撤回する
とおっしゃたら、世間の人々は貴方を見直すでしょう。尊い自明のかかった、また国
民の税金を湯水のごとく消費し、しかも日本はだんだん世界から悪評を被るといった
法律すぐ止めて下さい。国会はパーフォーマンスばかり上手い変人政治家の「戦争ごっ
この殿堂」ではないからです。このことは、肝に銘じておいて下さい。

 とにかく、「アメリカの軍事行動に全面支持」を表明するなど小泉首相の涙ぐまし
い努力による「イラク派兵法案」の通過という米国べったり政策のお陰で、いまでは
日本は、中東では「米英につぐ第3の敵国」の称号がすっかり板に着いてしまった感
が深まっています。日本人自身が標的にされるような事態では、民間の協力だって不
可能になってしまうでしょう。
 
 イラクでは、米軍は毎日のように、イラクの抵抗勢力の攻撃にさらされ、現在ブッ
シュ大統領の勝利宣言以来すでに60名を突破、70名に近い死者数に迫っています。
これは公式発表にすぎず、事故死、未発表の分まで数えれば、その倍以上の数字とな
るでしょう。イラク戦争はますますベトナム戦争のような泥沼の中にずりおち落ちて
しまっています。

 戦死した米兵ジャマル・アディソン(22歳)の母親は「ブッシュは他人の息子た
ちを戦争に送っている。私は息子がブッシュの英雄になるより、臆病者でいいから、
この腕の中にいてほしかった」といって泣いたという。家族たちから兵士の帰還を求
めることも高まっている。

 かって「軍国の母」は白木の箱に入って変えて来た息子を涙を見せずに受け取り、
靖国神社に祀られるのが一家の誉れといった美談が氾濫しました。小泉首相に、今度
自衛隊の家族は同じ悲しみを味合う必要があるのかとお聞きしたい。それだけの正義
にもとづく戦争なのか。そんなに名誉なことなら、息子さんの孝太郎君を一度青年代
表として派遣してみたらとさえいいたいところです。
 
 つい最近には、デンマーク兵にも死者が出ました。これから、イラクに軍隊を派遣
するような国は、その国民を殺すことにゴーサインを出すに等しいのです。イラク派
兵など、軽々しく口に出さないで下さい。

 アラブ諸国22カ国で構成するアラブ連盟も、8月5日、カイロの本部で開催した
外相級委員会を開いたが、米国が求めるイラクへの軍隊派遣についても全会一致で賛
成する可能性はないとして、派遣しないことで合意したそうです。

 また、米主導で設立されたイラクの暫定統治機関、統治評議会は正統性がないとし
て承認しない方針を決め、新政権が樹立されるまで、イラクのアラブ連盟代表は「空
席」としました。米国が期待するイラク復興支援に向けた周辺アラブ諸国の経済協力
などは当面進展しそうにない状況です。アメリカが不等な占領を続ければ続けるほど、
反面教師として、アラブ諸国全体の反米運動を高めて行くことでしょう。

 占領によって石油利権を独占し大儲けを目論んだ身勝手なアメリカの思惑は、前提
となる治安の回復・維持さえおぼつかず、あまつさえ駐留経費が国家財政を圧迫し始
めています。国連安保理に新たな決議を採択させて、他国に軍隊と金を出させようと
いうという魂胆であったでしょう。そして新たに軍隊を派遣する国や復興支援の金を
出
す国に、米英両国政府の期待への貢献度に応じて、石油利権の分け前を提供するとい
うこんな押し込み強盗のようなアメリカと一体となる派兵を実現し、自衛隊員が殺さ
れたり、一般日本人まで標的にされ他なら貴方は一体どうします。

 正当性のない戦争を遮二無二強行したのは、アメリカなのだから、アメリカに責任
を取ってもらいましょう。何も日本が加担する義理は何もないのです。戦争でぼろ儲
けしているネオコンに金をださして国際法廷を開いてほしいくらいです。

 それでも、小泉さん個人がブッシュ大統領に義理があるというのなら、鎧兜に身を
固め、サンチョバンザ役の山崎幹事長を従えて、ドンキホーテよろしく、ご自身が勇
ましく出陣されれたらいかがですか。もちろん国民の税金は使わないで下さい。日本
国民も共謀していると誤解されたら嫌ですから。ちょっと脱線気味で失礼しました。

 前にも申し上げましたが、与党の方々は、今の段階で、米兵への襲撃がますます激
しくなっているイラクの現状を見れば、自衛隊の派遣は、枯れ葉の舞う晩秋だの、正
月過ぎだの、いや桜の花が咲く頃だのと、鬼が笑うようなことをおっしゃっています
が、その頃には、下手をするとイラクは国中争乱の巷になっているでしょう。 アメ
リカ本土でも 余りの米兵の犠牲の増大のため、アメリカ国内世論が沸騰し、米兵の
駐屯自体が危機的状態になり、ブッシュ大統領の再選など夢のまた夢となっているか
もしれません。

 つまり、よく考えれば、イラク国民の米軍への抵抗運動が、日本の自衛隊派遣を食
い止めてくれていると言えるのです。それに第一、米兵の襲撃が旧フセイン政権の残
党だけの仕業というのは、アメリカのプロパガンダにすぎないのです。なぜなら、ア
メリカがイラク戦争で劣化ウラン、クラスター爆弾などの大量破壊兵器兵器で無差別
的に虐殺しているのは、なにもサダム・フセインやバアス党員を狙って落としている
のではないからです。アメリカに反抗すれば、たとえ反フセインのシーア派であろう
が、たちまち、「フセインの残党」のレッテルを貼られるでしょう。

 それに、最近朝日の川上泰徳記者も書いていたように、アラブの国では、自分の親
族が不当に殺された場合は、殺した相手を草の根をわけても仇を打つ伝統的な感情が
あります。「目には目」という考え方に通じるものがあるのですが、小泉さんが自衛
隊でも派遣してイラク人を銃殺することにでもなれば、日本でも昔は、曽我の十郎、
五郎や田宮坊太郎の仇討ち物語り(こんな話を持ち出せば年齢が分かってしまいます
が)のように10年でも20年でも貴方をつけねらい、「ここで会ったが百年目。親
の仇、小泉純一郎、いざ尋常に勝負に及べ」というほど恨みをかうことになるのです
よ。記憶違いでなければ、ロバート・ケネディは確かカリフォルニアで、パレスチナ
の青年の銃撃を受け死亡したことを思い出します。

 自衛隊を送らさせないような事態をつくるため、独立を求めて必死に抵抗している
愛国的なイラク国民に、小泉首相は、感謝と連帯のメッセージを出してもおかしくな
いとさえ小生は思っています。皮肉に聞こえますか。

 それに第一、アメリカの今回の戦争には、なんらの大義名分はありませんでした。
ダブルスタンダードでない公正な報道がなされるのなら、ブッシュ大統領こそ、サダ
ム・フセインの独裁政治をはるかに超える「世界に冠たる」スーパー独裁者なのです。
独裁者といわれるサダム・フセイン政権の時は、とにかく小学校から大学院まで学費
は全額国庫負担で、高度の手術代を含め医療は殆ど無料だったというじゃないですか。
一方、アメリカでは、貧富の差は歴然たるものがあります。有色人種の人権は尊重さ
れているのでしょうか。

 小泉さんは、そんなことはアメリカの話だと他人事のように聞き流したいところ
でしょうが、そうは問屋は下ろしません。日本での医療費はどんどん上がるし、失業
者は増え、年間3万人の自殺者が出るとうていたらくです。それでも貴方は小泉政権
ができたから、生活はちっとは改革されたともでもおっしゃるのですか。昔は、自動
車事故による死亡者が年間一万人を越えたということが大きな社会問題にされました。
今では年間3万人の自殺者という数字がでています。時々書くように、「外遊内歓」
に忙しい貴方には、別に痛痒を感じるほどの問題でないかも知れません。しかし、7
5才の小生には、正直いって心の中で両手を合わせたくなる心境です。アラブに比べ、
高齢者にとっては日本は冷たい国に変貌したとしみじみ痛感している今日この頃で
す。

 ところで、小泉首相。貴方は今頃、ドイツのバイロイト音楽祭で、ワーグナーの5
時間に及ぶ「タンホイザ-」を鑑賞し「とてもよかった。感動した」と興奮さめやら
ぬ感慨を噛み締めておられるかも知れません。一部の新聞では、貴方がドイツ、ポー
ランド、チッコスロバキアを訪問したのも、結局首相の特権を生かして、北朝鮮、イ
ラクの話をしてくるという口実でこれら3国のオペラ鑑賞の旅に出かけたと報じてい
ました。こんなことができるなら、首相は、3日やったら止められなくなるのも無理
はないでしょう。
 
 ドイツとオペラと聞いてすぐ連想するのは、ドイツの劇作家,演出家,詩人のブレ
ヒトの代表的な戯曲『三文オペラ』です。ロンドンの警視総監と結んでいる盗賊の首
領マクヒィスが、かずかずの冒険ののちに,絞首台に上る代りに爵位と褒賞を授けら
れるようになったという皮肉なテーマだったと思います。非合法の泥棒仕事よりも、
合法的に収奪するブルジョアの方がさらに悪質であるという風刺劇なのですが、一見、
「世界の保安官」気取りで、切り取り自由の単独行動主義の超大国のアメリカの末路
がどうなっていくのかもじっくり考えて来て下さい。そしていいたくないけど、自国
民の将来より、外国の大統領のことが気になる気なる指導者は、結局国民に見放され
るということも。「天知る、知知る、われ知る」です。

 ゴア前副大統領は8月7日、ブッシュ政権を批判して、「何百万人もの米国人が今、
私たちの国でとても基本的な何かが間違ってしまったと感じている」とのべました。
全く同感です。日本でも「とても基本的な何かが間違ってしまったと感じている」人々
は急増していています。

 首相官邸も、外務省も、もういい加減に日本国民の税金を使って、外国の大統領の
御機嫌を取結ぶというちゃちな「三文オペラ」は止めて頂きたい。

 戦前から『のんき節』で一世を風靡し、戦後、タレント候補として初の国会議員と
なった清廉潔白な石田一松師匠が生きていれば

  お相撲や拳闘や
  レスリングなんぞは
  高い入場料をとられるに
  国会の「三文オペラ」は ただ見せる
  道理で 税金が 高くつく
  はは ノンキだね

と歌うかも知れませんね。

 日本の未来をしっかりと見据えた中東外交に真剣に取り組むべき時が来ているので
はないでしょうか。

阿部拝

書簡11 大義なき戦争へ自衛隊を派遣する危険について

拝啓 小泉首相殿(11) 
       大義なき戦争へ自衛隊を派遣する危険について(10ー9)
                「日本アラブ通信」編集長 阿部政雄
                 日本ペンクラブ国際委員 

 いよいよ、イラクの自衛隊派遣の準備が開始されました。昨日の東京新聞によれば、
11月下旬にも陸自先遣隊を送り、12月には本隊の一部100名をクウェートに派
遣、3次、4次と本隊の受け入れ準備がされるそうですね。

 正に、『ブーツ・オン・ザ・グラウンド』(軍靴で土地を踏み付ける)というアメ
リカの要請が、貴方のアメリカへの忠誠の証として粛々と実現とされようとしていま
す。

 これは、野中広務元幹事長の毎日新聞とのインタビュー(10月5日)での発言
「(日本)はひたむきに危険な道を走っている」ことを如実に示しています。野中さ
んの「小泉純一郎首相による米国重視のイラク政策について「安易に支持を打ち出し
たやり方に疑問と警戒感を持っていた」という憂国の危惧は、2才年下の小生(75
才)には、痛いほどよく分かります。

 小泉首相、今、自衛隊をイラクに派遣すれば、取り返しのつかない惨禍を日本にも
たらします。日本国民の命運を預かる首相として、どうかこのことを真剣に考えて下
さい。

 その理由はいくつもありますが、まず第一にイラク戦争には何の大義名分のなかっ
た、
不正の戦争であったことです。米英両国がイラクへの戦争の口実とした大量破壊兵器
は結局イラクでは発見できず、情報操作による開戦だとして両国政権は、国民の厳し
い批判にさらされています。来年の大統領選ではブッシュは再選されないといわれて
います。

 朝日新聞のコラムニスト早野透氏は30日のポリティカにっぽん「自衛隊イラク派
遣の大義とは」は秀逸なコラムでした.

 早野さんが質問者として出た、28日放映のCSテレビ朝日ニュースターの番組
「政策神髄」に小泉さんの盟友、加藤紘一氏が出演し、イラク問題について「大胆に
言えば、ブッシュ再選はないんじゃないか。民主党からヒラリー・クリントンが出て
来れば『イラクとの戦いは間違いだった』と宣言するのではないか」と述べ。また小
泉首相はアメリカを支持、イラクへの自衛隊派遣も「ひるむな」とハッパをかけてい
ますがという問いに「(自衛隊派遣は)すべきではない。大義があれば『ひるむな』
というのもいいでしょう。が、大義がない」と明言したそうですね.

 「イラク戦争はすべきでない」と本省に進言して不当にも解雇された天木直人前レ
バノン大使もまた、昨夜のニュース23で「小泉首相の国会答弁は詭弁を繰り返して
いる」と貴方の無節操さと見識の低さを強く批判しました。

 こうした声は、ブッシュ大統領の掛けとり集金と自衛隊派遣の督促来日が近づくに
つけ、ますます高まっていくことでしょう。

 いつも、胸のスカッとする翻訳のレポートを配信してくれているTUPーBulletin
の8月5日のパンタ笛吹きの帝国現地レポート(14)は秀逸な記事が満載されてい
ましたが、次のクイズは傑作でした。

そのクイズ(1)を紹介します。

「さて、以下の発言は、誰によってなされたでしょう?
 
「もしわれわれが、サダムを排除したくて、地上部隊を拡大し、イラクを占領し
ようとするなら、それは、われわれの方針に反することである。 
 それは醜い戦いに荷担することであり、計り知れないほどの人的、また政治的
な被害をこうむることだからだ。

 サダムを逮捕することは、たぶん不可能なことなので、わが軍はバグダッドを
占領しなくてはいけないし、とどのつまりは、イラク全土を占領・統治せざるを
えなくなるだろう。

 そうなると連合国の連帯は、あっというまにがたがたにくずれて、援護の兵も
引き上げるだろうし、アラブ諸国はわれわれに怒りを向けるだろう。そんな危険
な状況下では、イラク占領からかんたんに抜け出す作戦もとれない。

このように、単独主義的にイラクに侵攻して占領するのは、国連の方針にも違反
することであり、国際協調を台無しにしてしまう結果を招くだろう。

もしそれでも、アメリカがイラクを侵略したなら、米軍はにがにがしい敵意のま
っただ中で、いまだに占領軍として居座り続けなければいけないハメに陥ってい
ただろう」

http://www.truthout.org/docs_03/091503A.shtml

さて答えは、なんと、ジョージ・H・ブッシュ元大統領なのです。(1998年発行
の回顧録「変化した世界」より)

小生が自衛隊のイラク派遣を憂慮するのは、このブッシュ元大統領の最期にある言葉
「米軍は苦々しい敵意のまっただ中で、いまだに占領軍としてい座り続けなければ行
けないハメに陥って」いる泥沼状態の米軍の肩代わりを自衛隊にバットンタッチされ
ようとしていることです。

 石破茂防衛庁長官も5日朝のフジテレビの報道番組で、自衛隊のイラク派遣方針に
ついて(1)石油の大半を依存している中東地域の安定という日本の国益(2)水や
電力などイラクの民生の向上への協力―などの理由を挙げ、「米国に言われたからで
はない」と述べたという。

 これも失礼ながら,幼稚な発言である.日本がアメリカの占領政策に肩入れすれば、
イラク、アラブ諸国ばかりか、全世界的に日本はアメリカの従属国と見られ、逆に石
油の安定供給にも支障を生じ、国際貿易で生きる日本の経済は深刻な打撃を受け、他
国のことどころか、日本人自身の民生自体がますます低下していくことは必定でしょ
う。

 ブッシュ政権が何としてでも自衛隊を派遣しろとせっつくのは、イラクの軍事占領
という泥沼から自ら這い上がり、代わりに日本をつきおとし、今後10年も20年も
いやもっと長い間、自衛隊にアメリカの傭兵としての役目を担わせようという戦略な
のです。

 どうか、自衛隊員を大義なき戦争に犬死に同様な死に方をさせないで欲しい。
白木の箱の悲劇や岸壁の母の嘆きは二度と繰り返さないようにするのが、首相として
の第一の義務ではないですか。

 大義のない戦争で自衛隊員が死ぬような事態が発生した場合、貴方はそれを償
とができると本当に思っているのでしょうか。

  ブッシュ前大統領のいうように、「それは醜い戦いに荷担することであり、計り
知れないほどの人的、また政治的な被害をこうむることだからだ」なのです。

 トルコが1万人の派兵を決定したという.ますます,泥沼は大きくなり,水底は深
まってきそうだ.『会議は踊る』という戦前のドイツの名作映画があったが,小泉首
相『パーフォーマンスに踊る』のは,程々にして,日本人一人一人の貴い命を、いや
罪なくして命を落とす世界の人々の生命を、毎日真剣に考えてほしい。

阿部拝
(転送大大歓迎です)

書簡12 イラク派兵問題こそ,総選挙の一大争点に

拝啓,小泉首相殿 12 イラク派兵問題こそ,総選挙の一大争点に (10・14)

 この17日に,ブッシュ大統領が、貴方に約束の自衛隊のイラク派遣の督促と大枚
の復興費の掛け取りとのためにいよいよ日本にやってい来ます。

 日本の長い歴史の中で,蒙古襲来に匹敵するような国難来るいう正に国家危急存亡
の一大事と小生は考えています。しかし、一体何が悲しくて,今や世界からその横暴
な一国主義が孤立化され,イラク戦争の泥沼に沈みはじめているブッシュ政権を、日
本が福祉教育のために使うべき国民の血税を「大義なきイラク占領」のために惜し気
もなく奉納し,余っさえ屠殺場に化しつつあるイラクへ日本の自衛隊まで人身御供の
ように送り込もうとしているのか.この問題こそ,始まったばかりの総選挙の一大争
点とすべきではないでしょうか.

 これまで、小生は自衛隊のイラク派兵は、アメリカのワナだと長い間悲憤慷概の思
いを綴ってきましたが,昨今,「阿部さん,そりゃ貴方の考えが甘い.小泉氏自身、
一国の宰相になるだけの頭は持っているからバカではない。日本のネオコンと一体と
なって積極的に日本の軍隊を海外に派遣しようとしている彼の意図を見抜くべきだ」
と批判する方も多くなっています。

 正直いって,小生も,殆ど,この意見は正しいと思っています。小泉さんが「外遊
内歓」に明け暮れ、オペラやパーフォマンスにうつつ抜かすのは大石蔵之助流の仮の
姿で、本当は、将来の徴兵制度まで念頭に入れて、中国や韓国の抗議を無視して靖国
神社に詣でる超国家主義の確信犯がその正体ではないかと疑っています。もっとも、
蔵之助のように公儀の理不尽に死を持って抗議するという義の精神とはおよそ反対な
己の政権維持のためには日本の国益など外国に売り渡してもかまわないとうチャチな
利己心が見え見えです。アメリカとの盟友ぶりを示したいのなら、是は是、非は非と
諌めるのが真の友人でしょう。しかし、これも「天知る、地知る,我知る」で、小生
の揣摩臆測よりも、小泉さんから、この選挙中に、自衛隊派遣の真意を率直に国民に
説明される絶好の機会ではないでしょうか。

 今,思い付くまま,自衛隊の派遣が日本におよぼすマイナス面を列記してみましょ
う。

1)日本がアメリカの占領に軍事的に肩入れすれば,アラブ中東,イスラム諸国民は,
その親日感情を反日感情に劇的に変化させてしまでしょう。平和日本の姿が、帝国主
義の傭兵日本の姿に変わる歴史的転換点となります。その日本に与える被害は,今後
の日本の国家予算の何十年分にも相当する惨たんたる結果になるでしょう。

2)日本の自衛隊員が襲撃され,殺害されたり,あるいは,イラク人を殺したりすれ
ば,日本は明白に敵国となり,果てしない報復戦争に引きづリ込まれでしょう。そう
なったら、互いの犠牲者が増大し、イラクのパレスチナ化のために果てしない植民地
国家であり続けるという正に巨大なアリ地獄に日本はまっ逆さまに突き落とされてし
まいます。警戒すべきは,人のいい日本をこの泥沼に追い落とそうと手ぐすね引いて
待っている国際的組織があることも念頭において欲しいのです。こんな事態になれば,
「ブッシュ,ブレア、コイズミ」は、国際的に『隠し砦の三悪人』として後世にその
悪名を残し、孫子の代まで戦犯として恨まれますよ。その覚悟はおありですか。

 その余波で、アラブ中東地域では日本はアメリカ同様に、いろいろ白い目で見られ
てしまいます。これでは、明治以来日本の諸先輩が営々と築いてきた結びつきを、自
らの手で跡形もなく爆破してしまうようなものでしょう。バーミヤンの巨大な仏像の
爆破を笑っている立場じゃないでしょう。

3)それに、イラク戦争では前の湾岸戦争以上に大量の劣化ウランが使われています。
猛毒兵器である劣化ウラン弾は核兵器でもあり、その被害は子々孫々にまで及びます。
この劣化ウランから出る放射を浴びるイラク人はもちろん、アメリカの兵士の子供に
奇形児が生まれたる悲劇が続発しています。今度自衛隊員が行くイラク南部では、湾
岸戦争以来、劣化ウランが大量に投下された地域です。このための調査団は派遣して
いるのですか。まだ調査していないなら、今からでも遅くないので直ちに調査団を送っ
て下さい。

4)それに、互いに罪のないイラクと日本人がなぜ、殺しあわねばならない状況に放
り込まれる必要があるだろうかと言う大問題も何一つ説明されていません。つまり何
の大義もないのです。

 小泉さん、貴方は、イラクへの派兵が、若葉マークの自衛隊員を実践に役立つ軍隊
に鍛え上げたいと言う防衛長官、防衛庁幹部の考えと同じで、日本を今一度、無責任
な超国家主義に戻したいという野望にかられているのですか。 あの靖国神社参拝も
この路線上の一齣だったのかと思われてなりません。包み隠さず、国民に信を問うべ
きです。こんな疑問が、あとからあとから、止めどもなく出てきて、不安はますます
深まるばかりです。

 固い話はこれまでにして一服しましょう。派兵のおよぼす悪影響の続きは次のレター
に譲ることにして、ここらで、話題を変えたいと思います。

 小生は、アメリカのイラク攻撃をまっ先に支持した政治家、小泉さんは、本当は小
心翼々の卑怯者だと思っています。そんなに、イラク占領がイラクのためになると言
うのなら、貴方自身が堂々とイラクに行って、イラクの暫定政権の幹部と会うなり、
イラクの代表的政治家と会って、イラク側が日本に何を望むか、直接聞いてくるべき
です。そんな大事なことをさぼっていて、調査を他人に「丸投げする」など無責任を
絵に描いたようは姿です。「よう、丸投げチャンピョン」など陰口をたたきなるくら
いです。

 こんなことを書いていてふと、歌舞伎の菅原伝授手習鑑―寺子屋― を思い出しま
した。  この『寺子屋』と言う芝居は、藤原時平の讒言によって大宰府へ左遷された
菅原道真の旧臣武部源蔵が道真の遺児秀才をかくまっているが、ついに時平に露見、
首を打つことになり、寺子屋の門下生の首を打って差し出すが、それは、源蔵と共に
道真に仕えていた松王丸の実子、小太郎で、松王丸は、道真への報恩のため子供を差
し出したと言う物語です。多分に封建的内容のこの芝居が今でも人気があるのは、罪
なくして流罪となった学問の神様、善政をしいた政治家の菅原道真の子を守るという
大義が背景にあるのです。

 小泉首相に言いたいのは、そんなに自衛隊派兵に大義があり、首相自身が派兵に御
執心なら、貴方自身が、息子さんの孝太郎さんを同行して、現場を訪れるべきだとい
うことです。貴方の倅の命を差し出せなどとは毛頭、思っていません。ただ、人間は
どこの国の人であれ、「一人一人の命は地球の重さにも等しい」ことを知って欲しい
からです。

 小泉首相の顔をテレビで見ていると、そのパーフォーマンスといい詭弁ぶりといい
ブッシュ大統領とまるで一卵性双生児のようによく似ているとつぐつぐ思います。
「巧言令色鮮(すくな)し仁」とはこのことかと思い、「人は見かけによらぬもの」
だと痛感します。日本のマスコミの「小泉よいしょ」も少し度が過ぎていると思って
います。担がれたお神輿から、ふるい落とされたら痛いですよ。

 75才ともなると、頭の中にいろいろなことが頭の中に記憶されているものです。
今度は謡曲、「紅葉狩」を思い出しました。

 あれは、アメリカとの開戦の1941年12月8日の丁度、2、3日前の当時のJO
CK(今のNHKの中部放送)のラジオでした。中学一年生だった小生は、夜遅く、
この「紅葉狩」に聞き入っていました。

 物語は、信州戸隠の山中で、女達が紅葉狩の酒宴の場から始まります。
 鹿狩りに来て通り逢わせた平惟茂(これもち)は、誘われるままに酒宴の席に付き、
山奥に不似合いとは思いながら、女達の舞に盃を重ね、ついに酔い臥します。惟茂が
眠ると、舞のテンポは急変し、凄まじい夜嵐の音とともに、女達は消え失せ、夢の中
で八幡神から身の危険を知らされた惟茂が、目を覚ました時、雷鳴が天地に響き、鬼
が現れ襲い掛かりました。惟茂は八幡神護を信じて戦い、ついに鬼を斬り伏せたと言
うストーリーです。
 
 うとうとしながら聞いていたのですが、アナウンサーは、この鬼達の姿こそアメリ
カの正体だと解説していました。アメリカと戦争になれば、いづれ戦場に送られるだ
ろうと言う緊張感もあったのか、横笛、小鼓の軽快なテンポと相まって、この『紅葉
狩』はよく記憶しています。つまり、小泉さんの正体と言うのは、日本の帝国主義の
復活を目指すこの鬼なのではないかという疑いです。

 それリゃ、芝居や映画の見過ぎだとか、勝手な憶測とおっしゃるなら、その疑いが
晴れるような、きっちとした説明を是非、お願いします。今度の総選挙こそ、小泉さ
んの日本の未来像を国民に示す絶好の機会ではないでしょうか。男、純一郎の晴れ舞
台だと思っていますが、いかがですか。

阿部拝
(転送大歓迎)

書簡13 自衛隊のみなさん、「森の石松」のだまし討ちにあわないように

拝啓 小泉首相殿 13 自衛隊のみなさん、「森の石松」のだまし討ちにあわないように(10ー7)

 華やかなマスコミのファンファーレの中で、待望のブッシュ大統領が来て、小泉
首相の「人とカネ」の貢献に満足するブッシュ氏と得意満面の貴方の顔を見ていると、
これが独立日本国の首相かと、残念ながら暗涙を飲む思いがします。
 
 今、戦前の軍国主義路線を粛々と歩んでいると日本の姿は、昭和3年生れ、昭和の
前半を戦争で過ごした小生には「この道はいつか来た道--ああそうだよう。軍靴の
音がザクザクと響くよ ♪」と心境です。

 日中戦争が始まったのは、小学生3年のときでした。あの頃、一世を風靡したのは、
広澤虎造の浪花節、とりわけその『森の石松』の『三十石船』がラジオからよく流れ
てきて、最後の文句「馬鹿は~死ななきゃ~直らあ~ない」が流行語になりました。
あの頃は娯楽が少なかったせいもあり、こうした物語は小学生でも覚えてしまうもの
でした。

 この「馬鹿はしななきゃ~」とう科白が大流行した理由を知ったのは、もう20年
近く前に、講談社  学術文庫「近代日本の心情の歴史-流行歌の社会心理史」見田宗
介氏の文章を読んだときでした。この『馬鹿」と言うのは、当時の日本の軍国主義の
ことを行っているのだと言う見田氏の解説を読み、なるほどと納得しました。
 
 また、人のいい石松が、次郎長親分の代参として讃岐の金比羅様から清水港に帰る
途中、遠州中郡の都鳥吉兵衛に二十五両の大金を貸したばっかりに、吉兵衛一味の闇
討ちされ、めった切りに殺される講談、浪曲、映画で有名でシーンをやたらに目に浮
かんできます。刀や鉄砲は前からでなく、後ろから斬り付けられり、銃弾で後ろから
ズドンと後ろからくることもあるので、ご用心です。石松が清水を出発するときの虎
造の文句に、「雨垂れおつる三途の川、そよと吹く風無情の~風」「これが親分、兄
弟分~一世の別れにならうとは、夢にも知らぬ石松が、清水港をあと~にする ♪」
といったやけに湿っぽい文句がついていたのを思い出しました。

 「馬鹿だけが死ねばこんな目出たいいことはない」のですが、アジアの民衆200
0万人ばかりか、多くの日本人を犠牲にあと、国土を焼け野が原にしてしまいました。
やっとこの「馬鹿な日本の軍国主義」が死滅するのは始末におえません。第二次大戦
の終りには、沖縄での壮絶な民間人の犠牲、はては270万人とも言える原爆犠犠牲
者を出してやっと終わったのは、返す返すも残念でした。だが、死んだと思ったこの
お馬鹿さんのこの超国家主義が、おとぼけ首相の懸命の努力によって、また息を吹き
返したという昨今、人のいい日本の自衛隊隊員の方々が、「イラク復興」なる美名の
もとに、こんな非業の最後にならなければと心配になることがだんだんと多くなって
きました。
 
 そういえば「森の石松」が流行したあの頃は、股旅者の講談、映画、流行歌がやた
らに人気を集めていました。「妻恋道中」とかいう流行歌の中に「好いた女房に三下
り半を投げて長脇差(ながどす)長の旅」という文句があり、寺山修司がいっていた
ように、それが私たち子供にとっての童謡でもありました。しかし、小学生ですから、
夫婦の愛など分かるわけはないのですが、子供心に、どうして愛している女房を離縁
して旅に出なければならないのか合点が生きませんでした。

 これも、当時1銭5厘の赤紙がやってくるといやでも戦場に行かなければならない
徴兵適齢期の青年たちの嘆きが込められていたのだという見田氏の解釈で合点がいき
ました。

 思えば、日中戦争から第二次大戦の終了のときまで、小生は、何十回となく、出征
兵士を名古屋駅で、日の丸の旗を振って見送った小学生時代、親類の叔父貴に召集令
状が来たとき、親類一同が紋付の羽織を着てはつまって「目出たい、目出たい」と祝
いの主演を開いていた中学生の頃、戦争末期に学徒動員されていたとき志願して少年
航空兵などに出生する同級生をわれわれは円陣を組み、戦闘帽をちぎれるように振っ
て、軍歌を歌って壮行会を開きました。

 旧制中学の高学年ともなると、多少の戦争への疑問が胸の中に芽生えるようになっ
たものの、戦争を出て行くことが、なんでそんなに目出たいのだろうと子供心に不思
議でなりませんでした。

 それは、あの戦争は「東洋平和のため」「蒋介石擁懲」「鬼畜米英撃滅」とその時々
の軍部の強力なキャッチフレーズによって、働き盛りを失う家族の嘆きや、一切の将
来の夢を立たれた青年の悲しみなど木っ端みじんに吹き飛ばされていったのです。
 
 昭和12年7月7日に始まった日中戦争の秋に、級友の畳屋の山本君の父親が中国で
戦死し、白木の箱に入って帰って来ました。山本君は内心、深い悲しみを抱いていた
に違いなのですが、昼休みのときなど、みんなとキャッチボールをして快活に遊んで
いました。おそらく、悲しみをわすれ、乗り越えるために、わざとスポーツに夢中に
なっていたように感じられました。
 
 担任の先生から、「阿部、山本君は今悲しい思いをしているから、作文など書く心
の余裕がないだろうから、お前、自分の父親が戦死したと思って「名誉の戦士をした
お父さんを偲んで」と言った作文を明後日までに書いてきてくれ」と言われました。
何でも県庁の指示で、戦死した家族の小学生は皆感想文を書くことになっていたらし
いのです。 
 
「はい」とは言ったものの、自分の父親が戦死したわけではないので、机に向かって
も、一行も文章など浮かんできません。本屋に行って、たしか「小学生綴り方模範文
集」を買ってきて熱心に読んでみました。これは戦後知ったことですが、この綴り方
運動は、戦争中の進歩的な小学校の教師達が子どもたちに自分の周辺を先入観なく見
つめることにより社会の真実の知らしめようと言う反対制的な運動に基づく本のよう
でした。とても、想像で、級友の父親の死を哀しむと言う趣旨とは、およそ懸け離れ
た小学生にふさわしい瑞々しい文章ばかりでした。

 結局、どんな内容のものを先生に提出したか、よく覚えていないけれど、先生がこ
れならいいだろうと言ったのは、その内容が、「僕のお父さんが戦死してしまった。
しかし、僕もお母さんも悲しくない。それはお父さんが日本のために戦って死んでいっ
たからだ。僕はお父さんを誇りに思っている」といったような、歯の浮くような、県
庁も喜ぶようなことを書いたようだと思う。
 
 しかし、戦後、このことをふと思い出す度に、およそ、山本君の心情と全く懸け離
れていたことを書いてしまったのではないか、当時の事情でやむ得なかったとは言え、
自分も一つの罪をおかしてしまったのだと反省が時として、突き指のように心に蘇る
ことがある。
 
 もう40年前のことと思うが戦後、日本の誇る名監督の一人木下恵介監督の戦時中
に作った『陸軍』と言う劇映画を見た。手塩にかけたひとり息子の応召を駅頭で見お
るくる母親(田中絹代)が、打ち振られる日の丸の波の中で、「どうか、無事に帰っ
てきておくれ!」と走り出す列車とともにわが子の呼び掛けるシーンには感動した。
それば真実の言葉だったろう。
 
 今、小泉首相とブッシュとの誓約とやらで、自衛隊員がイラクの戦場に送られる。

 「一将功なり万骨枯る」と言うことを思い出すが、イラクの戦場は、劣化ウランの
砂塵の舞うメソポタミアの大地に舞っている「山川草木転(うたた)荒涼」ならぬ千
古の都バクダ-ドにも情け容赦なく降り注がれた。
 
 自衛隊の皆様、どうか、一日も早く、任務を終わって、ひとり残らず無事で日本に
帰ってきて欲しいまして、「風の中の羽根のように」軽薄なオペラ好きの栄達志向の
小泉首相、万骨枯れても栄誉を得たいような戦争プラモデル好きなオタク長官や「夢
よもう一度の」幹部たち、それに「昭和の妖怪」の孫のプチ妖怪の新前幹事長の面々
に義理はないはずでしょう。
 
 小首相も、戦争オタクの皆々様、これから「自衛隊」など言いわないで、「他衛隊」
と呼ぶべきだと思うがいかがでしょうか。

阿部拝

書簡14 「売り国と兵士差し出す三代目」では困ります

書簡14 「売り国と兵士差し出す三代目」では困ります 10月20日

拝啓 小泉首相殿

 この17日,ブッシュ大統領夫妻と小泉首相の喜色満面の写真は,新聞の一ページ
を飾ったが,まるで小型の台風のように「風とともに去って」しまいました。

 しかし、15億ドルと大金を拠出され,自衛隊を年内に派遣しますという小泉氏の
申し出にブッシュ大統領は満足げのようでした。大統領の来日前にイラク派兵を発表
したのは,アメリカから圧力をかけられて決定したのでは自主性を示し,米国従属と
見られないためというから芸が細かい、姑息な手段としか言い様がないに思います。

 それに,大統領は「来日」したのではなく,「首脳会談」の代わりに「懇談と夕食
会」したことにしたと聞きましたが,そのくらいの細かい配慮は、「有事法制」や
「イラク特措法」の国会審議の際にして欲しかった。

 クリントン大統領は、来日の際に早稲田大学で講演したり,テレビ出演までして市
民と対話をしました。いかに,支持率急降下の落ち目の三度笠のブッシュ大統領でも,
日本国民に感謝の言葉と,この金は何に使う位説明あって然るべきだったでしょう。
そうすれば「よう,大統領!」と御贔屓筋から声もかかろうに。こんなに破格の貢ぎ
物を受け取りながら,さらに数十億ドルは出させる腹と言う。「日本人と胡麻の油は
搾ればしぼるほど出る」とでも思っているのだろうか。日本人を軽く見ているのだと
しか思えません。

 日本などの派兵を見届けてか,アメリカは現在13万規模のイラク駐留米軍を20
05年半ばまでに5万人、いや3万人程度に大幅縮小する計画が陸軍内で検討されて
いると報じられています。創設中の新生イラク軍や国連決議に基づく多国籍軍に治安
維持任務を段階的に移譲し、米軍の負担を軽減する狙いで、縮小時期を明確に示すこ
とで、駐留米兵の士気低下を食い止めたい意向のようです。

 幸い,トルコの1万人規模の派兵は、イラク人の暫定統治機関、統治評議会やクル
ド人が反発から,実現しない可能性が出てきていますが,最終決定には米国の意向が
物を言いそうで,そうなったら,イラクでは新たな戦争も起こりかねない。

 そんな中で,衛星テレビ局アルジャジーラはビンラディン氏がテープの中で、米国
のイラク政策を支持する英国やスペイン、オーストラリア、ポーランド、日本、イタ
リア、イスラム諸国を名指しし、「われわれには適切な時期と場所で報復する権利が
ある」と主張。特にクウェートなど湾岸諸国に報復するとしている。

 アルカイダに奇襲されたら日本の自衛隊は,イラク人相手に報復するだろうか。そ
んなことをすれば,日本はそれこそ,イラクを始めアラブ、イスラム諸国や第3世界
の札付きの侵略国家となってしまいます。

 しかし、今様ドンキホーテの小泉首相は,武者震いするかのように,自衛隊をあく
まで年内に派遣するとのことです。

 額賀福志郎政調会長も19日のNHKの討論番組で、先遣隊を年内に送るとの方針
を明らかにし、その上で、額賀氏は「(イラクの)南東部はインフラ整備のニーズが
多い。(陸上自衛隊本体が)どこに宿営地を作るかなどについて先遣隊を派遣して環
境整備する」と述べました。 政府は18日、イラク復興特別措置法に基づく自衛隊
のイラク派遣に先立つ「専門調査団」(自衛官で構成)の派遣を見送る方針を固めて
います。米国の要望に応えて陸上自衛隊先遣隊の年内派遣を決めたため、時間的余裕
がなくなったことに加え、調査団の動きがクローズアップされれば11月9日の衆院
選に影響を与えかねないという政治判断を優先したといわれています。

 ここでも,選挙に勝つことが優先で,自衛隊員の安否など問題にならないような態
度です。イラクでは米軍への襲撃や自爆テロが頻発する現状から,石破茂防衛庁長官
は隊員の安全確保について「実際に派遣される自衛官が見て判断しなければいけない」
と説明してきた経緯があるにもかかわらずにです。

 それに,そもそも,これだけ大騒ぎして,イラクを占領しているアメリカ軍を補強
するのに,いったいどんな大義があると小泉首相はおっしゃるのですか。

 こうした日本の命運に深く関連するイラク情勢について、衆院選でもっともっと論
争を深めて欲しい。外交と内政とは本来不可分です。今や世界的に孤立化しているブッ
シュ米政権の「単独行動主義」に日本がそんなにホイホイついていく必要はないし,
それを諌めるのが同盟国の義務ではないかと以前から申し上げています。久しぶりに,
外交問題を争点にして,世界を広く見てきた首相から,日本国民の国際的視野を広げ
て欲しい。

 米兵の家族は「息子や娘が毎日死ぬ、早く帰って欲しい」と要望しています。何で
も兵士さえ派遣するば、問題が解決するなんぞとんでもない話だ。自衛隊員が犠牲に
なったらどうします。日本をますます泥沼の深みに突き落とすことになってしまう。

 自衛隊問題に詳しい社民党の今川正美衆院議員は「派兵予定の自衛官の中には,家
族会議を開いてみの振り方を考える人もいるだろう。自衛官をやめたいと思っても,
今転職することは難しいことを考えれば,家族事情を理由にした出動忌避は実質的に,
インド洋派遣のとき以上に増える可能性が高い」と自衛官の気持ちを代弁すると東京
新聞は報じている。一方、民主党は公約で米国のイラク攻撃を国際法違反と断じ、イ
ラク特措法の「廃止を含めた見直し」を打ち出した。もちろん共産党は,イラクへの
派兵反対を貫いている。政府与党の議員の中でも,自衛隊隊員を守ろうと言う声を聞
きたいものです。 

 筆者の生涯に大きな影響を与え,今なお多くの教えを与え続けている新渡戸稲造博
士は、随筆の中で、代議士、弁護士、税理士はその言葉に士(さむらい)という文を
付けている以上、武士のもつ高い道徳を持つべきではないかと強調されていました。
それは,ノーブルス・オブリ-ジ(身分に伴う義務)でしょう。

 真の勇気について、新渡戸博士はその著『武士道』で言っています。

 「プラトンは勇気を定義して、「恐るべきものと恐るべからざるものとを識別する
ことなり」と言ったが,プラトンの名前を聞いたことさえなかった水戸の義公(水戸
黄門)も,「戦塲に駈け入りて討ち死にするはいとやすき業(わざ)にていかなる無
下の者にてもなしえらるべし。生くべきときは生き死すべき時にのみ死するを真の勇
とはいうなり」と書かれている。ーーーいやしくも武士の少年にして,「大勇」と
「匹夫の勇」とに
ついて聞かざる者があろうか」と。

 昔,「 売り家と唐様で書く三代目」と言う川柳がありました。「売り国と兵士差
し出す三代目」とならないように日本の政治家にお願いしたいものです。

阿部拝

書簡15 自衛隊の派遣は、イラクへの主権移譲に役立つか

拝啓 小泉首相殿15(11月27日)  自衛隊の派遣は、イラクへの主権移譲に役立つか

 川口外相は、マドリードのイラク復興支援国会議終了した24日夜、日本が表明し
た4年間で最大50億ドルの支援について「日本の役割を果たすことができた。米国
の4分の1の金額だが、米国に次いで2番目だ」と胸を張ったといわれています。

 「打出の小槌」がある訳はあるまいに,50億ドル,(5500億円)と言う日本
の支援金の突出ぶりは、なんといっても異様です。日本国民の福祉や,教育の予算を
情け容赦なく削り取るこの支援金は、果してイラクの”復興”に役立つのでしょうか,
アメリカの「死の商人」の巨大なネオコンをうるおすだけではないかという疑問は、
止めどなく湧いてきます。

 端的いえば,国際世論を無視して,ウソまでついて開始したアメリカの「イラク戦
争」の尻ぬぐいをなんで日本がせねばならないのか。おまけに、その支援金の大半が、
飲料水,医療などの人道支援と言っても結局はアメリカの軍事占領の補強のために使
われるのが関の山ではないかと思われてなりません。

 小泉首相は24日のNHK番組で、自衛隊派遣について「状況が許せば、人道支援
を行いたい。早い方がいい。こだわっていないが、年内にできるなら年内がいい」と
述べ、年内の先遣隊派遣に強い意欲を示しましたね。貴方は,先に「自衛隊員が殺す
かもしれない。殺されかも知れない」云々の発言をされました。26日朝の新聞では,
自衛隊弔慰金を6千万円から9千万円に、3千万円引き上げることの決定など発表さ
れていましたが,それは、自衛隊員で死亡することすることも前提になっているよう
で不安です。

 貴方には,自衛隊員の死さえも深刻に考えていないようですから,おそらく、イラ
ク人,アラブ人の死亡などまるで念頭にないのではないかと思います。万一現地でイ
ラクの抵抗勢力と交戦になり,イラク人をたとえ一人(一人ですまないでしょう)で
も殺すような事態になったら,これは50億ドル(今回の会議での2007年までの
支援金の全額)といった金を積んでも,到底償ないきれないほど遠い将来にわたって
日本のイメージダウンになることを考えたことがありますか。そんな悲劇が起こった
後で,国会議員が弁解に行ったって,「もう顔など見たくない」という心境になって
も無理はないでしょう。商社マン,ボランティアの人々がどんなに惨めな思いをする
か,そのとき気付いても手後れです。 

 正直いって,イラクでは,アメリカの占領が続く限り,イラクの抵抗運動は日増し
に激化の様相を辿っています。

 イラク復興支援国会議が終了した24日にイラクでは,米兵が3名襲撃されて死亡
し,26日朝には、イラクを占領統治する連合国暫定当局(CPA)関係者が宿泊す
るバグダッド中心部のラシードホテルが、何者かによるロケット弾攻撃を受け、ホテ
ル滞在中のウォルフォウィッツ米国防副長官は難を逃れたと伝えられています。事件
後に記者会見した同副長官は。この攻撃で数人が負傷したほか、米兵1人が死亡しま
した。これを受けて,パウエル米国務長官は、米NBCテレビで「(占領に対する)
抵抗は我々が予想したより激しく長く続いている」と述べ、イラクの治安状況に懸念
示し、反米勢力の動向に詳しいイラク人警察や部隊の育成が急務との見方示しました。

 小泉首相に警告したいのは,イラクにしても他のアラブにしても現段階では,これ
までの向米一辺倒の日本に嫌気がさしたり,失望落胆させられてはいはいるものの、
まだ,日本人の優れた技術,経済力に一縷の希望を辛うじてつないでいるのと言うの
が偽わらざる心境でしょう。

 イラク人は今でも,武装した日本の兵隊がやってくるなど信じられないと言う心境
ですから,その進軍ラッパを吹いているのが,小泉首相などと思っていませんし,名
前も知らないのでしょう。

 しかし、いざ,派兵した暁には,また自衛隊とイラクの抵抗勢力間で戦闘でも起き
て,流血の惨事が起これば,貴方の名前は,イラクやアラブの歴史に永遠に残るでしょ
う。つまり、日本に寄せる歴史的なアラブの親日感情を一気に爆破して,アメリカ占
領軍の傭兵部隊を派遣した栄えある侵略的将軍として記録されることでしょう。

 最近発行された,イラク戦争反対の進言をしたばかりに不当に外務省を解雇された
天木直人氏の『さらば外務省』にも,湾岸戦争以来,日本の軍事大国化にさんざん利
用されてきた『ショウ・ザ・フラッグ』事件が興味深く書かれてありました。自衛艦
船をインド洋に派遣するという日本の安全保障政策の一大転換をもたらしたこの「歴
史的捏造語」は9・11事件直後にア-ミテ-ジ国務副長官と柳井俊二駐米大使の非
公式会談で発せられたものとされていたが,実際にはアメリカ側は「絶対使っていな
い。本件は日本の問題だ・・・」とのことでいた。柳井駐米大使も「自分は絶対に使っ
ていない」と明言しましたが、それはすでに、テロ対策特別措置法が成立,イージス
艦のインド洋派遣が決まってしまった後のことだそうです。

 川口外相は帰路,26日カイロでマーヘル外相やアラブ連盟のムーサ事務局長と会
談したが、マーヘル外相は、国連決議の下での自衛隊のイラク派遣を「前向きだ」と
評価しながらも、「占領当局はイラクの人々にできるだけ早く主権を移譲することが
重要だ」と指摘されたといいます。

 万一,アメリカの占領当局が国連決議に違反し,イラク国民の主権を抑圧し続けよ
うとする場合,自衛隊は,国連決議を守って,米軍の行動を押さえる側に立つほどの
覚悟があるでしょうか。この問題を明確にしない限り、「飛んで,火にいる夏の虫」、
自衛隊の派遣には危惧の念を表明せざるを得ません。

 今思い出すのは,確か,昨年の小泉首相の訪米に先立って,中曽根,宮沢氏ら元総
理たちから、アメリカには是々非々の立場でイラクとの戦争回避を計るために「友情
ある説得」をすべきという忠告を受けたことがあったことです。しかし,貴方は,結
局ブッシュ大統領の言いなりになり,むしろ,貴方の方から積極的に全面的協力を申
し入れてしまった。

 湾岸戦争の時も135億ドルの援助をして,日本はこの戦争の牽引力になった。今
回のイラク戦争でも、戦争反対の国際的潮流に逆らってまで、世界に先駆けてアメリ
カを支えてきました。

 言うまでもなく,外交と内政は車の両輪であり、日本はあくまで,憲法に基づき、
平和国家として「世界に役立つ外交」を模索しなければならないのです。それは、日
本のためにも,イラクのためにもそしてアメリカのためにも、そして貴方自身のため
にもなるのです。
 
 天野直人氏の解雇にも象徴されるように,小泉政権,外務省が対米従属の外交を続
ける以上,私たち国民も、21世紀を希望の世紀とするために,世界諸国民の平和,
福祉,教育,文化のための国民外交に真剣に取り組まねばならないと痛感しています。

 真の外交とは,また,国際社会における日本の役割とは何かを考える絶好の機会で
はないでしょうか。

 阿部拝

書簡16 「いち抜けた!」 終戦直前、帝国陸軍の崩壊する姿を目撃

拝啓 小泉首相殿16(11月6日) 「いち抜けた!」 終戦直前、帝国陸軍の崩壊する姿を目撃

 この11月2日、東大駒場講堂で開かれた日本外交と『反テロ」世界戦争というシ
ンポジウムは、極めて有意義な集会でした。

 とりわけ、前レバノン大使天木氏が、外務大臣および首相に,外交官としての使命
感に燃えて、「イラク戦争」に反対すべきだと言う直言を送られた勇気に、日本人の
“義”の精神を感じました。

 また、「自衛隊派遣は明白な憲法違反」であり「自衛隊員は誰一人イラクに行きた
がっていない」と説かれた新潟県の小池清彦加茂市長(元防衛庁教育訓練局長)の発
言に深い感銘を覚えました。

 こうした発言こそ、日本人の良心です。そして口にこそ出さないが多くの日本人
(サイレントマジョリティ)が心に抱いている不安であると思いました。

 戦中派のしんがりとして15、16、17才を学徒動員の中で、太平洋戦争の悲惨
さをなめつくした小生(75才)には、また日本人の同胞、若い自衛隊員をを海の彼
方まで送って「かたみに人の血を流し、獣(けもの)の道に死ぬ」ことを「人の誉れ
とする」(与謝野晶子の詩「君死にたもうことなかれ」)の絶望的な時代に突入して
しまうかという暗胆たる現状を憂い、このような現状を多くの人々が連携して力では
ねとばさればならないと痛感しました。

 東大駒場といえば思い出すのは、この2月この講堂で行われたアメリカのイラク大
量破壊兵器査察官のスコット・リッター氏の講演です。

 これは東大の山脇教授からも披露されたが、それは、リッター氏の「アメリカが酔っ
払い運転していたら諌めるのが真の友人ではないか」という言葉でしたが、いまブッ
シュ大統領にヨイショされて天にも登るほど舞い上がるほど酔っぱらっているのは、
どう見ても、小泉さん、貴方自身です。

 外交官の真の使命を遂行しようとした天木前大使の進言こそ立派な外交努力であり、
言うだけ野暮かも知れないが、本来、こうした真の外交官を表彰してこそ、小泉さん
はまともな日本の首相といえるのであり、「立派な改革」の担い手の筈と思うのです。

 小池清彦加茂市長の講演の「自衛隊のイラク派遣がいかに憲法違反で、自衛隊隊員
にとっても、その家族にとっても悪法極まる、無謀なものであるか」を諄々と説かれ
た話も深く胸に沁みました。これも、正常な政治家なら、(三木首相、大平首相、後
藤田官房長官、木村俊夫外相、伊東正義外相らの見識をも持つ真の政治家なら)
「よくぞ言ってくれた」と感謝されたに違いない内容だったと思う。

 小池市長が小泉首相、福田官房長官、石破防衛庁長官、川口外相に当てた『自衛隊
のイラク派遣を行わないことを求める要望書」の中の文言を以下に列挙します。

「泥沼化したイラクのゲリラ戦の中で被害が出る可能性は明らか」

「兵は憲法の下で自衛隊法第52条には自衛隊は我が国の平和と独立を守ることが明
記され、」

「自衛隊員は日本国憲法を遵守することを宣誓しているので、海外派兵に賛成しては
ならない」

「自衛隊員の命を危険にさらし、命を犠牲にすることをしいるのは憲法違反の行為」

「日本政府は、15億ドルを差し出しだすだけでアメリカは満足しているはず。一方
人を出すことは我が国の存亡と国民の幸福に対して、極めて重大な結果を生む。外交、
軍事上の大失態となるでしょう」

「平和憲法のもとで、イラク派兵が強行されるならば、もはや憲法の歯止めがなくな
り、自衛隊は世界の殆どの戦場に派兵される。徴兵制がしかれ、海外の戦場で命を落
とし,先の大戦で散華された英霊が最も望まなかった事態になるでしょう。現在の自
衛隊における明るく民主的な気風もやがて荒れ荒んだものにかわっていくことを危惧
します」

「憲法9条ゆえに、日本は多くの戦争の惨禍から免れることが出来た。『剣は磨くべ
し、されど用いるべからず』と言う古今の兵法の鉄則、日本武士道の本義にも合致す
る。みだりに兵を動かさず、自衛隊員の命を大切にして、24万の自衛隊員とその家
族(100万人)をいつくしみ,渾身の勇をふるってアメリカの圧力から自衛隊員と
その家族を守ってこそ真の為政者であり,大和もののふであると確信いたします。冷
酷なる為政者として日本の歴史に名をとどめるようなことは,決してなさらぬよう心
からお願いするものであります。」


 これらは一つ一つ、花も実もあるお言葉で,自衛隊員の命を案じ、国の前途を憂う
る心情のほとばしりです。

 それに貴方も御存じのように、イラクでは抵抗勢力のミサイルによって米軍のヘリ
コプターが撃墜され15名も死亡、さらに、ここ2日間に、占領当局の本部のある旧
宮殿の建物がロケット攻撃させたと聞きました。ブルマー司令官の所在もはっきりし
ていないと言う有り様です。そしてアメリカは来年には大幅な軍隊の引き上げを目論
でいると言われています。すでにタイの軍隊ばかりでなくスペインの軍隊や外交官ま
でに逃げ出している始末です。

 だからこそ、アメリカは貴方をおだてたり、おどしたりして、(もっとも、「ブッ
シュ-命」の小泉さんにはそんな手間は必要なのでしょうが)イラク占領の後釜に、
一日早く日本の自衛隊を駐屯させ、アメリカの利権は握り続けたいのです。そこで、
なんとか日本人の手でイラク人を殺させたり、貴方には、自衛隊員の戦死者を出させ
て、「英霊」として靖国神社に祭り上げさせたいというのでしょうが、これに乗った
らもう、貴方自身がイラク、アラブ人や日本人の血を流させることなど屁とも思わぬ
確信犯的な戦争犯罪人になっているのですよ。

 今、イラクには、ヨーロッパと中東で、オサマ・ビン・ラディンその他のイスラム
過激組織による聖戦の呼びかけに応え、アメリカ主導の占領軍と戦おうと若者たちが
続々とイラクへ向かっていると言われています。そんな中になぜ、日本の自衛隊がイ
ラクのパレスチナ化の非道な役割を、金と命まで提供させられる必要があるのですか。
いよいよ、選挙あと3日、国民に納得のいくように説明して欲しい。

 察するに、小泉首相は、「改革宰相」の仮面をかぶった時代錯誤の偽の政治家で、
本当は日本の政治や経済問題を真剣に取り組むより、ブッシュ大明神にすがって首相
の座に長く留まり、戦時中に似てきたマスコミの堤灯記事のおかげで、オペラ三昧に
ふけっていようという極楽トンボではないですか。

 どうか、いかに貴方が“匹夫の勇”にはやるとは言え,日本の歴史、日本人の名誉、
国益(正しくは国民の益)、命、税金、国民の未来など丸で無頓着に、日本を戦争の
火中に丸投げするのはおやめください。自衛隊員を大義なき戦争で,不名誉な死に方
をさせないで下さい。

 小池市長の「自衛隊法第52条は自衛隊は「我が国の平和と独立を守る」が明記さ
れている。自衛隊員は「日本国憲法を遵守」することを宣誓しているので海外派兵に
賛成してはならない」と言う話を聞いて思い出すのは、マハトマ・ガンジーの唱えた
不服従運動です。

 ガンジーの場合は、植民地国家イギリスの不当な命令には、不服従運動を貫くべし
との教えであったが、自衛隊員の場合は、「我が国の平和と独立を守る」ために入隊
した自衛隊員は自衛隊法からいっても、「こんな自衛隊でなく”多衛隊”としてイラ
クに行くなんて嫌だ。”いち抜けた!”」と言えないもだろうか。

 とにかく、大義ない戦争に狩りたてられた自衛隊員はイラク、アラブの人を殺して
しまったとき、小泉首相は戦犯第1号の栄誉を担う覚悟はあるのだろうか。また世界
の良識に逆らってこんな悲劇をひきおすことになりかねない自衛隊派遣に血眼になっ
ている小泉首相と石破防衛庁長官を憲法違反と殺人教唆罪で告訴できないものだろう
かと思ってます。

 とにかく、人道にもとる無謀な戦争を引き起こす結果がどんなことになるか、私自
身の体験を報告してこの手紙を終えます。

 あれは終戦の2、3日前、1945年8月12、3日のことでした。すでに沖縄はアメ
リカ軍の手に落ち、広島では「新型爆弾(原爆)が落とされ」との声が聞こえ、アメ
リカの上陸軍との本土決戦が間近かに迫ったと噂されはじめていました。

 その日の午後,飛行機の部品をつくっていた学徒動員の鋳物工場の片隅で,30才
も半ば越えた新兵が突如,古参で横柄だった27才ぐらいの伍長と言いあいになった
とおもったら、いきなりポカポカと殴り合いとなり,この新兵は伍長を組みふせ,
「この野郎!いつも新兵だ、新兵だと馬鹿にしやがって!」と殴り続けました。
取り巻いた4、5人の兵隊は,呆気にとられてみているばかりでした。
「上官の命令は朕(ちん,天皇陛下のこと)の命令」と言われた日本の軍隊の瓦解を
示す出来事でした。

 われわれと一緒に鋳物をつくっていた秋田鉱専のお兄さんが「おら,いち抜けた!」
と鋳物の砂をつく金てこの棒をほうり出して,地面に座り込んでしまいました。みん
な日本が崩壊していくという絶望的な気持に追い詰められているようでした。

 それは,今の日本の行き着く先を象徴しているかのような事件だったと思っていま
す。小泉首相,貴方の思慮分別のないブッシュへの忠誠心が,こんなふうに日本を崩
壊させてしまうのです。このまま行ったら,事態はますます悪化していくでしょう。
『三文オペラ』としてこの結末を見ている限り面白いけれど,罪のないイラク人,ア
ラブ人,そして日本人がこれからどれだけ苦しみ,犠牲になるかと思うとこんな非情
な芝居は一日も早く幕引きにしたいものです。そうは思いませんか。選挙に辛勝した
ところで,貴方の罪は消せませんよ。貴方は,イラク派兵と言う針の山を登っていく
のです。いい加減に目を覚まして下さい。

阿部拝

書簡17 拝啓 小泉首相殿17(11月9日 投票の日) 「真実こそ最後の勝利者」ーー戦中派の信念

拝啓 小泉首相殿 17 (11月9日投票の日) 「真実こそ最後の勝利者」ーー戦中派の信念

 11.2の東大駒場でのシンポジウ-ムで久しぶりであった三鷹の友人から,昨日
の朝,教育現場の荒廃,マスコミの堕落,政府の対米従属化を憤るメールを貰いまし
た。

 中学校の竣工式で「教育勅語」をそらんじて説教をした大阪市議、都立高校の周年
式の準備に東京都教育委員会の監視、統制指導などと信じがたい事件が引き起こされ、
教育現場が「第三の軍部」化はもうそんなとこまで来たか唖然とされる内容でした。

 同氏はさらに「派遣自衛隊員 イラク支援殉職に1億円 政府弔慰金引き上げへ」
といったTV報道の無責任な報道ぶりを批判し、この先に「靖国法案」が見えてくると
歎き,イラク訪問中の岡本行夫首相補佐官がバグダット市内で記者会見で、スペイン
のイラク外交団の引き上げに関して、「日本がイラクから総撤退しない限り、国際コ
ミュニティーの一員として攻撃対象となることは論理的に免れない。他の国と同様に
狙われる可能性が常にある」と強調したようだ。しかし、日本が狙われるのは、ブッ
シュ・アメリカのイラクへの先制攻撃をいち早く支持した時からである。忘れるな純
一郎、順子よ。」と結んであった。

 DMできたこのメールには,DMで答えるべきですが,友人はとくに戦中派として
の小生の意見を求めていたので,進んでいる中で,この内容は多くの人に伝えたい,
とりわけ小泉首相を始め,「戦争を知らない」国会議員の先生にも読んで頂こうと言
う気持になりました。16,7才の戦時中から現在まで,思い続けてきた意見なので
何かお役に立てばと言う思い込めて書き上げました。

 重労働しながら、昼食は満州大豆が約135粒と言うひもじさ,三八銃を担ぎ,繊
維の靴を履いての雪中の軍事教練,戦塲に行く親しかった級友や上級生を戦闘棒を打
ちふり,知っている軍歌を全部歌って名残を惜しんだ壮行会,山の中に疎開した軍需
工場まで攻撃してくる艦載機の機銃照射の脅怖,今、様々な思い出が走馬灯のように
蘇ってきますが、あの戦争から学んだ教えは次の3つです。

1)自分の未来を他の権力によって勝手にねじ曲げられてしまう不条理

 中学一年の年の12月8日がアメリカとの開戦の日でした。あの頃は,『蛍雪時代』
と言う雑誌があったよう荷,苦学してでも大学に入り,将来は,社会で活躍できるひ
とかどの人物になりたいと思っていました。そして苦労掛けた両親(時に優しかった
母親)に報いたいと考えていました。それが中学4年生となったとき,学校教育は全
て閉鎖,昼なお暗い土煙の立つ鋳物工場に動員された時,ああ、もうこれで全ての青
年らしい夢は木っ端みじんにされてしまったという悲し身が胸を噛みました。

 そして,時々工場を廻ってくる校長や教頭から,「県庁からうちの中学校にも志願
兵を募って欲しいと要望がきている。君たちも軍隊に志願してくれ」,つまり「桜の
花のように潔く国に殉じてくれ」と言う催促を受けたものでした。われわれに告げて
廻る校長達も苦しそうだったが,いま75才になっても一日でも平和運動を続けねば
と言う思いもが強いのも「潔く散れ,散れ」と唱導されたあの時の悔しさをバネにで
きるだけ長く生きて反抜いて、軍国主義者達への面当をしたいと思うです。

2)全然罪ない者同士が殺しあわされる脅怖

 以前述べたことがありますが,戦時中上級生から,無理やりに日本の兵隊が大陸に
渡り、中国の民衆を銃殺し、女性を木に縛り付けて輪姦し、はては銃剣でつき殺すと
う残虐行為(正直いって,当時強姦と言われてもまだ中学生の小生には良く分からな
かったが),平和で暮している中国人に何故そんな残虐な行為をするのかと,この話
を聞いたときの衝撃は、青空だった空が真っ黒な雲に覆われ,奈落の底にまっ逆さま
に落とされたような心境でした。

 きっと、年老いた両親や新婚の妻を残して戦塲に狩り出された若い兵隊たちは、ま
ともな精神状態ではなくなり,自暴自棄になっていたの荷違いありません。山の中に
疎開していた軍中工場を襲撃し,小生たちを森の仲まで追ってきて機銃掃射をしたア
メリカ軍のパイロットも,おもしろがってうさぎでも殺すような気分でわれわれを追っ
かけまわしたのでしょうが,彼等も戦争に狩り出された組だったのです。

 戦争は兵隊を狂気にしてしまう以上,自衛隊は絶対にイラクへ派兵させてはならな
りません。日本の自衛隊であって”他衛隊”でなのだから,自衛隊員は専守防衛に徹
するべきです。ましてネオコンの利益のためになぞ、一人の自衛官も死んで欲しくな
いのです。

 奇怪千万なのは,小泉,石破,川口順子と言って面々は,自衛隊員の弔慰金を1億
円にすると有り難そうに言っているが,一人一人の隊員の命の尊さ,残された家族の
苦しみを考えれば、金ですまそうという根性が情けない。

 それにもまして,イラクで抵抗勢力と交戦になったとき,イラク人を誤って殺した
時にどれだけ,弔慰金が出せると言うのか。おそらく,ブッシュ拝跪主義の小泉氏は
そんなことなぞ少しも考えてないでしょうが,アメリカの占領政策を支えるためにイ
ラク人を殺したとなればその被害は,日本の中東アラブ諸国から閉め出されるばりで
なくアメリカの傭兵になりさがった国際的な日本への軽蔑でしょう。長い間アラブ諸
国で享受している親日感情は蜃気楼のように消え,日本人は孫子の代まで”東洋鬼
(トンヤンキ)”として中東の教科書に記録されるであろう。ネオコンとシオニズム
がいやがる馬の手綱を強引に日っぱて,猛毒の川の水を飲まそうとしてるのです。

 それに自衛官が戦犯として処刑されたら,貴方は身代わりに立つ気持が少しでもあ
りますか。今,思い出すのは、フランキー堺主演の昭和30年代を代表する名作テレ
ビドラマ『私は貝になりたい』とか小林正樹監督の『壁厚き部屋』( 44年撮影、公
開は46年)と言ったBC級戦犯の悲劇です。ア-ミステージ国務副長官の言葉のように,
茶会に行くのではなく,アメリカ軍の占領を助けるため,殺人も辞さないという修羅
場に送り込むことになるのです

 また、著名な作家池澤夏樹氏の [メルマガ]池澤夏樹「パンドラの時代02」に次の
ような文章がありました。

______

 イラクではアメリカ兵に対する抑えようのない怒りをみなが共有
しています。前線は溶解し、アメリカ兵を包む空気そのものが敵意
に満ちている。ベトナムに似ているとすれば、敗戦直前のベトナム
でしょう。

 自衛隊はそこへ、アメリカ兵の仲間として、行くことになります。

 十数万のアメリカ軍を送り込んでもどうにもならない現状に対し
て、日本の自衛隊の600人が何をできるわけでもない。つまり、
この派遣は実際的な成果ではなく、象徴的な効果を求めるものでし
かない。

 しかもそれは対アメリカ政府の効果であって、イラクをはじめと
するイスラム諸国に対してはそのまま逆効果となります。

_____

 この池澤さんの「十数万のアメリカ軍を送り込んでもどうにもならない現状に対し
て、日本の自衛隊の600人が何をできるわけでもない」と言うこの600人と言う
数字の影に何が仕組まれているのか,無気味です。

 この600人の自衛隊は確実に抵抗勢力の標的にされます。いや,抵抗勢力以外か
もしれません。イラク人と自衛隊員に犠牲者が出る可能性は限りなく高いのです。中
東を支配するために,三千年前の神話に等しい物語を根拠にイスラエルと言う国家を
人工的に造成し、アメリカに歯向かうイラク国民は,凶悪な劣化ウランを振りまいて
も,ジェノサイドしてしまおうというネオコンのことなので,この600人の中から
犠牲者を出すことを計算に入れられているのではないかと思っています。「知らぬは
小泉さんばかり」と言いたいところですが,靖国神社にいそいそ参拝に出かける貴方
は,自衛隊員が犠牲になるのは織込済になっているようですから,結局「知らされな
いのは,日本国民ばかりなり」と言うことでしょうか。

 自衛隊の皆さん,絶対にイラクに行かないで下さい。小泉の私利私欲のために死ぬ
なんて言語道断です。日本は自衛隊さえ送らねば、親日感情は続いていくでしょう。
裁判で争っても行かないで下さい。石破防衛庁長官も隊員の命を守ることが第一の任
務でショウガ。戦争ごっこと違いますよ。

 小池加茂市長の話のように,日本を守るために自衛隊に入ったのだから,海外へ無
理やり派兵させるのは,契約違反で詐欺行為のようなものです。これこそ裁判所で争
う重大問題で、マハトマ・ガンジーの不服従運動で拒否してもいいケースではないか。

 不服従運動と言えば,小泉首相を先頭とする戦前回帰の時代錯誤の和製ネオコンの
人々こそ,あれだけ大きな犠牲のもとに獲得したわが国の最高法規、平和憲法に対し
て不服従運動を続けてきた凶悪犯ではないかと思う。あまりでっかい顔をするなと言
いたくなります。出るところに出て,つまり裁判所で国民の主張が正しいか,私欲に
かられて日本人とその血税を一国主義の大統領に貢いでいるのがまともなのか黒白を
つけようではないですか。派兵はその裁判が終わるまで,仮処分で停止にしてもらい
たいのです。

3)最後に勝利するのは真実

 しかし、あの戦争によって学んだ最大の教えは,一番強いのは,真実であると言う
ことでした。

 日本帝国主義は,中国大陸を制覇しようとしたのですが,何しろ広大な領土です。
結局,点と線しか支配できず,まして,日本は侵略軍であったので、毛沢東の共産党
率いる中国民衆の頑強な抵抗にあい,また,絶対的な物量を誇るアメリカ軍に対して
も竹槍的な精神力だけでは到底相手になりませんでした。神州不滅を呼号した日本帝
国も,祖国防衛と言う中国,アジアの民衆の力に敗北してしまったのです。この姿は
イラクを軍事占領し、その資源を独占しようとするブッシュ政権の狼狽ぶりに良く似
ています。

 米英と日独伊と言う帝国主義が我が物顔でのし歩いていた第2次大戦時代と違って,
第2次大戦後の世界は,とにかくアジアアフリカ諸国が独立を達成し、大国の意のま
まに兵を差し出すような国はそんじょ、そこらに見当たりません。人も金もホイホイ
差し出して「俺は世界で一番、ブッシュに可愛がられている男、自惚れのぼせて得意
顔,自衛隊の派兵まで誓った♪」と威張っているような珍奇な首相は小泉純一郎氏、
貴方ぐらいです。世界のどの国が貴方ほど喜び勇んで兵隊を出す国がありますか。い
づれ、大量破壊兵器の査察官だったスコットリッター氏が言ったように、民族自決権
を求めるイラク人民の抵抗の前に占領軍は敗退していく日はそんなに遠い話ではなく
なるでしょう。

 では,小泉氏が何故国民的人気が高いのかと首をひねる方が多いと思いますが,そ
れは,一つには,タマちゃんの出没を大事件のように大きな紙面を割きながら,日本
の命運を占うような大事な問題については政府の堤灯持ち記事しか報道しなくなった
マスコミの力と、そうした真実の報道をカモフラージュしているマスコミに知らず知
らずに洗脳されている。人のいい従順な日本人つけもまれているためと言えましょう。

 多くの日本人は「強きにへつらい,弱きをくじく改革の猛者(もさ)」小泉首相の
正体を知るのは,つまり真実を知るのは,余り先のことではないでしょう。貴方の戦
略は、2枚目の看板娘ならぬ若手ワンパターン幹事長を「人寄せパンダ」として票集
めに役立たせようと言う手口にもあらわれているような,セコイと言おうか,哀れと
言おうか,日本国民をなめるのもいいかげんして欲しいとつくづく思います。

 今日の選挙の結果どうなるかは,神ならぬ身の予言することはできませんが,どち
らにせよ,小泉首相がいかに日本人の命や血税よりも、今や落ち目の三度笠のブッシュ
大統領の顔色を気にしてきたかが段々はっきりしてくるでしょう。

 日本の自衛隊員の皆様,何も無理をしてイラクに行って、ゴッドファーザーの指図
のままに命のやり取りをする必要はありません。小泉首相自身が最高法規の憲法を無
視して、私的にブッシュ大統領と約束してきたことにすぎないのです。こんな約束を
しないようにと訪米に直前に,中曽根,宮沢氏らの首相経験者や岡本行夫補佐官から,
アメリカに戦争を始めないよう「友情ある説得」をするよう要請されていた筈です。
それを無視して総理の座にしがみつくために,党利党略ならぬ個利個略のために,自
衛隊を派遣すると約束してしまった。いわば国会や国民の意見も聞かなかった個人の
談合に過ぎないのではないですか。

 自衛隊派遣は、小池加茂市長がおっしゃったように「自衛隊員は「日本国憲法を遵
守」することを宣誓しているので、海外派兵に賛成してはならない」のです。さきほ
ど読んだメールには,

ーーーーーーーーーー

 主人が自衛隊に勤めています。同僚のイラク派遣が決まりました。来年4月
 には主人も派遣の声があり、毎晩不安で、私はねむれない日が続いています。
 本当に自分の無力さを感じます。小泉の米国追従を絶対に許しません。皆様
 の力で派遣がなくなるようにお願い致します。
                        匿名(北海道○○市)

---------------------

 これは偽らざる自衛隊員の家族の真実の声です。貴方は,いい加減にパーフォマン
スばかりしている場合ではないのです。日本の首相として、人の苦しみ,哀しみ,喜
びが分かるまともな人間に返って下さい。多くの貴い命が貴方にかかっているのです。
変人よ,堅気の人間に戻れと訴えたいのです。


阿部拝

書簡18 拝啓 小泉首相殿18(11月9日 投票の日)今どき 与話情浮名横櫛 源氏店

拝啓 小泉首相殿 18(11月9日 投票の日)今どき 与話情浮名横櫛 源氏店

 ー やいポチ公、戦争ごっこをもう止めろ ー      

今日は,意義ある総選挙の投票日、ご祝儀代わりに,歌舞伎の名場面をパロディー化
してみました。オペラの好きな小泉さんですが,たまには歌舞伎も見て下さいよ。

これも戦中派の心意気と、よしなにご賢察下さい。少々耳障りが悪いかもしれません
が,なにとぞ、貴方への「愛の鞭」とご寛容のほどまずは願っておきます。

_________________________

今どき 与話情浮名横櫛 源氏店

 ー やいポチ公、戦争ごっこをもう止めろ ー      

(手ぬぐいで頬冠りした第2次大戦以前の戦没者)

総理大臣さんえ

小泉さんえ

ペットさんえ

いやさ、ポチ公 ひさしぶりだったなあ

(ポチ公)-驚いてー

そういうお前は!

(戦没者)

戦没者の亡霊だ! おぬしは、俺を見忘れたか。

しがねえ戦争に狩り出され、命の綱もぷっつり断たれ、娑婆からそのままあの世行き、
もうこの世には二度と帰って来れないと諦めていたその矢先、

おめえがちょくちょく靖国神社にやってくるようになったので、それでは、日本の首
相は一体今どき、何やっているのかとの気にかかり、

日本の娑婆にもどってみたら、この始末。

聞けば、てめえはブッシュの囲い者となり、旦那の御機嫌とるために、自衛隊まで送
るというじゃねえか。身の程知らぬ大たわけ、おめえはそれでも、本当に日本の首相
のままなのけえ?

 いいや、そればかりじゃねえ、300万人のおれたち日本人の犠牲者と、2000
万こす中国人、東南アジアの人々を戦火の中で殺戮させておきながら、ブッシュのた
めの義理立てと、総理のイスにしがみつくため、日本をアメリカに売ろうなど、聞く
もおぞまし下司根性、おまけに、世界に誇る素晴らしい平和憲法、とりわけ珠玉の9
条まで、一寸試し、五分刻みと痛み付け、殺そうとしているのが、日本の首相の正体
とは、お釈迦様でも気が付くめい。よくまあ、お主は首相でいられるなあ。

 おう蝙蝠安、これじゃこのまま帰られねえ

   (蝙蝠安)

 なるほど! こいつァこのまま帰(けえ)られねえ。

  (戦没者)

 あの大戦のその頃は、加害者として中国や、東南アジアで土地とちの人を殺める罪
を重ね、末は国際法廷で裁かれて、戦犯として死刑囚まで出したのに、今度は日本に
親切なイラクの人々に銃を向け、身を守るため、打ち殺してもいいというのかい。

 しかしたった一度でも、自衛隊員の手をイラク人の血でて汚してしまいさえすれば、
それで日本もおしめいよ。血で染み付いてその手の汚れは金輪際、きれいな手には戻
りっこないよ。おめえはそれでも胸が痛まねいのかい。

 それに、亡くなったイラク人の仇だ、日本占領軍くたばれとイラクの民衆に取り囲
まれ、日本の自衛隊員が殺されてしまう事態が発生したら、さあていへんだ。てめえ、
その責任をどう取るつもりだ。自衛隊員やその家族にどう謝るんでえ。

 それに日本の尊い資産とも言うべきイラクとアラブの親日感情が砂漠の蜃気楼のよ
うに消えてしまい、日本を憎み蔑む反日感情が蔓延したらどうしてくれるんでえ。

 日本とイラク、日本とアラブ人とが永遠に憎しみあう間柄となってしまうんだぞ。
てめいの名前は,中東アラブ地域を支配しようというアメリカの傭兵部隊の総司令官
としての悪名を孫子の代まで記録されるのだぞ。

 「そんなこと、なりゆき次第でケセラセラ、おれの信念は何ごともなりゆきまかせ
だ、おれ知らぬ」とでも、てめえはきっとうそぶくだろうが、べらぼうめ! 死んだ
イラク人や日本人に対する犯罪は、死ぬまでついてまわるんだぜ。俺の記憶違いでな
けりゃ、てめいが65才を国会議員の定年にするとか言ったのも,あと3年総理の椅
子に座ったあとは,日本のことはケセラセラと言う無責任根性の現れのような気がし
てならねえ。

 いわずと知れたおめえの戦争犯罪のことだってあとを引く。てめえの首でも洗って
おけ。

 それに、世界のどの国もイラクへの派兵は断っているというのに,自衛隊の派遣ば
かりか,国民の血税を気前良くアメリカ以外で最大の拠出金まで提供して日米同盟の
強化の証しなどと威張っているなんて。てめいもよくやってくれるじゃないか。いっ
ていこりゃあなんだ。日本の命運をこんなにはっきりと分けてしまう大切なこの問題
を国民的な討議に掛けもしないで,こそこそ準備するなんぞ、てめいはずかしくなの
かえ。

 おお、おめばかりでなく、こんなでたらめな、犬も食わねえ法案通過に手をかした
国会議員のぼけ茄野郎ども、孫子の代までの日本人の面汚したんだと今から覚悟をき
めておけ。


 小泉、おめえが靖国神社にちょくちょくくるのも、結局のところ,イラクで死ぬ自
衛隊員を沢山祀ってやるから、仲間がふえて満足だろうと! べらぼうめ、ふざける
な! 

 もしそんなに自衛隊の方々の命をアメリカのために捧げたいいのなら、おめいの倅
の孝太郎を(走れ、走れ、コータローと)一番先に送ったらどうなんだ。男一匹小泉
ポチ公の名が上がるぞ。それに小泉内閣の閣僚全部の息子たちだった勇躍して参加し
てもらったらどうなんだ。

 もういい加減、日本人の血税使って、戦争ごっこはすぐ止めてくれ。福祉や教育の
予算を削る、アメリカ流の政治はお払い箱にしておくれ!

おめえたち、よくまあおれたち先祖の顔に泥を塗ってくれたなあ!

このままじゃ、あの世で安らかに眠っていることなぞ、できゃしないんだぞ!

  (成駒屋!の声がかかる)

_________

久しぶりに耳にした江戸っ子の啖呵を聞いていて、晴れやかな気分になったと思った
ら、夢からさめてしまった。

とても夢とは思われない迫真的な永田町劇だったが、自衛隊イラク派兵反対の日本人
が6割から8割いる現実を考えれば、このくらいの変化がおこっても、罰(ばち)が
当たらないような気がしてきた。

また、こんな、権力に屈しない江戸の反骨精神こそ、よき伝統として受け継がねばば
とつくぐづく思った。、

阿部拝

書簡19 テロ超大国に屈しないで欲しい

イラクでは遂に恐れていたものが起きてしまいました。

 奥参事官や井上3等書記官のような,日本の将来にとっても大切な人材を失った今,
貴方は壊れた蓄音機のように「テロに屈しない」とか「痛恨の極み」とか「〇〇の一
つ覚え]式の非情な紋切り口上で,責任を回避しようとしていますが,これは全く卑
怯です。

 新聞報道によれば,お二人とも,快活で責任感のある外交官だったことが伝わって
きますし,「バイタリティーあふれる外交官」奥参事官は、高校生を頭に3人の子供
と妻恵美子さんの5人家族。井ノ上書記官の妻幸乃さん(30)は12月末に2人目
の子供を出産予定で、30日は北九州市の実家に滞在中という。

 残された遺族の悲しみがどんな深刻なものか,第二次大戦中に級友をB29の空爆
で失ったり,陽気なもう一人の親友が少年航空兵に志願して南海の果てに散った思い
出を持つ小生には、痛いように判ります。

 それに,貴方は「イラクの復興」のためとおっしゃいますが,これも白々しい限り
です。仏独ロ中国などの大国は一兵たりとも派兵していませんし,インド首相も派兵
しなくて良かったと言明しています。自衛隊派遣はイラクの復興ではなく,[アメリ
カの占領を助ける破壊活動」とイラク人の目に映るのでしょう。

 今,ブッシュ大統領の命令なら,「たとえ火の中,水の中」まで進んで自衛隊を送
りだそうなどと言う国家元首は世界広しと言えど、大国としては恐らく小泉首相だけ
ではないでしょうか。

 今回の悲劇的事件にたいし,野党は皆責任を追求しようとしていますが,こんな悲
劇を2度と生まないためにも,先の選挙戦で貴方は堂々と所信を述べるべきであった
し,臨時国会でも衆参両議院でたった2日と言う短い日程でなく,もっと丁寧に審議
すべきでした

 言ってみれば二人の外交官の死については貴方は十分責任を負っているのです。

 それに、そもそも,「テロに屈しない」と言う貴方の言葉は無性に腹が立ちます。
イラク人はテロがしたくてテロをしているのではないのです。ゲリラ戦に訴えても外
国の支配から逃れようと言うレジスタンスなのです。

 もう一か月前だったか,イタリアでのイラク占領反対のデモ行進の横断幕に「世界
一のテロリスト,ブッシュ」と書かれていたのを記憶しています。ロンドン市長も
「ブッシュは世界一危険な男」と言明したという。これが,世界の多くの人々が心の
奥に抱いている実感なのです。

 小泉首相が,本当に「テロに屈しない」と言う高邁な精神の持ち主なら,劣化ウラ
ン弾を始め,公然とハイテクの大量破壊兵器を所持し,かつ惜しみなく使っているブッ
シュ大統領にこそ抗議すべきです。

 そうしたことには,目をつぶり,大悪党の後ろにへっぴり腰で,御用堤灯と十手を
ふりかざし、「御用だ。御用だ」と叫んでいるのが貴方の姿です。

 二人の外交官の死は,貴方がブッシュ大統領の別荘に招待され,「アメリカに全面
的に協力します」と誓約したときから運命付けられたと言ってもいいのです。

 この貴い犠牲を教訓として、自衛隊の派遣を思いとどまり,また同時にアメリカの
ためにも不当な占領を一日も早く終結させ,イラクの政治をイラク人の手に返すのが
お二人の霊に報いる政治家としての責任です。本来,国際政治の上でも,日本が果し
うる役割はもっともっとあるはずです。

 それを今でも,「基本姿勢変わらず」とうそぶき、「今までもイラクの復興支援、
人道支援に対して自衛隊であれ、文民であれ政府職員であれ、やるべきことをしっか
りやると表明してきている。この基本姿勢に変わりはない」との考えを強調していま
すね。

 小生は過去18回の貴方へのメールの中で,[大義なきアメリカによるイラクの占
領」を支援し続けることで貴方はますます苦しい立場に追い込まれますよ、と忠告し
て参りました。

 [大義なき戦争」と言えば,自民党の加藤紘一元幹事長は30日、テレビ朝日の番
組で、イラクでの日本人外交官殺害事件に関連し、同国に自衛隊を派遣すべきでない
との考えを改めて強調し、派遣反対の理由として「戦争の大義がなくなった。大量破
壊兵器が(イラクに)なかったとなれば間違いの戦争だ」と指摘しました。

 小泉首相の[大義」とは一体何でしょうか。一度ゆっくり国民が合点するくらい親
切に説明して下さいませんか。それが首相の義務ではないですか。外交官殺害と言う
悲劇を繰り返さないためにも,またそれ以上の惨劇を現出しないためにも,自衛隊の
イラク派遣は即時中止と決定して頂きたいのです。

 優れた海外の報道を迅速に翻訳しているTUPメンバーの星川淳氏の訳になる「
侵略の動」(マイケル・ドライナー)は、マキャべリの『君主論』の引用から説き起
こし,「結局アメリカがイラクにとどまり続けて遂げられるのは、完全破壊という目
的だけだろう。イラクはアメリカのもとでは立ち直れない。マキャベリの慧眼。」と
結んだ優れた論考です。
http://innernetsource.hp.infoseek.co.jp/

 たまには、閣議でこういう論文も回覧して欲しいところですが,それも無理なら,
小泉首相の秘書官辺りにそのレジメだけでも報告させたらいかがですか。きっと[目
からウロコが落ちる」ような思いをされると思います。

 [超大国のテロにも毅然と戦う勇気を持つためにも」安倍幹事長、福田官房長官,
石破防衛庁長官,川口外相らにも必読の文章と思います。

 もちろん,他の閣僚,公明党はもちろん,野党の先生方に心からお勧めしたいと思
います。

 そして,自衛隊隊員やその家族の方も是非読んで頂きたい。いや,これは日本国民
全部が自らの幸福を守るためにも読むべき文章と思います。

 最後に一言,小泉首相が[アメリカとならどこまでも」と公言すればするほど,日
本人がアラブ、中東、イスラム諸国で働く場所,機会が段々なくなることも自覚して
発言して下さいね。

                                阿部政雄
                   [日本アラブ通信」編集長
                    日本ペンクラブ国際委員

書簡20 62年目の日本の参戦

拝啓 小泉首相殿(20) 62年目の日本の参戦

昨日(12月9日)午後、自衛隊イラク派遣基本計画がとうとう閣議決定されましたね。

 丁度昨日が、62年前の太平洋戦争の開戦の日。旧制中学一年生だった小生は、そ
の朝のラジオで、勇ましい軍艦マーチのあと「大本営発表。大本営発表。臨時ニュー
スを申し上げます。帝国陸海軍は本8日未明、西太平洋において米英海軍と戦闘状態
に入れり」というニュースを聞いて、あの大国アメリカといよいよ戦争か、来るべき
ものが遂に来たと言う緊張感に包まれましたのです。

 小泉首相の自衛隊派遣の発表を聞いた時、日本はアメリカのイラク占領を助けるた
めに参戦、何と言う愚かなことをするのだろうと言う驚き、失望、そして貴方の思慮
のなさに呆れ果てました。

 貴方は[テロに屈せず」[日本も米国にとって信頼にたる同盟国でなければならな
い」と強調するけれど、真の同盟国なら、アメリカにイラク戦争についての大義につ
いて、もっと真剣に問いつめるべきでした。国際政治も、いや日本の政治すら、口先
だけのパーフォマンスで切り抜けてきた貴方は、自己保身以外の何の定見もなく安易
にアメリカに[全面協力」を誓ってしまった。

 いよいよ、日本は、平和国家の国是を投げうち、[日米運命共同体」として、奈落
の道をまっしぐらに進もうとしています。

 先月末の2人の日本人外交官の貴重な犠牲も言ってみれば、貴方のこうした安易な
[丸投げ政治と外交」がもたらしたものだと憤りを覚えます。

 二人の葬儀が外務省主催で青山斎場で挙行されると知ったとき、小生の脳裏に浮か
んだのは、この二人の尊い死を日本の参戦に利用しようとしているという危惧でした。
果せるかな、あの12月8日の朝に発表された真珠湾攻撃で特殊潜航艇に乗り組み敵艦
撃沈に散っていたった九軍神へに与えられたと同じ2階級昇進でした。

 お二人の遺族、奥大使の息子さん、お嬢さんの悲痛な顔、まだ父親の死の意味すら
判らない井ノ上一等書記官のがんぜない坊やの顔を見ていると、2人を死なせてしまっ
たのは貴方だと言う怒りが込み上げてきます。お2人の家族にとっては、3階級、4
階級昇進よりもお二人が無事に帰ってこられた方がいいに決まっている。

 そして、そんな反省もなく、[自衛隊イラク派遣の基本的計画決定」をされた貴方
および、安倍、石破、福田、川口、そして神崎といった6人組は、この大義のない戦
争とアメリカの占領補強のための自衛隊のイラク派遣により、自衛隊員ばかりでなく、
現地のイラク人の血をどれだけ流し続ければ気が済むと言うのだろう。

 言っても無駄かもしれないが、本来、政治を行うには、[修身斎家治国平天下」を
旨とすべきでした。小泉さん、貴方は、自分自身、何をやっているか判らないのはな
いか。あとの5人についても、なるほどそうかと納得の行く説明など聞いたことがな
い。

 今日からでも遅くはないのです。自衛隊を派遣してしまう前に、これだけ、日本の
行く道を大きく変更しようとしている責任上、国民に判る言葉で、多くの犠牲を生む
ことが憂慮される[自衛隊派遣の大義」なるものを説明して欲しい。

 それに、かっては平和運動なるものを展開していた公明党から、すでに2万人から
5万人のイラク人を殺傷し、劣化ウラン弾を投下し、今なおイラク人をためらいなく
殺している米軍による占領の補強のこの派兵を、公明党の母体とする創価学会と言う
宗教から、解説して欲しい。慈悲と愛を根本にすえる宗教が[殺し、殺される」こと
が判っているこうした暴挙に踏み出す根拠とは一体なんだろうか。はっきり言って邪
教としか思えない。是非、声明文でも何でもいいから、われわれに分りやすくその教
え知らして頂きたい。

 12月8日に立命館大学の「わたつみの像」の前で不戦の誓いがされたことを知った。
戦中派のしんがり組の小生には、あの15年戦争で死んでいった2000万人を越す
中国人、東南アジアのて人びと、300万近い日本人の無念の気持がわたつみのよう
に、胸の中を去来する。
    死んでいった人々がもの言わぬ以上
    生き残ったものが沈黙を守るべきだろうか
                  
 小泉首相、残念ながら、今日は時間がなくなったので、またこの続きは書きます。

最後に2週間ほど前、三鷹の友人からメールで受け取った日露戦争厭戦歌「戦友」の
替え歌「隊友」を紹介したい。自衛隊が人身御供にならないように、全国津々浦々で
歌ってほしい内容です。日露戦争での厭戦歌、「戦友」の節で歌いますとありました。


 「戦友」の歌い出しはいうまでもなく、

ここはお国の 何百里 離れて遠き 満州の
赤い夕日に 照らされて 友は 野末の 石の下    です。


     「隊友」

ここはお国の 何万里 離れて遠き イラクの地
暑い夕日に 照らされて 友は砂漠に 横たわる

思えば悲し 昨日まで 国土防衛 自衛隊
お国のためだ 安全と 言われてきたのに いくさの地

国連無視の イラク戦 アメリカ軍の 身代わりに
ゲリラの弾を 身に受けて 尊い命 失いぬ

アメリカしもべ 言い訳は 3千万の 上積みで
1億円の 弔慰金 これ国民の 血税ぞ

靖国神社 合祀され 小泉総理 参拝か
恨みは深し 小泉の 自民公明 内閣よ

憲法違反 特措法 イラク派兵を 止めるには
護憲党の 奮闘と 大義求める 民の声
                      よみびとしらず


これを派遣される自衛隊の隊歌にしてはいかがでしょうか。

阿部拝

書簡21 愚や愚や汝を如何せん

拝啓 小泉首相殿(21) 愚や愚や汝を如何せん

 いよいよ、重装備の日本自衛隊のイラクへの派遣が日程に上りだしました。

 日本国民の意見など聞こうともせず、ひたすらブッシュ大統領の顔色をうかがう自
主性のない小泉首相の思慮分別のなさが、優れた2人の外交官の命を奪い、さらにこ
の自衛隊派遣が実現した暁には、その引き起こす悲劇は、日本の社会をきっと震撼さ
せることでしょう。それに、この派兵の費用も馬鹿になりません。

04年度防衛予算の財務省原案では、自衛隊のイラク派遣費用135億円が盛り込ま
れ、今年度分の242億円と合わせ、イラクへの派遣費用は総額377億円に上るそ
うですね。イラク南部のサマワに派遣される陸上自衛隊の宿営地が約800メートル
四方の広さで厳重な警戒態勢が取られ、浄水・給水や医療の復興支援活動もテロを警
戒して慎重に進める計画ともいわれています。これが大騒ぎするほどの人道的復興支
援なのでしょうか。


 いったいこのイラクへの戦争は何が原因なのですか。日本がこれほどのめりこむ必
要があるのでしょうか。イラクが日本にとってどんな敵対行為をとったというのでしょ
うか。イラク戦争の最大の目玉だった大量破壊兵器はついに見つかりませんでした。
イラクの大量破壊兵器の捜索を指揮しているデビッド・ケイ米中央情局(CIA)特
別顧問が辞任の意向を持っているというではありませんか。つまり、大義が何もない
のです。

 小泉さんは19日、首相官邸でニッポン放送のラジオ番組を収録した際、この1年
を漢字で表すと「重圧」だと、おっしゃったそうですね。国民にとっては、精神的に
も経済的にも物凄い重圧です。これから自衛隊員の安否を思うと、毎日が、針の山で
す。

 また万一、現地で戦闘になった際、イラク人やアラブ人を殺傷させれば、あなたは
いつの日か、A級戦犯として裁かれるでしょうが、中東との関係史の中で、日本がア
メリカの占領軍の傭兵としてアラブの土地を軍靴で踏みにじったという史実は消すわ
けには参りません。

 すでに、日本を敬愛していたイラクやアラブ諸国では「卑怯極まりなき日本」とい
う声まであがっていると聞きます。

とにかく、自衛隊派遣には、われわれの生活にも大きな影響を与える膨大な血税が砂
漠の中に吸い込まれていくことでしょう。一説では、自衛隊の重装備、1日3万円の
手当て、一億円の弔慰金、等々を合計したら、1年に1兆円もかかるとのことです。

 正に、愚挙の中でもこれ以上の愚挙などあるでしょうか。

愚という言葉から、この一週間ぐらいの間、心に去来するのは次の故事です。

    「愚(小泉さん)や、愚や汝を如何せん。」

 もっともこの物語の愚は虞美人草の虞の字で、本来慮る(おもんばかる)という意
味で、戦時中か、戦後間もなく読んだ三国史の中の有名な故事からきています。

 漢の高祖劉邦が項羽を攻め、項羽は楚の軍勢に囲まれて、四面楚歌に陥る。しばし
の慰めに寵愛する虞美人に舞を踊らせ、そのあと、「虞や虞や汝を如何にせん」と嘆
いたといわれ、周囲の武人もみんな涙を流したといいます。虞美人はこの後、自決し
たとも、項羽が一刀のもとに切ったともいわれています。
(「虞美人草」はひなげしのことです)

 小生にとっては、愚人の関白太政大臣がどんな結末を迎えるかなどあまり関心はあ
りません。それよりも「大義なきイラク戦争」を引き起こした超大国の大統領のご機
嫌を取結ぶために、派兵されて戦場に送り込まれたり、重税を科せられ、かってはア
ラブ諸国民から「まだ見ぬフィアンセ」とまで、敬愛された日本人の将来のことがずっ
と気になります。親日的感情の沁みとおった肥沃なアラブ中東の大地が日本憎しの国
土となってしまうことが無念でなりません

 今月の3日、貴方は、「イラクの生の声」をきくためとイラク民主化運動の指導者
アブドルアミール・リカービ氏とあったと新聞報道されましたが、反米、反自衛隊派
遣のリカービ氏はこれは官邸の「地ならし」演出に利用されたと怒り、4日に予定さ
れた川口外相との会談もキャンセルされたと知りました。貴方は、自分の都合の悪い
ことはみな耳栓をしているようですね。

 今読んだニュースでは、京都の9つの中学校が「テロが心配」で 来春の東京ディ
ズニーランドや国会議事堂などを訪れる予定だった2泊3日の東京修学旅行をやめた
と決めたそうですね。可哀想に、中学校の修学旅行は一生の思い出となる大切な記念
行事なのに。自衛隊が出発する前からこんな調子では、これから国民の受ける被害や
苦しみは果てしなく拡大していくでしょう。戦時中の国家総動員体制を経験している
小生には「一億一心」「欲しがリません。勝つまでは」などという小泉ラッパが段々
と鳴り響いていくような気がしてなりません。

 これはどう見ても、小泉さんは「藪枯(やぶからし)」というブッシュ病にとりつ
かれ、日本を丸ごとブッシュ政権に捧げて自衛隊派遣まで実現してしまうという日本
の国土を枯らしてしまう一大事です。

 実は先月、11月21日、若い友人の神田陽司さんが真打ちになり、その披露講演
が国立演芸場で開かれたので、久しぶりに寄席を楽しみました。陽司師匠の創作講談
『坂本竜馬』は、幕末明るい日本への展望を開かんと西郷、桂に直談判する竜馬の熱
血の弁を演じ、講談界にもこうした気骨のある人材が台頭していることを嬉しく思い
ました。

 このとき演じられた神田紅さんの『真説桃太郎』は芥川龍之介の原作が下敷きになっ
たものでした。平和で愉快で豊かに暮らしていた鬼たちの島を襲撃した桃太郎は、島
の鬼たちを殺し、金銀財宝を土産として持ち帰ると言う物語で興味深々たるものでし
たが、ブッシュ桃太郎が分捕り品を、その家来の犬、猿、雉子に分けあたえたのか、
わけなかったのか気掛かりになりました。そこは名うてのネオコンの営業部政権です。
犬、猿、雉子はお役目が終わったとして、大きな鍋に入れられて桃太郎に食べられて
しまったのではないかと気になりました。桃太郎は「このポチの肉はひときわうまい
よ。ちょっぴりライオンの味もしたよ」と舌舐めずりしたに違いありません。

 ブッシュ政権は、最初イラクはアルカイーダとグルだと言い張り、そのウソが国際
的にばれると今度は大量破壊兵器を持つ危険な国家と烙印を押し、先制攻撃と称して
イラクに大量のクラスター爆弾などを投下、地球の寿命ほど放射能を出し続ける劣化
ウランを惜しみなく注ぎ込み、無辜の人々を殺傷し、焦土と化したイラクをマッチポ
ンプ式に「人道的復興」というふれこみで荒稼ぎをしようとしています。こんな非人
道的所行こそ、国際法廷で裁かれるべきではないでしょうか。

 そんな「世界一危険なバカ」な大統領『ブッシュ妄言録』(ペンギン書房)を崇拝
しているのが日本の首相であることが無性に腹が立ってなりません。それに、仄聞す
るところでは、ブッシュ大統領は小泉首相を小馬鹿にした言葉で呼び、発展途上国以
下の元首としか扱っていないそうですね。小泉さんはブッシュ政権に忠誠をつくして
おけば、イラクの復興ビジネスにありつけると皮算用しているのでしょうが、どっこ
いハリバートンとかベクテルといったネオコン企業はそんな甘いものではありません。
復興事業には仏独ロでも参加させないと公言しているアメリカが日本にうまい汁を吸
わせる訳がありません。自衛隊派兵で日本をアラブ中東の憎まれものにしたてるのに
成功したアメリカが、イラクの石油を独占すれば、中東からエネルギーの90%を輸
入している日本経済は、アメリカの価格操作によってますますアメリカに跪ずかざる
をえません。

 小泉さん、アメリカ優先の政治から、日本国民の平和、生活を中心にした政治に切
り替えないと来年はそれこそ「重圧」を感じたなどという生易しい感想ではすまなく
なりますよ。

 あの戦争末期の頃、毎年冬になると、いつもまっ先に思い浮かべたのは、

    「冬来りなば、春遠からじ」

 と言うシェリーの詩の一節でした。まだ16、7才の頃でした。

   (転送大歓迎)

書簡22 昔、インドの苦しみを知る(白蓮)

拝啓 小泉首相殿 22 昔、インドの苦しみを知る(白蓮)

 インディアン・エクスプレスの報道として、インド人米兵で初犠牲者となったパン
ジャブ州出身のウダイ・シンさん(21)が家族にあてた最後の手紙で「父さん、だ
れが敵なのか分からない」「毎日少なくとも20回から30回襲撃されている」と書
いていたと知りました。2000年にシカゴに移り米陸軍に入隊し、9月以降イラク
に駐留し、来年1月に米国籍を取得できる見込だったそうです。「ブッシュ戦争でイ
ンド人家族が息子を失った」と一面でインドの英字に報じられたこのニュース、米国
籍欲しさとはいえ、痛ましい犠牲です。

 インド政府は現情勢ではイラク派兵決定への国民の支持を得にくいと判断、「イラ
ク暫定政権が樹立され、その正式な要請を待って派遣する」と米側に説明し、パジパ
イ首相もインドが派兵しなかったのはよかった語っているといわれています。

 毅然としたインドの態度と比べ、「血を流せ、カネもよこせ」のブッシュ政権に唯
唯諾諾と従う貴方の政権が、これが「本当に日本の政府」かと腹立たしい限りです。

 「おい、コイズミ、手前(てめい)出番がやっと来たぜ。その働きぶりをみせてく
れ」「親分、合点だ。伊達に別荘で盃は頂いちゃいませんぜ。生きのいい若いもんに
重装備させて送り込みますから、安心して見てておくンなせい」とかなんとか、ゴッ
ドファーザーと三下子分のやり取りを毎日大型画面で見せられているような感じです
です。こんな安手の「三文オペラ」に出演していると、日本に高いツケがだんだん回っ
て来る不吉な予感がします。

 さて、インドのイラク派兵反対の態度に感銘したことを書きましたが、小生、イン
ドが奇縁で、一度だけ宮崎白蓮先生にお会いする機会があリました。もう44年以上
の昔のことです。そのとき頂いた20ページほどの短歌の雑誌に次の一首が載ってい
ました。

    民族の悲しみは 今に 我にきて
      昔 インドの苦しみを知る

 正直いって、当時小生は、白蓮先生は大正時代の大歌人で、美貌なるがため没落華
族を救うべく大炭坑主に娶られたが、愛なき結婚に絶縁状を突き付けて家を出て、当
時東大の新人会(マルキシズム研究会)の7才年下の宮崎竜介氏と駆落ちし、苦難に
めげず愛を貫いた人という程度のことは聞いていました。

 1959年初夏、当時、平凡社の創立者下中弥三郎先生の下で「インド友の会」の
事務局をしていました小生が先生の部屋に挨拶に入った時「阿部君、悪いけど明日の
午後3時頃から、神田の如水会館で今度私が訪問するインドで、大統領に寄贈するこ
とになった日本の邦楽の名曲レコードの試聴会をするので、君は目白の宮崎白蓮先生
のお宅にお伺いして、ご高齢で脚も弱っていらっしゃる先生を御案内してくれないか」
と申し付けられました。

 翌日の午後、目白のご自宅にお伺いし、白蓮先生の入れて頂いたお茶を頂きながら、
庭に面した縁側でインドのことなど20分ほど、お話をさせて頂きました。竜介先生
もニコニコしながら聞いていらっしゃいました。

 「阿部さんはお若いのに、何故インドに関心がおありなの」と白蓮先生に聞かれた
小生は、「インド友の会」でいくつかのインドとの交流の仕事を手がけていたので、
タゴールのこと、インド舞踊団の初来日と全国公演、1959年初頭カイロで開かれ
たアジア・アフリカ青年会議の帰路に立ち寄ったニューデリー、カルカッタでの経験、
スバスチャンドラボーズ、ネルー、ガンジー、とりわけガンジーの哲学が好きで、
「目的の正しさを手段の正しさで証明する」というガンジーの教えは一生の教えにな
りましたなどを熱心に語りました。小生が戦後、アジア、アフリカとの連帯の仕事を
終生の仕事にしたいと思ったのも、戦時中信じ込まされていた「大東亜共栄圏」なる
ものが虚構であったことが判った悔しさからですなどとも申しました。

 「まあ、阿部さんはアジアにそんなに熱心なの。実は私も一人息子をインドで戦死
させてしまったのよ」「これに私の歌が3首載せてあります。これを記念に差し上げ
ます」といって頂いた20ページほどの歌の雑誌(先生主宰の「ことだま」?)の中
にあった3首のうちの1首が、上記の歌でた。半世紀に近い昔に一度読んだだけで
今でも記憶しているのはこの歌の素晴らしさです。

 昔イギリスがインドを植民地にした時、イギリスの東インド会社のインド人傭兵
セポイが1857年反乱をおこし、イギリスの支配に不満を持つ旧支配層や、近代的
地租制度によって没落した大土地所有者、土地を失った農民、木綿工業の不振で職を
失った商工業者など広範な階層の人々が加わり、北インド全域に及ぶ大反乱となった
のはよく知っていました。自衛隊は、明らかに、ネオコンの利益を守る占領政策のた
めのアメリカのまごうことなき傭兵です。白蓮先生が「昔、インドの苦しみを知る」
という意味を今しみじみ噛み締めています。

 本来傭兵というのは、雇った方は、わずかでも金を払ったり、報酬を考えるもので
す。今回の派兵により、自衛隊員か、イラク人が鮮血で染まるかもしれません。その
時の遺族の悲嘆を小泉さんは考えたことがありますか。先月2人の外交官がなくなっ
たとき、確か「ああそうですか、それはそれは」という言葉でしたね。それが合同葬
では「2人は日本国、日本国民の誇りでもある。・・・日本政府は遺志を受け継ぎ、
国際社会と協力してイラク復興に取り組んでいく」と自衛隊派遣につないでいこうと
いう、自己中心の考え方、ご都合主義の見本みたいな弔辞を述べましたね。お二人の
遺志というのは、もうこれ以上の犠牲者を誰一人出さないということと違いますか。

 白蓮先生が「一人息子をインドでなくしたのよ」とおっしゃったとき、小生は、日
本軍はビルマのインパール作戦で多くの戦死者を出していたのを知っていたので、
「エッ!インドで!」と心で思いましたが、もう目白のお宅を出る時間でしたので、
とうとう聞き損ねてしまいました。目白から神田の神保町までのバスの中でも、先生
の悲しみをかき立てるばかりではないかということや、周囲の客のこともあり、遂に
どうしてインドで亡くなられたのか聞きそこねてしまいました。

 お会いした時、白蓮先生は69才頃だったと思います。旧姓柳原燒子(あきこ)、
大正天皇のいとこにあたる藤原北家の流れを汲む柳原前光(さきみつ)伯爵の次女で、
すでに白髪の気品のある美しい方でした。日本のノラ(戯曲「人形の家」の主人公)
柳原白蓮・・・それは大正時代を生きる人びとにとっては、情熱とロマンの象徴だっ
たといわれています。いつもほほえみを浮かべ、優しく、少しも偉ぶらないその人柄
は小生の心の中にラジウムのように光っています。

 白蓮先生が、一人息子・香織(早大生)の戦死の公報をうけられたのは、終戦の年
だったことで、その髪の毛は一夜で白髪となったといわれています。戦後の歌人・婦
人運動家・そして戦争で子供を失った母として各方面で活躍することになられたこと
も知りました。

 白蓮先生、宮崎先生そして、アジア解放の夢を生きた父親の宮崎滔天など紹介した
いことは多いのですが、最後に一つ、懐メロ好きの小生が附記したいのは、宮崎白蓮
を主人公とした映画が終戦の翌年1946年に渡辺邦男監督 脚本 八住利雄 で『麗
人』として封切られていることです。白蓮を原節子、竜介を藤田進が演じ、古賀政男
作曲でつくられた「麗人の歌」は当時大流行したそうです。(封切当時、小生は見逃
してしまいました)しかし、これは東宝系の映画をバックにしたカラオケに入ってい
るので、たまに歌うことがあります。「夢は破れて花嫁人形・・」といった古賀メロ
ディです。

 バックに流れる映像から、竜介が権力の横暴反対の演説をすると立ち会いの警官が
「弁士、中止」と叫び、続いて「検束」の号令で竜介の逮捕のシーンが映され、家を
追われた2人がリヤカーで家財道具を運ぶ姿も見られます。確か、暁子は子どもを背
に負っていたような気がします。病弱の夫を支え、貧しさと戦い、母として、妻とし
て、人間として充実した日々を送った白蓮先生を永遠に忘れないでしょう。

 若い人びとがもっともっと日本のことを知って欲しいと願ってやまない次第です。

(転送歓迎)

書簡23 「日本殺すにゃミサイルいらぬ ポチの頭をなぜりゃいい」

拝啓 小泉首相殿23 「日本殺すにゃミサイルいらぬ ポチの頭をなぜりゃいい」
                              (12月27日)

 「日本殺すにゃミサイルいらぬ ポチの頭をなぜりゃいい」

 我ながら随分過激な発言に思えてきます。実はこの表題を決めるに対して多少の心
の葛藤がありました。

 これは、少し過激な表現だ、もう少し優しい言葉で総理に進言すべきではないか、
柔軟な表現を考えるべきだという反省。

 しかし一方で、いや、いや、さにあらず。国民があれだけ反対しているのに、小泉
首相は、ブッシュ大統領への義理立てでとうとう空自を送ってしまったのだ。来年始
めには、陸自も出そうとしている。お前は、自衛隊員やその家族の心情をどう思って
いるのだ、お前が常に言っているように、戦争で死んでいった人びとの無念な気持を
代弁する主張していたのではないか。

 何より外国の元首の顔色だけを気にしている腑抜けな馬鹿殿様を首相に頂いて、日
本人としてお前は誇りがあるというのか。「書け! e-mailを打て! そんな優柔不
断で何が戦中派だ!」などとあの戦争中に死んでいった多くの親類の叔父貴、級友、
先輩に怒鳴られる思いがしました。

 昨日、12月26日に、空自の第一陣が出発した今日の朝刊には、「輸送拠点とな
る主要空港の事前調査は手付かずのまま」(朝日)と書いてありました。無責任を絵
に書いたようなものですね。それに、空自の主要な任務は米軍の輸送というではない
か。もう、まごう方なき日本の参戦です。それに、Self Defense Forces(自衛隊)
というのなら日本にいて、専守防衛すればいい、イラクまで、出向いて占領政策に加
わるなんて、これこそ、US Army Defese Forces (米軍護衛隊)ではないか。後生だか
ら、Self-Defense など臆面もなく使っているのは、羊頭狗肉もいいとこで、まるで
詐欺同然。あまり日本人の恥をさらさないで下さい。

 小泉さんや外務省が期待した25日のカタールの衛星テレビ、アルジャジーラによ
る首相インタビューも、アラブ人ではなく、イラン人のインタービューだったようで
ね。もうすでに昨夜放送され、その時間がたたった一分間弱だったという。28日に
長い番組が放映されるかもしれないが、丸投げ首相の「派兵はイラクの復興支援」と
言う屁理屈は、自民公明の与党の間でこそ「御意、御意」と奉られているかもしれな
いが、広く日本国民の間、まして理不贐な米軍の占領を助ける日本のArmy(軍隊)を
歓迎するという酔狂人などアラブやイスラム諸国にいるはずがない。いたとしてもご
くごく少数派。そんなことよりはやく「イラクの政治はイラク人の手に」を合い言葉
にしましょうよ。

 復興支援になぜ、日本人の血税を使って重装備の軍隊を派遣する必要があるだろう
か。復興援助なら丸腰で行けばいい。現地ではそう思っている人が多いのではないか。
早晩、自衛隊派遣がイラクを始め、周辺諸国をウロチョロされるようになれば、中東
地域、イスラム諸国での日本の声望を地に落とし、日本は奇妙奇天烈な国家として、
軽蔑と警戒の目で見られていくのではないかと心配でたまらないのです。ついで日本
の企業もお引き取りをと言うことになったらどうします。

 何よりの願いは、自衛隊員の誰一人も犠牲になって欲しくないこと、イラク人をた
だの一人も死傷させてはならないことです。それは日本が破滅の坂を転がりはじめる
スタート地点になってしまうでしょう。

 24日、愛知県小牧市の空自小牧基地で行われた航空自衛隊の編成完結式で小泉首
相は「イラクは決して安全とは言えない。危険を伴う困難な任務だと承知しながら、
気候も違う、言葉も違う、習慣も違う厳しい状況を想定した厳しい訓練に耐え、使命
感に燃えてイラクに赴く諸君に心から敬意を表したい」と激励したという。

 おい、おい、おい。ちょっと待ってよ。「黙って聞いていれば、良く言うよ」とい
うのが偽らざる実感です。

 貴方自身が言う「決して安全とは言えない」イラクへ、自衛隊員を送りだし、安全
でもない、まして大義名分も何もないイラク派兵を、ゴリ押しして進めているのは、
小泉純一郎総理大臣自身なのですよ。それを貴方はかってに隊員の使命感と決めつけ
て、隊員は自らの意志で行くかのように煙幕を張っている。なぜ「私がブッシュ大統
領に約束したために、行って頂く」と言わないのか。

 悪賢いといおうか、卑怯といおうかこんな政治家が日本で首相を務めているなんて、
悪夢を見ているような思いがする。馬鹿馬鹿しくって、うどんで首くくって死んでし
まいたい心境です。

 先回の手紙では、一人息子の早大生香織さんを終戦の年にインドで戦死させてしまっ
た宮崎白蓮先生が一夜のうちに白髪になられてしまわれたことを書きました。以前に
もやはり一人息子だった旧制中学の級友の奥村君を名古屋の三菱飛行機工場でアメリ
カのB29の大空襲で失ったお母さんに終戦直後にお会いした時、半年余りで、痩せ
衰えた老婆に変わられていたことに愕然としたもこの手紙でお伝えしました。

 是非、さっそくアメリカ占領軍の軍事攻撃を支援する空自のイラク派遣をイランの
大地震救済に振り向け、来年の自衛隊派遣はブッシュ大統領に「悪い夢を見ていた」
と諦めてもらうよう小泉さんから、わび状をだしてもらえませんか。

  アルジャージラのインタビューに出て「イラクへの自衛隊の派兵の大義」を堂々
とアラブ、イスラム国民に理解してもらえると言う自信がおありらしいから、来年早
々、成人式の日にでも、小泉首相と青年たちの間で一大討論会などやってみませんか。
これこそ日本の首相としてやりがいがある一大イベントです。孝太郎君に加わっても
らったら、視聴率もあがるし、小泉さんのホームランになるかもしれません。

 それはそれとして、とにかく、小牧の航空自衛隊の編成完結式で、貴方がおっしゃっ
たように、自衛隊員やイラク国民の安全を祈りましょう。そのために是非一緒に与謝
野晶子の「あゝをとうとよ戰ひに君死にたまふこと勿れ」(旅順口包囲軍の中に在る
弟を歎きて)を歌いましょう。

 実はこの歌、オラトリオとして作曲されています。小生、ペギ-葉山さんが歌った
録音テープをもっています。恥ずかしながら、45年ほど前に時々歌っていました。
小生でも歌えるのですから、オペラの造詣の深い小泉さんにリサイタルで、安倍、
福田、川口、石破の面々をバックコーラスとして歌えば、小泉首相、声楽家として
デビューと国際的に報道され、世界各国のオペラ劇場から公演依頼がひっきりなしに
来るでしょう。「アイーダ」の初演で知られるカイロのオペラハウスはもちろん、バ
グダードにあるオペラハウスでも大評判になること請け合いです。いい初夢となるこ
とを祈ってやみません。小泉さんの歌手デビュー、きっと様になりますよ。


あゝをとうとよ君を泣く
君死にたまふことなかれ
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや

堺(さかひ)の街のあきびとの
舊家(きうか)をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたまふことなかれ
旅順の城はほろぶとも
ほろびずとても何事か
君知るべきやあきびとの
家のおきてに無かりけり

君死にたまふことなかれ
すめらみことは戦ひに
おほみづからは出でまさね
かたみに人の血を流し
獣(けもの)の道に死ねよとは

死ぬるを人のほまれとは
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されむ

あゝをとうとよ戦ひに
君死にたまふことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは
なげきの中にいたましく
わが子を召され家を守(も)り
安(やす)しと聞ける大御代も
母のしら髪(が)はまさりけり

暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻(にひづま)を
君わするるや思へるや
十月(とつき)も添はでわかれたる
少女(をとめ)ごころを思ひみよ
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき
君死にたまふことなかれ

──「明星」明治三十七年九月号──

幸い、この詩は、小生も国際委員の一人を務めている日本ペンクラブの電子文藝館で
すぐ見られます。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/index.html
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/poem/yosanoakiko.html
島崎藤村をはじめとする明治以来の文豪から現代の作家にいたる歴史的作品・・詩・
短歌・俳句、戯曲・シナリオ、ノンフィクション、評論・研究、随筆、小説、児童文
学、評論、反核、反戦の作品が読めます。アスファルトジャングルというか、「人情
紙風船」というか、日本ばかりか、世界を覆う荒れ地のなかに懇々と湧き出る心のオ
アシスです。光栄にも、小生、阿部政雄の「バグダードとメソポタミア」「もう一度
人類のルネサンスへ一歩踏み出さそう」の2編を紹介頂いていますが、お時間のある
ときにお読み頂ければ幸いです。

阿部拝(転送歓迎)

書簡24 テレビドラマ『竜馬がゆく』と「船中八策」

拝啓 小泉首相殿24 テレビドラマ『竜馬がゆく』と「船中八策」

 小泉さん 明けましておめでとうございます。いや今年こそ、おぞましい戦争への
道からUターンして「世界から愛される日本」に戻りましょうよ。

 小泉さんは、きっと何かの悪霊に取り付かれているに過ぎないと思っています。

 しかし、元旦早々、靖国神社に「初詣」にのこのこ出かけましたね。傍若無人、
「我が道を行く」と言うのは貴方のやり方です。早速、中国から「中国とアジア人民
の反対を顧みず参拝したことに強い憤りを表明し、戦争被害国人民の感情を傷つける
行為を強く非難する」と、韓国から「今後、首相の(靖国)参拝がないよう政府とし
て強力に促したい」との抗議が表明されました。

 小泉さんは、今回のイラクへの自衛隊派遣でアラブやイスラム諸国の親日感情をも
のの見事に、反日感情に変換させつつあります。正に、あなたは短期間に日本や日本
人の世界的声望を地に落とす政策を連発する日本の歴史上稀に見るチャンピオンとし
て名を残すでしょう。しかし、われわれ庶民にとっては、第2次大戦中に日本国民の
辿ってきた道をもう一度繰り返させられるかと思うと新春の喜びなどどこかに飛んで
いってしまったという心境になりました。

 戦中派のわれわれにとっては、とりわけ靖国神社は「空をつくような大鳥居、こん
な立派な御社(みやしろ)に/神と祀られ尊い(もったい)なさや、倅(せがれ)来
たぞえ/会いに来た」という『九段の母』(歌詞は若干ウロ覚え)だの、「貴様と俺
とは同期の桜/離れ離れに散ろうとも/花の都の靖国神社/春の梢で咲いて会おう」
と言った悲壮な軍歌『同期の桜』がすぐ蘇ってくる日本帝国主義のシンボルでした。

 もっとも貴方は「俺にはブッシュ大統領がプッシュしてくれているから大丈夫」と
自信満々のご様子で(?)、記者会見で「日本の平和と繁栄は戦争の時代に生きて、
心ならずも命を落とさなければならなかった方々の尊い犠牲の上に成り立っている」
とおっしゃいましたが、「心ならずも命を落とさなければならなくなる」可能性のあ
る自衛隊員をイラクの戦場に送りだそうとしているのは、貴方自身なのですよ。

 『世界』2003年12月号の中の「現地で迷惑にならないように、イラクを助ける方法」
という論文で C・ダグラス・ラミス教授がいっているように、小泉首相は、わざわざ
自衛隊員を殺してでも日本国憲法第九条を変更するための地ならしにしようと焦って
いるのではないかと戦慄すら覚えます。

 とにかく、自衛隊が派遣される前に(もうすでに先遣隊は出発してしまったけれど)
日本の国民に納得のいく説明をして欲しい。「そんな説明責任も果せないで、日本の
首相でござーいというでっかい顔(つら)をするな!」と叫びたい。貴方は、平和に
暮らしている自衛隊員の家族の大黒柱を引き抜いてイラクへ派遣し、自衛隊員やイラ
ク人から犠牲者が出たらその時に「考える」なんて言い方ないですよ。そんな無責任
なやり方は、まともな社会では通用しないのですよ。

 イラク戦争は、アメリカの出方では、今後「パレスチナ紛争」にも匹敵する長い戦
いになりかねないのです。日本は確実にアラブ、イスラム諸国から見はなされ、膨大
な戦費と人的消耗のために疲弊していくことでしょう。(もっとも和製ネオコンの軍
需産業は景気はよくなるかもしれないけれど、われわれも旧制中学生時代学徒動員時
代に3年間ただ働きさせられた。多くの民間の会社は国家総動員法で潰され、こうし
た兵器産業に徴用されていたのを目撃しています。国防族に案外若い国会議員が入っ
ているのもこのせいなのでしょう。)

 こんな鬱然たる思いの中で、正月2日の午後から、12チャンネルで見た新春ワイ
ド番組、司馬遼太郎作『竜馬がゆく』は中々見ごたえがありました。染五郎、内山里
奈、高嶋政宏、松たか子らの青春俳優に、柄本明、幸四郎、藤田まことなどのベテラ
ン組を配した爽やかな、また9時間たっぷりの豊かな内容を大いに満喫しました。

 小生が大いに我が意をえたのは、竜馬の政治的な開眼を促した長州の久坂玄瑞の
「尊藩も蔽藩も滅亡しても大義なれば苦しゅうからず。」という竜馬を大きく飛躍を
せしめた有名な言葉や、また長崎の海援隊の看板を竜馬自らが書き、「これからの日
本を助けるには海から援けらればならない」と言う場面がキチッと入っていたことで
した。この二つの言葉、噛めば噛むほど今の日本の進軍ラッパをとめる方策を示唆し
ていると思っています。

 さて、薩長連合を遂に実現した竜馬は、日本国内の内乱を防ぐために、大政奉還の
離れ業をやってのけますが、維新の大業を前にして中岡慎太郎とともに狂刃に倒され
てしまったのは一大痛恨事でした。

 小生が竜馬に関心を頂いたのは、もう30年ほど前のこと。絶えず大国から虎視眈々
と狙われ、新しい国家の樹立を目指して苦闘するアラブ諸国の姿が、開国か攘夷に別
れて争った幕末の日本の激動期とよく似ていることに気付いたためでした。そのため
竜馬の本は、随分読みました。恐らく新渡戸稲造研究に費やしたと同じ時間とエネル
ギーをかけたと思っています。

 今、イラクの復興が叫ばれていますが、竜馬の思考、経験から学ぶことは多々あり
ます。例えば、この意味から、勝海舟と竜馬が献身的に育てあげようとした神戸海軍
操練所などもその一つです。もちろん海軍ではなくて、海運技術操練所のようなもの
を造れないかということです。こういう国づくりの人材を育成する技術研修所だった
ら、イラクはもちろん、どの発展途上国も喉から手が出るほどに欲しがるでしょう。
人殺しを前提とした重装備など「愚かと言うもあわれなり」です。これだけ豊富な資
金を無駄な使い方でなく、イラクにこうした国家有為の人材養成所をつくれば、日本
も中々やるじゃないかと世界全体が日本を見直すでしょう。新興諸国の「下等人民秀
才の人々」に門戸を広く開放し、”技術移転”のメッカとし、共に学びあうほど質の
高い操練所してほしいもです。
 そして、竜馬が手掛けた「和英通韻以呂波便覧」といった語学のテキスト、さらに
「万国公法」や「藩論」といった政治書(今の日本の場合は日本憲法の)アラビア語
による啓蒙的出版事業も手掛け、新しい知識の広範な伝播を図ったらどうでしょう。

 小生は竜馬から学ぶ最大の遺産と言えると思うのは、何と言ってもテレビドラマに
も出ていた「船中八策」です。彼が慶応3年(1867)に長崎から大阪に向かう土
佐帆船「夕顔丸」の中で書いたといわれています。これは後に、明治政府の国是となっ
た「五ケ条の御誓文」の原形となりました。この八策の第2条には、「1、上下議政
局を設け、議員を置き、万機を参賛せしめ、万機宜しく公論に決すべき事」とありま
す。つまり、現在の日本の国会を誰よりも早く考え提唱していたのが坂本竜馬という
ことです。

 小泉さんから、「おいおい、阿部さんよ、そんなこと政治の素人の君に言われなく
てもとうの昔に知っているぞ」とおっしゃるかもしれません。その節は謝ります。し
かし、この「万機公論に決すべき事」ということをあの時代に考えていたのは流石に
竜馬ではないですか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 そこで、今から15年ほど前、「東京竜馬の会」に入っていた頃、それまでのアラ
ブとの長いかかわりの中でえた知識、経験をもとに、小生なりの「新船中八策」を書
いてみました。

    「新船中八策」
1.大政奉還  (国会は国民の代弁者たるべし)
2.敬天愛人  (倫理とヒューマニズムの再生、日本には「武士に二言ない」など
         高い武士道(新渡戸博士は「平民道』でもよいとわれた)の倫理
         があります)
3.憲法実践  (憲法は飾りものに非ず、絶えず実践し応用すべし)
4.第三世界への開眼 (日本の眠れる潜在力の発見のために)
5.世界平和  (戦後、平和・文化国家としての再出発を決意した筈)
6.国際文化交流(世界は広いぜよ、学びあい、新文化創造を
         戦争は人の心から -ユネスコ憲章序文-)
7.諸民族の主権尊重 内政不干渉(普遍の原理)来年はバンドン会議の50週記念
         年にあたります)
8.日本をよくすることが世界の最大の貢献 (国際主義というのは、インター・ナ
        ショナリズム、つまり、それぞれのネーションが良くならなければ
        何の国際連帯ぞや。まず、「日本を洗濯せねば』(竜馬)、世界に
        貢献することは、夢のまた夢です)

 この「新船中八策」については、各論を詳細に書かねば舌足らずに終わりそうなの
で、またの機会に譲らせて頂きます。外遊歴も豊富で、世界の首脳と会談されてきた
小泉首相からも「世界が求める日本のビジョン』をお示し下さいますように。(また
小生の案の欠陥については各方面からの御批判、御示唆がいただければ幸いです。)

 とは言うものの、国民の八割近くが反対しているイラク派兵を眉毛一つ動かさず
(これ、パーフォ―マンス?)、決然と決行されようとする武断宰相の姿を見ている
と日本の前途に暗雲が垂れ込みはじめているような暗い気持ちになります。

 しかし、こんな猪突猛進の首相にずるずる引きずられていくほど日本国民は馬鹿で
も弱くもないし、国会議員諸公の中でも、これでいいと思っている人は大多数ではな
いと信じています。

 この「拝啓 小泉首相殿」シリ―ズも今回で24回となりましたが、ご承知のよう
にこの手紙は全国会議員にお送りしています。政党本部からも、また個々の国会議員
の先生からも大変参考になったと感謝のメールなど頂いています。三波春夫流に言え
ば「小生のメールをお読み下さる方は全て、小生にとっての神様」です。今後とも何
とぞご愛読下さいますように。また政治についてはまだまだ素人の域を脱していない
と思います。宜しく御叱正下さるようお願いいたします。

 最後に、蛇足のような書き方で、恐縮ですが、最近、『河野太郎の国会攻略本』を
買って読みました。題名も勇ましけれども、中身も河野議員の覇気、爽やかさ、行動
力が躍動していて、日本にも日本を良くしようというこうした政治家がいるのだと嬉
しくなりました。国会議員の働きぶりが良く判り大変得がたい知識をうることが出来
ました。売れ行きも順調だそうで、増刷が本屋に配本中とのこと、これこそ、日本の
政治の中にも、身体を張って日本を良くしようと政治家が潮騒のように胎動しはじめ
ていると感じました。
●関連ホームページ: http://www.taro.org/

 とにかく、竜馬のように平和と貿易の伸張を国是として、世界的視野から日本の前
途を考える国会議員や在野の活動家がもっともっと輩出して欲しいものと思いました。

 この本を読んで、「自衛隊イラク派兵」だの「靖国参拝」だの暗いニュースばかり
で、「慷慨(こうがい)悲憤の涙 そは 何をか嘆ぜん」といった幕末の志士、月形
半平太のような暗然たる思いに包まれていた小生をこの本は「こいつは春から縁起が
いいわい」という正月気分にやっと引き戻してくれました。

 若いわれら(若いと言う意味は精神的若さを言っているので、暦の年令とは関係な
いと思っています。小生は75才も半ば過ぎましたが、まだ気持だけは20代のつも
りです)が、年齢差をこえてまた、尊党だの弊党をこえて愛する日本のために「一大
薩長連合」する時節が到来したと思っています。

では、また

阿部拝

書簡25 自衛隊員への「未必の殺人罪」で裁かれるのは、小泉さん?

拝啓 小泉首相殿25 自衛隊員への「未必の殺人罪」で裁かれるのは、小泉さん?
                                                        2004年1月10日
拝啓、

 遂に小泉さんの「大命降下」で、自衛隊がイラクに出発してしまいました。小泉さ
んは、これでブッシュ大統領への約束を果したとホッとしているのではないでしょう
ね。自衛隊出動は、今後の日本を戦前回帰の方向に間違いなく引っ張っていくことで
しょう。しんがり戦中派としては今後の日本の行く末を思うと胸がキリキリ痛みます。

 しかし、自(他?)衛隊派兵による日本の戦前回帰という貴方の野心も決して平た
んな道ではないでしょう。これから貴方は、急速に、日本国民、アジア諸国そして肝
心のイラクばかりかアラブ諸国民の中で、“新東條”コイズミとしての反発は日増し
に激しくなっていくことでしょう。

 それは、大義なき米国のいうままになって、膨大な国民の税金を使い、貴重な自衛
隊隊員の生命(先に二人の有能な外交官の死にしても結局貴方が目指す対米盲従政策
に従ったために犠牲となってしまったと見ています)を犠牲にして打立てようとする
貴方の政策が、国民が本当に願い、日本の憲法が指し示している方向とはまるで、逆
コースをひた走ろうとしているのです。国民は、貴方の政策が、日本国民の疲弊、苦
難、そして世界諸国からの日本や日本人への軽蔑を招く時代錯誤の路線であることに
気付きはじめています。

 失礼ながら、貴方の顔をつくづく見ていると、小生が小学生の頃毎月発売されてる
『少年倶楽部』に連載され、わくわくして読んだ江戸川乱歩作『怪人二十面相』を思
い出します。最初は変人、次は改革首相、やがて外国元首に尻尾を振る愛犬、そして、
進軍ラッパを吹き鳴らす和製小型ネオコンの超国家主義者ーーそして全ての仮面をは
がしたあとの本当の小泉さんの顔とは、はたしてその髪型にふさわしい狐かドラキュ
ラーか? 「事実は小説より奇なり」と申しますが、小説として読んでいる分には興
味深いのですが、貴方の政策の歯車が一つ回る度に、多くの人びとの平和や生活が石
臼でひき潰されていくかと思うと、言い様のない怒りが込み上げてきます。

 まさか、「安保男」と異名を馳せた貴方のお父さん純也氏が、佐藤内閣防衛庁長官
の時に有事法制を実現しようとして辞任に追い込まれたことから、「江戸の敵を長崎
で」という訳ではないでしょうが。何はともあれ、世界の趨勢は、超国家主義の方向
ではなく、貴方のおっしゃるとおり国際協調の方向に緩やかではあるが確実に進んで
いますことは御認識下さい。

 この手紙で何度も申し上げるように、小生は小泉さんに破滅の道を歩んで欲しいな
どこれっぽっちも思っていません。どうか、虚心になって、少なくても昭和史以降の
日本の歴史を真剣に学び、日本のおかした過ちや達成点について熟考して下さい。

ところで、昨日今日と重要なニュースが入っています。

 共同通信によれば、イラク南部サマワで、地元の人権活動家と日本の市民団体「イ
ラク国際戦犯民衆法廷」のメンバーが兵器の残がいの放射線量を調査した際、通常レ
ベルの約300倍の線量が測定されたことが10日分かったというニュース。

 また、時事通信によれば、サマワでは、日本の自衛隊が失業をなくするために大規
模な雇用を準備してくれるという噂が高まり、バグダードからも職を求めて集まって
きそう。しかし、復興への期待感が大きいだけに、それを裏切った場合の反発も強い
とみられるそうです

 そして現地では、すでに「日本イラク友好会」のようなものが誕生していると聞い
ています。一度はイラクに行きたいとの小泉さん、いい機会です。安倍幹事長、福田
官房長官、石破防衛庁長官、川口外相、それに最近同士となって馳せ参じた神崎公明
党党首、冬芝幹事長と一緒に行って、「日本が願っているのは"人道援助"である」、
「一方で囁かれている米軍支援などはデマ宣伝だ」と懇切丁寧に説明すれば、日本へ
の誤解も、何よりも小泉首相への偏見も、砂漠の蜃気楼のように消えいくこと必定で
す。日本と中東の外交史上に燦然と輝くことでしょう

 しかし、どういってみても、小泉さんの説明は不十分ですね。官僚が準備した片言
節句を丸暗記して、大道芸人宜しく、得意のパーフォーマンスで切り抜けて来たとい
う感じは拭えません。

 現に、自民党の今津寛国防部会長は10日、地元・北海道旭川市の新年会で記者団
の質問に答え、イラクへの陸上自衛隊派遣について「小泉首相は説明不足だ。誠意を
持ってイラクの復興の必要性を国民に訴えるべきだ」と指摘しました。

 そして、同日また、石破茂防衛庁長官は10日昼、千葉県船橋市の陸上自衛隊習志
野演習場での第一空てい団の初降下訓練後に訓示し、「イラクの地は主要な戦闘は終
結したとはいえ、なお危険は残っている。リスクは決してゼロではないが、最小限に
するために全力を尽くす」と述べ、派遣隊員の安全確保に努める考えを重ねて示しま
した。(時事通信)

 思い出せば、12月24日、愛知県小牧市の空自小牧基地で行われた航空自衛隊の
編成完結式で小泉首相は「イラクは決して安全とは言えない。危険を伴う困難な任務
だと承知しながら、気候も違う、言葉も違う、習慣も違う厳しい状況を想定した厳し
い訓練に耐え、使命感に燃えてイラクに赴く諸君に心から敬意を表したい」と激励さ
れましたね。そんなに敬意を表したくなるような重要な仕事だったら、何も躊躇する
ことはありません。小泉首相こそ今、行くべきです。

 小生は法律の方は専門ではありませんが、殺したり、殺されたりする屠殺場のよう
な地域に人々を投げ込むのは、法律上「未必の殺人罪」とか言うのではないですか。

 小生がここ数日間、疑問に思って考え込んでいることは、自衛隊員がイラクで戦闘
に巻き込まれた場合、イラク人を間違って殺せば、日本の法律で処罰される、もちろ
ん、イラク側から戦犯として裁かれる可能性も覚悟すべきでしょう。そんな不幸が発
生しないように、国民の反対に耳栓して、あれだけ時間と国費をかけて遮二無二イラ
ク特措法を通した筈でした。その法律さえ無視すると言うのなら、貴方と貴方周辺の
6人衆は「未必の殺人罪」で裁かれるべきであると小生は思っています。

 自衛隊員の犠牲者が出てからどうするか考えるなどと無責任で悠長なことをおっしゃ
らないで、この自衛隊員の犠牲に対する「殺人罪」を誰に適用するかを今度の国会の
冒頭で討議頂きたくお願いいたします。

 この点、自民党の加藤紘一元幹事長は10日、鶴岡市で講演し、自衛隊イラク派遣
に「わたしは議員の1人として反対だ」と言明されています。また、自民党内では、
加藤氏のほか古賀誠元幹事長、亀井静香元政調会長らも、自衛隊イラク派遣に否定的
な発言を繰り返されており、国対筋は少なくとも5人前後が国会承認で欠席か棄権す
るとみているが、党内摩擦や世論の反発を考慮して、賛成しない議員を処分しないと
の見方を示していると記事で読みました。これこそ、代議士(士とは侍の意味)のと
るべき道だと感銘しました。

 たしかに、昔の武士だったら、腹かっさばいて切腹というところでしょうが、気の
弱そうな小泉さんは切腹など到底できないでしょうし、国民は見たくもないでしょう。

 それより、もう一度、世論に聞いて、貴方と国民の"合い言葉"である「イラクへの
純粋な人道支援」だけに限ってイラクを助けることにしたらどうかと思います。
「過ちを改めるにはばかる事勿れ」です。「未必の殺人罪」で国民から告訴されたく
なかったなら。

 もっと書きたいことがあるのですが、家を出る時間が来てしまいました。
では、また

阿部拝(転送歓迎)

書簡26 国際社会における名誉ある地位について

拝啓 小泉首相殿26 国際社会における名誉ある地位について
                                                        2004年1月13日

 その後、お変わりございませんか。通常国会を控え、何かとお忙しいことと存じま
す。一月中旬ともなれば寒さも一段と強まってきています。このメール、眠さを堪え
て書いています。これもしんがり戦中派の「ああ、あの戦爭の悲惨さをなめたくない
し、これからの日本人になめさせたくない」という所以でしょうか。

 小泉首相が、19日召集の通常国会で行う施政方針で、イラクで殺害された奥克彦
大使、井ノ上正盛1等書記官への弔意を改めて表明し、イラクへの自衛隊派遣につい
て、昨年12月9日に続き、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」
との憲法前文を引用されるようですね。そして「国際社会の責任ある立場として資金
援助だけでなく、人的貢献を行う必要がある」と国民からの理解を求められるという
記事を読みました。

 しかし、小泉さんは、やはり肝心のことを飛ばしてしまっています。

 この「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはな
らないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、
自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と
いう段落の後半の部分を、なぜ省いてしまったのですか。

 ハハ―ン、「政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従ふ」あるいは
「自国の主権を維持して、他国と対等関係に立とうとする各国の責務」という文句な
どは「何事もブッシュまかせの小泉外交にとって、主権の維持とか、対等関係の立場
に立とうという姿勢がないぞ!」というブーイングが野党や国民から上がるのを恐れ
たからなのでしょうか。

 そして、さらに「日本国民は、恒久の平和を念願し、人類相互の関係を支配する崇
高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、
圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地
位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平
のうちに生存する権利を有することを確認する」と言う前段、さらに「日本国民は、
国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」の最
後の段落も紹介して欲しかったと思います。

 [専制(ブッシュ外交)と隷属(小泉外交)」、「圧迫(単独一国主義と先制攻撃)
と偏狭(キリスト教原理主義的なグローバリズム)を地上から永遠に除去しようと努
めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと」という意味に読まれるので
はないかと懸念されたのでしょうか。そこまで、憲法前文をフルに引用してこそ首相
としての誠意が読み取れるのです。こんな得手勝手な引用では、巷で言われるように、
違憲の自衛隊派兵をごまかすために憲法の”つまみ食い”をしていると言われても当
然でしょう。随分姑息なやり方ですね。

 「それをいっちゃ、お終いまいよ」と小泉さんは思うかもしれませんが、世界の中
で日本をますます不名誉な地位に追いこんでいるのは、ほかならぬ貴方なのだと言わ
ざるをえません。

 しかし、ことここに至った発端は、そもそも、小泉さんが、世界の中でも突出して
米国の「イラク戦争」に全面的な協力を約束したことからはじまっています。あの時、
先輩の中曽根、宮澤、河野その他の首相、総栽経験者から、戦争を回避するよう「友
情ある説得」をしてきて欲しいと要望されましたね。それを貴方は全く無視したツケ
が今まわってきたのです。

 そして、現在、イラク戦争の大義名分そのものが風前の灯同然になりかけています。
アルーカイーダとイラク旧政権との関係には何らの証拠もありませんでした。大量破
壊兵器は見つからず、イラクの直接的脅威などなかったことが明るみに出てきはじめ
ています。 

 米国のオニール前財務長官が11日の米CBSテレビとのインタビューで、「ブッ
シュ政権は2001年1月の発足直後からイラクのフセイン政権打倒を計画していた」
と述べるとともに、ブッシュ大統領がイラク攻撃を正当化するため何らかの「方策」
を見つけるよう閣僚らに指示した経緯も明らかにしました。

 これが事実とすれば、ブッシュ政権が、イラクの大量破壊兵器を自国の安全保障に
とって差し迫った脅威と判断する以前から、フセイン政権打倒を計画していたことに
なります。

 しかし、中東の事情を知るものの一人として、ABCのAだと思っていました。

 事実、ベトナム戦争当時のアメリカの司法長官ラムゼー・クラーク氏はその名著
「湾岸戦爭」(地湧社)の中でアメリカの犯罪的な策謀を見事に浮彫りにしています。
小泉さんに今からでも読んで頂きたい本です。この際、ついでに紹介したいのは、モ
ロッコの国際政治学者エルマンジェラ教授の「第一次文明戦爭」(お茶の水書房)で
す。教授は、サダム・フセインには批判的ですが、湾岸戦争を「文明と野蛮の戦争」
とよんでいます。この二冊を読めば中東の理解は飛躍的に深まるでしょう。

 クラーク氏はこの本の冒頭で「米国政府は、イラクがクウェートに侵攻したから湾
岸戦争が起こったと主張する。・・・だが、米国の湾岸諸国とのかかわり合いを注意
深く見てみると、湾岸戦争の主要な責任はイラクにではなく、米国にあることが分か
る。この戦争は、イラクの最初の軍隊がクウェートに侵入するはるか以前から米国政
府により計画されていたのである。」と喝破しています。さらに、イラクがアメリカ
に狙われるのは、アジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸の結節点に位置する地下資
源に恵まれた(世界の石油埋蔵量の11%~15%を持つ)戦略的要衝であり、また、
古い歴史と多くの人材を擁するアラブ民族主義を標榜する国として、米英の植民地的
野望にとって手強い国家であるとしています。

 イラクは、1958年にイギリスが樹立した王政を倒す共和国革命を達成し「アラ
ブの石油はアラブのために」のスローガンの下に1960年にはOPEC(石油輸出
国機構)の創設に協力したこと(当時はイラク共産党が主導権を持っていたカセム准
将の政権)、1968年の革命で政権を握ったバアス党政権も1972年に米英国所
有のイラク石油会社を国有化したことから、危険視されるようになりました。

 ラムゼー・クラーク氏によれば、とりわけ、1960年のOPEC(石油輸出国機
構)の設立にイラクが大きな力をつくしたので、アメリカは何時の日にか打倒すべき
国としてブラックリストに載せたと述べています。

 何はともあれ、イラクが「イラン・イラク戦爭」「湾岸戦爭」「イラク戦爭」と、
この20年の間に、三度も大きな戦爭に巻き込まれたのも、サダム・フセインの野望
もあったとは思いますが、この石油目当ての米英の戦略が背景にあったのは事実です。
小生は、イラクの外交官からも「イラクが石油資源に恵まれていたことが、われわれ
国民の不幸であった」という言葉を幾度となく聞かされました。

 では、この膨大な石油資源は、今後、誰の所有になるのでしょうか。ついこの2日
ほどの間に読んだニュースによれば、イラクの暫定統治政府はアメリカの要求にこた
えず、イラクの石油は民営化して民間会社に運営させるのではなく、国営石油会社を
設立し運営することにしたと発表しました。この処置は、アメリカがはじめからイラ
クの石油目当てに「イラク戦爭」を起こしたという誤解を避けるためだとコメントさ
れていました。短い記事なので、詳報は今後入ってくると思いますが、こうした将来
イラクの設立されるイラク人政府とアメリカの間で石油利権を巡る利害の対立は、日
に日に高まっていくでしょう。

 また、11日には、イラクのイスラム教シーア派最高権威、アリ・シスタニ師は連
合国暫定当局(CPA)の主導で決まった間接選挙による暫定政権樹立に反対し、直
接選挙を求める声明を発表しています。アメリカとイラク国民との軋轢は深まってい
くでしょう。

 イラン・イラク戦爭の時の有名なキッシンジャー国務長官の言葉は「イラン人とイ
ラク人はなるべく長く戦かわせ、殺し合わせる方がいい」という言葉でした。

 湾岸戦爭の際には、アラブ諸国数カ国も参加しましたが、今回はアラブ諸国は一兵
たりと派兵していません。「イラク戦爭」そのものを批判しています。

 そしてアメリカは、脅したり煽ったりして、やっと日本の自衛隊派兵にまでこぎつ
けました。ネオコンの幹部は心の中で「日本とイラクはできるだけ長く戦わせる方が
いい。軍需産業が儲かるし、どっちかといえば、いてもらわない方がいい日本人とイ
ラク人が共倒れになり、なかんずく、日本の企業が中東、アラブ地域から追い出され
れば、ネオコンにとって一石3鳥にも4鳥にもなる。石油だけが残ればそれでいうこ
とはない。小泉首相には最大限の感謝の言葉を羅列する特大の表彰状をおくらねば」
と、ほくそ笑んでいるのではないかと思っています。

 とにかく、3000年前の一時期の歴史を切り取ってイスラエルという国を人工的
に造成してしまって土着のパレスチナ人を追放してしまい、そのパレスチナ人の存在
自体も、1948年の第一次パレスチナ戦争から1967年の第3次パレスチナ戦争
まで、世界のマスコミから、パレスチナ人の存在を見事に神隠ししてしまった巨大な
世界的情報操作はそら恐ろしい存在です。

 あの9・11事件にしても、まだその真相は隠されたままです。

 今日12日に来日した米軍のマイヤーズ統合参謀本部議長は都内の米大使館で記者
会見し、イラクへの自衛隊派遣を「歴史的な動き」と評価する一方で、「イラクでの
活動に危険がないということはない」「試練が伴うだろう」との見方を明らかにした。

 なんだか、自衛隊の皆さんが、アメリカの石油権益の確保のための「人身御供」と
してサマワ送りをさせられたような気がしてきました。

 日本がいたづらにアメリカの言いなりになっていたのでは、名誉ある地位を占めた
いなどといっていても、アメリカの占領の強化のためにやってきたのであって、普遍
の原理(国連憲章とか日本の憲法、国際法)も守れないような自衛隊派遣は、イラク
人やアラブ人から、軽蔑をかうばかりとなるのではないかと危惧します。

 今度の通常国会で日本が国際社会で名誉ある地歩を占めるには何をすべきか是非と
も真剣に討議して下さい。5年後に劣化ウランの症状を持つ患者が必ず現われるとイ
ラクの医師は警告しています。これも名誉ある地位をうるために避けて通れない人道
的大問題です。

 自衛隊員の一兵でも死んだら、小泉さんたち、7人衆のお陰だと嘆かれないように
して下さい。国民は注視するでしょう。

阿部拝

書簡27 派兵の危険 三題話:開国派とは、目黒のさんま、ベニスの商人

                            2004年1月21日
拝啓 小泉首相殿27 派兵の危険 三題話:開国派とは、目黒のさんま、ベニスの商人

 拝啓、国会が始まりましたね。日本の命運を決める重大な時節が到来しました。し
んがり戦中派として身の引き締まる思いがします。

 小泉首相は、今回の通常国会で「イラクへの派兵は日本の開国」とか「国際社会で
の名誉ある位置を占めるためだ」と演説され、15日、自民党全国幹事長会議など党
の会合でも「鎖国を論じていた人、明治維新の時、全部開国になった」と述べられま
した。また、国会の演説では墨子の言葉も引用されました。正に我田引水的な片言節
句のつまみ食いのオンパレードです。もう少し一国の総理として整合性のある、国民
も納得できる説明をして下さい。「アイ アム ソーリー(総理)」など聞きたくあ
りません。

 この開国について一言だけコメントします。

 小泉さんは、もうお忘れでしょうが、1973年、アラブ諸国が結束してパレスチ
ナ問題の不当性を世界に訴えるため、石油禁輸政策を打ち出し、日本でもトイレット
ペーパー騒ぎを引き起こした”オイル・ショック”という大事件がありました。

 その時、強調されたことは、奈良時代の仏教文化の伝来、そして明治維新の西欧文
化への開国、そして第2次世界大戦での敗北により軍国主義から民主主義への開国、
そして、この1973年のアラブの石油戦略により第三世界への開国・開眼が必要だ
とマスコミでも盛んに論じられました。

 しかし正直なところ、今でも、小泉さんはじめ与党議員の殆どの方は、アラブ諸国
などの第三世界については理解しようとしない先生方が圧倒的に多いのが実情です。
その最たるのが小泉首相ではないか。あれだけ、中国、韓国が非難しているに関わら
ず、靖国神社に参拝し、とうとう、正当な理由もないのに、イラクへの派兵に踏みきっ
た。東南アジア始め多くの国々が警戒心を抱いたのも当然です。

 恐らく小泉さんの視線は、常にブッシュ大統領の方に向けられているので、その他
の国々の様子は良く判っていないのではないですか。自衛隊本隊を送る前に、貴方自
身がイラクに行って現地の実状をつぶさに見て来る必要があります。今まで、岡本参
与を始め多くの視察団がイラクに派遣されましたが、どうも小泉さんにはいいづらい
ことは何も報告していないようです。何を言っても「まずイラク派兵ありき」の首相
では正直に報告する勇気が湧いてこなかったのではないかと思います。

 昨年夏、外務省を解雇された天木直人元レバノン大使も「さらば外務省」の中で、
各国に駐在している大使や外交官は、向米一辺倒の日本の外交方針に逆らうようなこ
とを、本省への報告に書かないのが鉄則になっていると書いています。小生も外務省
とのつきあいがもう半世紀近くなり、このことはいやというほど目撃しています。

 そこで思い出すのが、落語の「目黒のさんま」です。オペラ派の小泉さんでもこの
話しは御存じでしょう。要するに殿様に差し出す料理は、鯛のような高級魚でも小骨
を一本一本抜いてしまって、味も素っ気もないお膳に変わっているのです。庶民が食
べる焼き立ての油ののったさんまとは大違いなのです。

 つまり、日本の外務省は高い国費を使って海外に多くの外交官を駐在させながら、
第三世界に派遣されている外交官は、そこの実情を本省に報告するのをためらってい
るのです。本当のことを書けば、睨まれて出世が遅れ、はては天木氏のような気骨の
ある外交官は首にされてしまうのです。外務省の改革などどれほど進んでいるのでしょ
うか。河野太郎国会議員の報告をインターネットで読みましたが、アフガ二スタンの
状況視察にいって気付いたのは「アフガニスタンのことを一番知らないのは現地の日
本大使館だった」とのことです。まして「ブッシュ、命」のような総理大臣が君臨し
ている現状では、「わが君様」にさからうような国会議員や公務員が少なくなるのは
当然です。もっとも面従腹背ということもあるでしょうが。

 さて話しをイラク問題に戻して申し上げますと、いよいよ、24日に先遣隊が調査
報告して、小泉首相は報告を受け、公明党の神崎武法代表との党首会談し、公明党の
了承を得て直ちに陸自本隊派遣を最終決断するそうですね。

 しかし、中国国営通信の新華社は20日バグダッド発で、陸上自衛隊の先遣隊到着
にイラク人は「冷淡」な反応をしていると強調して伝え。「派兵国が1つ増えただけ。
どこが来てもイラク民衆に発言権はない」(中学教師)、「イラク人に最も必要なの
は安全。どんな形でも外国占領軍は必要ない」(イラク新聞協会会員)といった反米
的な主張を紹介。「日本人が戦闘行為をしないと約束したって攻撃は受ける」「日本
が介入するなら仕事と金もうけの機会を与えるべきだ」との市民の声も伝えた、と読
みました。

 小泉さんは繰り替えし、派兵は「人道支援」に限ると強調されていますね、そうあっ
て欲しいと思っています。

 そこで思い出すは、シェークスピアの「ベニスの商人」の女性ポーシャの花も身も
ある裁きぶりです。

 借りた金の3倍を払うと言っても、「期限が切れている、証文どおりの裁決を」と、
ゆずらないシャイロックにたいして。そこに裁判の相談役として、若い博学の士【実
は、ポーシャが男装している】が現れる。

 ポーシャはまず、シャイロックの言い分(イラク派兵)に理屈があると認める。
 シャイロック(小泉首相と武器三原則緩和の石破防衛庁長官)
「名判官ダニエル様の再来だ、まったくだ、ダニエル様だ!」と叫びポーシャの衣の
裾に接吻する。
「おお、裁判官様、お年に似合わぬ御分別、シャイロック、心からお見上げ申します!」

 その上でポーシャは、高い費用をかけて重装備の軍隊を送るより、NGOとか日本
の民間企業を送った方が、イラクのためになるのではならないかと勧める。しかし、
シャイロックは、「あくまで派兵を!」と言って応じない。
 ポーシャ   「では、やむをえない、派兵はこの際しばらく認めよう。」
 シャイロック 「公正このうえなき裁判官様!」

 ポーシャ 「待て、まだあとがある。小泉首相の証言によれば「人道支援」に限る
とのことである。よろしい証言のとおりにするがよい。ただし、その際、自衛隊員の
血も、イラク人の血も一滴でも流したなら、その際はあくまで「証言どおり」を主張
した小泉首相をはじめ主なる責任者全員を殺人罪として裁くことにする。

 この「ベニスの商人」の場面は、今朝方、夢うつつの中で浮かんできたシーンです。

 とにかく、自衛隊の皆さん、殺されたり殺したりせず、一日も早く全員無事に帰っ
てきて下さいね。間違っても、占領の片棒を担ぐようなことのないよう、小泉首相か
らも申し渡して下さい。

 以上まで書き終わった今、東京新聞の21日付けの夕刊を見ていたら、元防衛政務
次官や自民党国防部会副部会長をされていたタカ派と自称する蓑輪登元郵政相(79)
北海道小樽市(1967―90まで8回当選)は、自衛隊派遣は、「我が国を防衛す
ること」と定めた自衛隊3条に違反するとし、特に懸念するのはイラクで武器使用。
自衛隊法では隊員や設備を守るための武器使用は認めているが、「武器使用の条文は
警察に習って拳銃など小火器の使用を想定しており、対戦車用の無反動砲は明らかに
範囲外。もし使えば正当防衛の枠を超え、海外での武力行使になる。憲法違反、自衛
隊法違反だ」と主張されている。

 小泉首相のご返答やいかに。

阿部拝

書簡28 アメリカのワナにはまらないために 戦前、戦中の一層の勉強を

 河野洋平衆院議長は22日、都内のホテルでの講演で、イラクへの自衛隊派遣につ
いて「議長の立場で『自衛隊はいかん』とか言うべきでなく、派遣についてはコメン
トしない」と断りながら、「(外交官殺害事件を受け)『弔い合戦をやるんだ。さあ
行け!』と煽っているような感じが一部にあり、心配だ。」と懸念を示されたと報じ
られています。そして、国会内でも戦後派世代が多数を占めるようになったことを紹
介し、「戦前、戦中のことを相当しっかり勉強して欲しい。最近の時勢や風潮に乗っ
ての発言には、多少の不安を感じざるえない」と苦言を呈されたといいます。

 河野議長、よくぞいって頂いたというのが、戦中派としての率直の感想です。本当
の政治家(ステーツマン)の言葉を聞き、保守党の中にもこうしたことを堂々と披瀝
される方がおられることに、どんどん右傾化していく無気味な今の日本の政治の中に
あって、未来への明るさを取り戻せるという希望が湧いてきます。

 しかし、ズバリ言うなら、戦争がどんなに社会を破壊し、人びとの心を荒廃させる
かということに尽きます。第3世界にも開国された広い国際視野に立ち、「・・・二
度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救いたい云々』
と謳った国連憲章の『言語に絶する悲哀』をもたらした戦争のおぞましさを真剣に勉
強して欲しいと願っています。(戦争の悲劇を知っていらしゃる議員もいらっしゃる
ことは承知しています。その先生たちには非礼をお詫びします。)

 たしか、ジャン・コクトーの小説に「恐るべき子どもたち(アンファン・テリブル)」
があったのを思い出しますが、武器輸出三原則見直し検討を主張した、今月14日の
石破防衛庁長官を話を聞くと、戦争プラモデルのオタクだと思っていた石破氏が武器
産業にも食指を動かしていると知り、これでは和製ネオコンではないかと愕然としま
した。こうした「戦争を知らない世代」の国会議員が多くなるのは自然な時の流れで
しょうが、しかし、切れば赤い血のでる日本国民、いや世界の諸国民の生身の生活へ
の思いやりがなければ、本当の政治家の使命は達成できないと思っています。

 「戦争未経験」の国会議員は、決して自民党の国防族の議員ばかりではありません。
民主党の今後をになう若手の政治家が、平和とより豊かな生活を求める全世界の人び
との切実な願いよりも、日米同盟を日本外交の基軸として、アジアや日本の民衆の貴
い犠牲によって獲得された憲法をどんどん改定していこうとする議員もいらして、そ
の方々の姿勢に戦慄すら覚えるのは決して小生だけではないでしょう。小生の願いは、
河野議長の忠告にあるように、「戦前、戦中のことを相当しっかり勉強して欲しい」
ということに尽きます。

 こうした日本の最近の歴史すら省みないで「憲法」を新たに創造するという創「憲」
など、血の通ったものができるなどと到底思えません。まず、現憲法を活かすことです。
戦後日本がこれほどの経済大国になったのも、平和憲法を実施てきたからだということ
は、日本ばかりか世界の国々が認めるところです。創「憲」ではなく、活「憲」である
べきと思っています。

 ところで、小泉首相は、終戦の年には、まだ3才なので戦争の苦しみは体験してい
ない世代でしょう。しかし、日本国民の明日の生活を預かっている首相として、戦前、
戦中のことを知る第一番の義務を負っているのは、正に貴方なのです。どうか、自分
の意志に反して遠いイラクまで、妻子を後にして派兵される自衛隊員のことも真剣に
考えてください。

      アメリカの 底知れぬワナに はめられるな

 色々書きたいことは山とありますが、そんなスペースも時間的余裕もないので、今
日は一点だけ警告したいと思います。それは自衛隊を派遣させ、日本を泥沼の中に突
き落とし、アメリカの潜在的競争相手である経済大国、技術大国としての日本を消滅
させようとしているブッシュ政権のワナにはまるなということです。

 小泉さんにとってはブッシュ大統領は、自分の命の次に大切な方かも知れません。
しかし、戦中派として、アメリカの無差別な本土大空襲、沖縄への残酷な砲撃と火炎
銃まで使用した掃討作戦、そして23万人余の無辜の日本人を2発の原爆で殺したア
メリカを知り、かつ目撃してた小生には、そう簡単にアメリカへの警戒心を解けとい
われても、中々解けるものではありません。

 第2次大戦後もアメリカは第3世界にたいして残虐なことをしてきました。最近の
例ではあの9・11事件以来、アフガニスタン空爆、そしてイラク戦争と、どれだけ
残虐なことをしてきたか、それは小泉さんも御承知だと思います。

 ただ、こうしたことが半世紀以上も続けられているのは、アメリカが国際情報操作
によって西欧のメディアに「為にする報道」をたれ流させ、それが多くの国の情報の
ベースにされているからに外なりません。

 先日も音楽関係の友人と話していたら、「あの9・11事件の時に民間航空機が2
機、世界貿易センターに突っ込んだにも関わらず、その乗客として犠牲になった人々
や家族の嘆きなど、どの新聞に一行も書かれないのは不思議だと思っている』といっ
ていました。小生も米国国防省に突っ込んだ飛行機も結局、作り話だったらしいと話
しました。

 9・11事件の真犯人だって、アメリカはとっくに知っている、もしかしてアメリ
カの計画だったかもしれません。「泥棒を捕まえてみれば、わが身なり」ということ
だってないとはいわれません。

 これだけのことをやるアメリカですから、自衛隊をイラクに派遣させることの裏に
は、実に恐ろしい策略が隠されているかも知れないのです。

 小生の結論は、これまで訴え続けてきたように、アメリカは日本の自衛隊にイラク
で交戦させて、イラク人や周辺国からの義勇兵、あるいはひょっとしたらアメリカが
手配した第三者の血を流させ、日本を中東地域やイスラム諸国から敵視させ、日本と
の関係に引導を渡すのが最大の目的だと見ています。日本の将来に渡って受ける損害
は、金額にして何百兆円、いや到底金額として計ることのできない大きな損害になる
ことでしょう。日本は間違いなく、疲弊し、窮乏化していくことでしょう。

 孫子の兵法にも、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とあります。小泉首相、
日本の総理として、是非、このことを確かめて下さい。世界情勢の分析なら、膨大な
予算を持っている外務省がきっといい報告書をつくってくれるだろうと思います。小
泉さんは、外務省では北米局が一番権力を持っている象徴だから無理だとおっしゃる
かもしれません。ましてやブッシュ大統領との個人的関係を考えればそんなこと出来っ
こないとおっしゃるでしょう。

 しかし、それだったら、野党第一党の民主党、とりわけ次期の外務大臣候補の前原
誠司議員の属する多士済々の松下政経塾に属する諸先生方に、自衛隊派遣を実現させ
ようとするアメリカの真意について、国民に分かりやすく解説して頂きたいものです。
幕末の松下村塾で吉田松陰先生は、おおくの門下生を使い、「飛耳長目」として、世
界の情勢を把握されました。ITの発達した現在なら、政経塾でも試みてもよいテー
マではないでしょうか。

 いや、これは、民社党だけの問題ではないことは言うまでもありません。どの党と
いうことなく、党派を超越して、護憲の党、世界の平和を求めている諸団体も交えて、
この国難をいかに解決していくか、またアメリカにも率直に日本としてイラク問題の
解決策を提示していくことが焦眉の急ではないでしょうか。自衛隊本隊の派遣はその
後にした方がいいと思います。「後悔先に立たず」というじゃありませんか。

阿部拝

書簡29 日本人の価値に目覚めよ [親日の地]を反日に変えるな

 自衛隊本隊の派遣をとうとう衆議院で強行採決され、昨日は旭川の隊旗授与式で、
「日米同盟と国際協調は、これからの日本の平和と繁栄にもっとも大事。それを行動
に示すのが皆さんだ」と訓示されました。

 戦中派として、無念の思いで戦死した多くの人びとの言葉を預かって[一預言者]
として一言すれば、焦土と化した日本を今日の日本にまで築き上げた平和憲法をいと
も簡単に反古にして、重装備をした自衛隊をイラクに送り込む全く狂気の沙汰です。
それは、繁栄を破滅に、前途有望な自衛隊員を死の脅怖にさらす暴挙です。

 こんな日本を泥沼に突き落とすような派兵に反対された野党の議員の皆様、本当に
ご苦労さまでした。日本を戦前回帰に強引に引き戻そうとする自民党指導部の御三家、
小泉首相、安倍幹事長、福田官房長官の強い締め付けがあったに関わらず、加藤紘一、
古賀誠、亀井静香といった3人の領袖によるこの承認案への造反があったことは一服
の清涼剤でした。

 「大義ない」(加藤氏)、「慎重さ必要」(古賀氏)、「戦争状態で無理」(亀井
氏)という主張は、すべて正論であり、当日反対はできなかったが、同様の意見をも
つ自民党議員もかなりいたのではないか。自民党執行部は、その処分を口にしている
ようですが、政治的無責任さと世界的見識なさを恥じて自分を処罰すべきです。

 この上は、派遣から生じる一切の被害、惨劇について小泉さんを先頭にこの本案を
通すのに協力した方々に責任をとってもらう必要があると思っています。それにして
も平和を唱導する立場にあるべき宗教色の濃い公明党の神崎党首や冬柴幹事長が法案
通過に釈迦力になったのは、理解に苦しみます。神も仏もあるものかという心境です。

 ところで、米議会で、ケイ前調査団長は「イラクの兵器備蓄、証拠一切なし」と証
言したといわれるのに関わらず、小泉首相は「フセイン政権については、こうした兵
器を開発、使用する[意図]を持っていたことなどを理由に[脅威]だった」と認定
された。そして「世界はフセイン政権が打倒されてより安全になった」と述べ、武力
行使で政権を打倒したブッシュ大統領の判断を支持する。」ということのみ強調され
たと聞きました。

 数日前の日刊ゲンダイには、この自衛隊派遣は今後10年も続くと書いてありまし
た。小生は、早く日本の政治家、とりわけ貴方が目を覚まさないと、10年はおろか、
20年、30年も続くことになりかねないと危惧しています。首相や防衛庁長官のポ
ケットマネーで方がつく[戦争ごっこ]ではないのです。

 今朝と昨日の朝日(1月31日、2月1日)のトップを飾ったのは、ブルガリア軍
最高責任者の[イラク 安全な場所ない」[兵の死 大戦以来の悲劇]と[同時自爆
テロ、クルド州知事ら50人犠牲」という大きな見出しでした。それに、サマワ周辺
は劣化ウランで通常の300倍も汚洗されていると報じられています。根拠のない理
由でアメリカに戦争をしかけられ、国土を荒廃され、仕事にもつけないイラク国民の
抵抗運動が激しくなるのは、目に見えています。そんな戦塲に貴方は、本来専守防衛
の自衛隊員を送りこむことに何らの痛痒を感じないのですか。やはり、小泉さんは、
悪いけど、よほどの変人に見えますよ。

 劣化ウランの粉塵が宙に舞うイラク南部のサマワの状況を思い浮かべるとつい思い
出すのは、日露戦争で名高い乃木希典将軍の詩、

 山川草木轉荒涼 サンセンソウモクウタタコウリョウ
 十里風腥新戦場 ジュウリカゼナマグサシシンセンジョウ
 征馬不前人不語 セイバススマズヒトカタラズ
 金州城外立斜陽 キンシュウジョウガイシャヨウニタツ

 乃木将軍は、日露戦争で多くの将兵を死なせた責任感から、明治天皇の崩御の際に、
妻の静子夫人とともに殉死されたのは、ご承知の通りです。

 これまで鷲鼻のブッシュという大鷲、あるいは孫悟空として、ブッシュ均斗雲に乗っ
た貴方はイラク擁懲の司令官として意気揚々イラクに飛び立っていきますが、肝心の
鷲が[大量殺戮兵器なし]の報告で、イラク占領への国際的逆風を激しくくらい、空
中に浮かんでいた貴方、いや日本は地上にまっ逆さまに突き落とされてしまいます。
その時の日本に与えた損害は誰がとるのですか、イラク派兵に賛成した議員が歳費返
上はおろか身を粉にして働いても返しきれないでしょう。

      [親日の沃野]を[反日の荒れ地]に変えるな

 最近のマスコミでは、現地にイラク人が大方の予想外に日本の自衛隊を歓迎してい
ると報じられています。ムサンナ州の知事も、サマワのシーア派指導者も[自衛隊守
れ]という見解を発表しています。このことは、良く考えれば、中東アラブでは日本
人の持つ価値を、日本自身より高く評価している証拠です。アラブ過去50数年訪れ
る機会を持った小生にはそのことが痛いほど判ります。日本人の持つ価値を一番知ら
ないのは、小泉さんたちです。アラブの人は、日本の政府はなぜ日本国民をあんなに
粗末にしているか、いぶかっているのが現状です。
(もっともこうした自衛隊への歓迎も小沢一郎民主党党首代行がテレビで言ったよう
に[何か起こったら、急変する]危ういものですが)。「槿花一朝の夢」とうことが
あります。

 それに最近のサマワにおける日本ブームは、アメリカの占領政策への反発が背景に
あるとどこかで読みました。日露戦争以来、アラブ中東地域は[親日感情の沁み通っ
た肥沃な大地](1980年代のアル・マ―リ・アラブ連盟東京事務所副所長)とい
う言葉が懐かしく甦ります。このことはつい先頃までのアラブの日本への友好的態度
は多くの方々が体験しておられる通りですが、小泉さんは、この親日感情を粉々に爆
破、果ては、反日感情を徹底的に植え付けてしまおうとしているのです。

 正直いって、1957年末、カイロのアジアアフリカ諸国民会議に出席したとき、
アラブ中東の人々の熱烈な親日感情に圧倒されました。それは、[夜目、遠目、傘の
内]のたとえの通り、この地域を帝国主義的軍靴で踏みにじったことのない日本、第
2次大戦後灰燼の中から不死鳥のように立ち直り、アメリカをもたじたじさせる技術
経済大国に復興した日本は、新興諸国にとっての[輝ける一番星」であり、[まだ見
ぬフィセンセ」いわば[白馬に乗った王子さま]ではないかという残像が残っている
のです。

 「行きはよいよい帰りは恐い」というわらべ唄がありますが、ブッシュの狙いは日
本を永久にイラクに張り付けさせ、イラクのうまい汁はできるだけ吸い尽くそうとの
ことではないかと思っています。日本はますます泥に沈み込むでしょう。それに誤っ
て重火器でイラク人を殺傷してしまうかもれないし、白木の箱に入って帰って来る隊
員だって続出しかねません。最初の頃はまた[忠勇無双の自衛隊員、2階級特進!]
と新聞にデカデカ載るのでしょう。

 先に犠牲になった2人の外交官が外務省で葬儀が行われると夕刊で新聞記事を読ん
だとき、大平洋戦争の真珠湾の9軍神を思い出し、これは「2階級特進]として讃え
られるなと予測したら、その通りでした。週刊誌で読んだのですが、奥大使の49日
法会には大学関係、ラグビー関係の方をはじめ大勢の方が参列されたのに、外務省の
誰一人も参加しなかったと知りました。「人情紙風船」というとこでしょうか。死者
の霊は極楽浄土にもいけず、まださまよっているかも知れません。悲しい話しです。

 昭和11年の2.26事件(小生、小学3年生)の「兵に告ぐ」ではなけれど、
こんなことを書きたくなりました。貴方は平和の反乱軍の首領です。

 小泉首相に告ぐ

   1、今からでも遅くないから平和国家の国是にもどれ
   1、日本よりも外国の元首のいうなりになるものは逆族とみなす
   1、小泉首相とその一派の父母兄弟の中には日本の歴史を逆戻りさせた政治家
          の家族として憂いているものがいるぞ。多くの国民は泣いているぞ。

     2004年2月2日

          あの15年戦争で死んだアジアと日本の人びとの霊一同

阿部拝

書簡30 教育の基本に返りましょうよ 女子高生の手紙の件について思う

 宮崎県の高校三年生今村歩さん(18)が「暴力の連鎖を断ち切るために平和的な
解決が必要」と知人らに呼び掛け、メールなどを通じて集まった五千三百五十八人分
の署名を添えて二日、内閣府に提出したそうですね。本当にご苦労さまとお礼を言い
たいところです。

 こうした、平和的解決を求める真摯な高校生の努力に対して、貴方は、原文を読み
もしないで、「自衛隊の平和貢献を教えることがいい勉強になる。その辺を学校の先
生もよく生徒さんに話さないと」と発言し、河村建夫文部科学相も「法的根拠がある
のだから、事実に基づいて教えていただくことが大事だ」との考えを示したと新聞で
知りました。

 しかし、率直に言って、貴方は首相として、五千人を超す署名を集めたこうした女
子高校生の平和を願う努力に対して、すくなくとも、その手紙をよく読んで、そのど
こが間違っているのか、懇切に説明すべきでなかったでしょうか。文部科学大臣にし
ても同様で、せっかくの機会だから、若い人たちに、自衛隊派遣が日本のためにもイ
ラクのためにもなるという納得のいくような説明をすべき責任があると思います。

 小泉首相は、派兵が平和につながるとおっしゃているが[武力を使わないで平和的
解決を]という主張こそ、平和国家を唱導している日本の国是にそった真っ当な意見
で、現にサマワの人たちでも、自衛隊より日本のNGOの人たちや企業に来て貰いた
がっています。

 それに、今度の衆議院における強引な派兵承認強行の裏には、「始めに派兵ありき」
があったことが国会答弁の中で指摘されているではないですか。サマワの実情を報告
するための先遣隊の調査日程もたった一日半という杜撰さで、これでは日本中の高校
生を納得させることができないので、読もうともしないで、威丈高になって「自衛隊
派遣の意義を学校で教えるべきだ」と開き直っているに過ぎないと思っています。要
するに高校生を納得させる自信がないからですね。

 小泉さんたちは、国の最高法規である憲法などまるで無視して、アメリカの占領政
策の手助けをするため、膨大な国費を使って重装備をした軍隊を送ったのだと、アラ
ブ・イスラム諸国から思われているのが実情だと、小生は思います。

 こうしたことがいいかどうか、真剣に討論した方が真の平和教育になるでしょう。

 最近読んだメールを紹介します。

 地球村通信2月号からの文です。

  ●イラクのための平和的な代替案!
  イラクの復興はイラク人の手で! 日当250円は、彼らの生活を支えます。
  一方、自衛隊員の経費は、危険手当一日3万円、食費一日3万円、装備など消耗
  品一日1万円、合計毎日7万円。7万円はイラク人280名分の日当です。

  自衛隊員1000名で、28万人のイラク人の雇用が確保できるのです。
  その方がはるかに復旧も早いし、イラクの経済復興にもつながります。
  国連にも喜ばれ、国際協力にもなり、日本の評価も大きく向上します。
  日本の信頼、安全も向上します。
  自衛隊を送るよりも、この方がはるかに平和的・効果的ではないでしょうか。
  この代替案、どう思いますか。

 もちろん、この案に大賛成です。

 これだけ読めば、自衛隊員の方々は凄く優遇されているように見えますが、今のイ
ラクの治安情勢では、それこそ[明日の命を誰が知る]といった不安の中に貴方はお
得意の[丸投げ]をされてしまったのですよ。

 それもこれも、貴方がブッシュ大統領の別荘に呼ばれて舞い上がってしまい[何で
も協力]を表明、ついに、国民はおろか、国会でさえ、十分納得のいく責任ある説明
をせず、言ってみれば、急いで、急いで、日本の将来に重大な禍根を残しかねない自
衛隊の派遣を強行してしまったのです。

 戦中派として、[15、16、17と私の人生暗かった]時代に生きた旧制中学の
3年、4年、5年生として、[あと2年の命]、[あと1年]そして終戦の年には、
あのアメリカのB29による焦土作戦の大空襲、艦載機による機銃掃射の脅怖などを
味わいました。それだけに、愛する家族をあとにサマワに派遣された自衛隊隊員の精
神的苦痛がどんなに激しいものになっていくのか、痛いほど判ります。

 貴方は口癖のように[自衛隊は戦争のために行くのではない]とおっしゃいますが、
それなら、息子さんの孝太郎さんを派遣して現地体験をさせてみたら如何がですか。

 まあ、こんな皮肉を書いていても少しも建設的でないので、小泉さんに勧めたい教
育の基本になるような文章をご紹介します。

 「教育は、
  人格の完成を目指し、
  平和的国家及び社会の形成者として、
  真理と正義を愛し、
  個人の価値をたっとび、
  勤労と責任を重んじ、
  自主的精神に充ちた
  心身ともに健康な国民の
  育成を期して行なわなければならない。」
  (教育基本法の第1条、目的より)

また、
 「われらは、
  個人の尊厳を重んじ、
  真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、
  普遍的にして、しかも個性ゆたかな文化の創造を
  目指す教育を普及徹底しなければならない。」
  (教育基本法の前文より)

 小泉さん、これで行きましょうよ。この文章は何もアメリカから戦後押し付けられ
たというわけでない、まごうかたなき、日本人が日本人のために作った教育方針です。

 この文章を25年ほど前に初めて目黒の教育研究所で読んだとき、小生はとっさ
に、これは新渡戸稲造博士が書いたのだという印象を持ちました。

 色々文献を辿っているうちに知ったのは、果たせるかなこの文章を書いたのは、
「この基本法の生みの親たる教育刷新委員会の委員38名中、新渡戸先生と浅からぬ
関係にあったと推定出来る方々は、8人を下らないようである。安部能成(委員長)、
南原繁(副委員長)、関口泰、天野貞裕、森戸辰男、河井道、上代たの、田島道治の
諸氏である・・・・。」という教育基本法制定当時の文部省の学校教育局長であった
日高第四郎氏の言にあるように、この基本法の直の生みの親は、文学における漱石山
脈と並び称せられる、教育における新渡戸山脈に連なる人々だったのです。

 [一切、合切、丸投げ方式]の小泉さんは読んでいらっしゃらないでしょうが、実
はこれが現在の教育基本法の第一条と前文なのです。

 河村文部科学大臣なら、もちろん読んでいられると思います。

 こんな立派な教育の方針があるのですから、これをもっと学校でも活かして行きま
しょうよ。

 女子高生の訴えを読みもしないで、あんなことを記者会見でしゃべるなど、[貴方
はほんとに冷たい人やなあ]とつくづく思いました。つまり冷血漢という印象です。
いや、冷血漢よりも冷血動物というのが率直な感想です。[少年倶楽部]で読んだ江
戸川乱歩作『怪人20面相』の話しを以前の手紙で書きましたが、小泉さんの仮面
(マスク)を一枚一枚はがしていったら、最期に現われるのは、人の血をすすって生
き延びていく大きな鷲鼻をつけた蛭(ひる)だったなんて。猟奇小説みたいですが、
それが現実だったら正に[日本の悲劇]です。これは小生の単なる妄想であることを
願います。

阿部拝